日経ビジネスが生んだ時代のキーワード、「会社の寿命は30年」。1980年代半ば、「企業は永遠か」「診断 会社の寿命」の2つの特集を通して企業の栄枯盛衰を分かつ法則を分析した。時代が大きく動く今、あらためて盛者必衰の理を考える時だ。
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1999年10月4日号より
最も変化に敏感な会社。これがIBMの目指す企業像だ。
業界最強の地位に安住し、変わることを嫌う精神が危機を招いた。
ガースナー会長は内向きになった社員の視線を市場と顧客に戻した。
情報システムの構築・運営会社へと業態転換をなし終えたいま、ネット時代、脱パソコン時代の到来を好機と捉え、布石を打つ。
「最も強いものや最も賢いものが生き残るのではない」
IBMの経営戦略部門は毎年、年初に「グローバル・マーケット・トレンズ」と呼ぶ市場動向を詳細に予測した社内文書を作成する。IBMの航海図とも言えるこの文書の1999年版は、ダーウィンの『種の起源』の一節から始まる。見事な復活(下図)を遂げたとはいえ、「最強企業」の名を欲しいままにした往時とは、競争条件も業界内の相対的地位も異なる。だが、ダーウィンの引用は、単なる過去の栄光への訣別宣言ではない。
![[「歴史的使命を終えた」とまで言われた会社が甦った]](zu2.jpg)
「最も変化に敏感なものが生き残る」――IBMは生物の進化法則の中に企業存続の条件を見いだし、最強企業ではなく、常に変わり続ける企業を目指す、と表明しているのだ。
サービス、ソフト、OEMの3本柱に
ニューヨーク市郊外、深い緑に囲まれた丘陵の中にあるトーマス・J・ワトソン研究所。過去に5人のノーベル賞受賞者を輩出したIBMの研究開発の総本山でも進化は始まっている。
「私のIBMでのキャリアの中で、今ほどエキサイティングな時代はない」と研究開発の総責任者を務めるポール・ホーン上級副社長は言う。
最近のIBMの研究開発部門の活躍は目覚ましい。6年連続して特許取得件数は米国企業第1位。その座に甘んじることなく、過去4年間で、特許取得件数を2倍に増やし、特許料収入および技術ライセンス収入も倍増させている(下図)。
![[研究開発部門のビジネス志向くっきり]](zu1.jpg)
さらに、研究所が生み出した先端部品を外部の企業にOEM(相手先ブランドによる生産)販売し、昨年1年間に68億ドルを稼ぎ出した。これも過去4年で2.5倍増という急伸ぶりだ。
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