「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

「企業戦士」たちの苦悩[3(上)]
〜会社の中の異邦人−「若者問題」に答えます

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2009年2月18日(水)

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世代間の意識の差は、企業にとって古くて新しい悩みである。右肩上がりの高度成長期はそれでも、皆で「坂の上の雲」を目指すことができた。しかし豊かさが一般化し、経済が低成長次代に突入する中で、世代間の意識の差は埋めがたいギャップとして会社を分断し始めたようだ。その後携帯電話の普及などIT(情報通信)技術はさらに進歩。そうした最新技術を日用品として使い、育った現在の若者との意識ギャップはさらに広がっているかもしれない。

(注)会社名、肩書きなどは当時のまま

* * *

1993年8月2日号

 来春採用社員の選考も終盤戦。学生を見て「今年は不況のせいか顔が引き締まっている」と楽観しているあなた。真の問題を見逃してはいませんか。どんな学生を採るかもさることながら、直属の部下の若者が「笛吹けど踊らず」とお悩みでは? 企業第一線の悩みと模索の中から「若者問題」のラジカルな解決を考えます。

(谷口 智彦、菅野 武、村松 謙一)

特集―第1部
−「違う日本」に育った世代、今や職場の不稼働資産

バブル時代に“常識的”な採用、「入るはずのない者までが入社」

 「最近の若い社員のことを“アスファルト人間”と言っておるんですわ」−−日本電産の永守重信社長は一気にまくし立てた。「とにかく怒鳴りつけても、冗談を言っても、まるで反応がない。いくら水をまいても、全部、跳ねのけて道路わきのドブに流し込んでしまうアスファルト道路と同じ。どんなに熱心に仕事を教え込もうとしても、染み込んでいきよらへん」。

 京都市に本社を置く日本電産はパソコンなどのハードディスク装置用小型モーターでは世界トップメーカー。1973年の会社設立からちょうど20年、ベンチャー経営者である永守社長が自らの手で売上高600億円、従業員も1000人を超える規模にまで築き上げた。しかし、どうも最近、若手の様子が変なのだ。

 「バブルの時代、本来、入るはずのない者までが、うちに来たんやないか。あとでお荷物になるぞと当時から公言しとったが、案の定そうなってしもうた」。永守社長の嘆き節は止まらない。「一流大学の連中は一生懸命勉強して、自分の実力の1.5倍の学校に入るから、会社に来た時はもう疲れ切って、カス同然。かと思うと、電気工学科を卒業しているはずなのに、オームの法則も知らへん者が研究開発部門に行きたがる。どないなっとるんや」。

 カレーライスを昼食に出し、早く食べた者から採用したなどというユニークな人材選びの逸話に事欠かない日本電産だが、バブルの時代には不本意ながら、「常識的な採用」を強いられた。「京セラでフランス料理、島津製作所では日本料理、お宅では中華料理でも」などと言う学生を相手に、人事部長がホテルで“接待”にいそしまざるを得なかった。

 しかし、永守社長の堪忍袋の緒は切れた。バブルの時代も守り通した「新入社員は素手で便所掃除」という新人研修は学生にも「悪名」高いが、加えて面接試験では「ハングリー精神」、「情熱と執念」など「古典的言葉」を連発して学生の反応を見る。学生に聞こえよがしに、「研究所ではどれだけ休んどるんや」と永守社長が聞けば、人事部長が「はい、土曜も日曜も出社。昨年から休みはありません」と答えてみせる。多分に脅しの要素が強いが、「休日だの福利厚生だのを口にする者には即刻お引き取り願う」。

 「一度どついたら、二度と立ち上がれへんのやないか」などと気に病むのもやめた。昔のように、若手の書いた設計図を目の前で平気で破ってゴミ箱に捨てても見せる。「それでも残ってくれるのが本物」と思えばこそだ。

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著者プロフィール

田村 俊一(たむら・しゅんいち)

日経ビジネス副編集長。

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