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「兼業農家」が日本を滅ぼす

減反政策は諸悪の根源、コメを作って米価を下げよ

2009年2月20日(金)

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 「減反見直し」。昨年末、石破茂農相が投じた一石が農業界を揺さぶっている。政府は農政改革特命チームを結成。コメの生産調整の見直しを含めて議論し始めた。「コメの生産調整は必要不可欠」。米価維持が第一の農業関係者はこう口を揃えるが、減反に協力しない農家は数知れず。実効性は上がっていない。

 1970年以降、連綿と続けられてきた減反政策。転作を奨励するために7兆円の国費を投入してきたが、この40年で食料自給率は40%に下落。生産調整の対象になった水田の多くが休耕田になった。昨年、発覚した汚染米事件も、本をただせば減反政策に原因がある。農業関係者の利益のために、水田を水田として利用しない愚行。その制度疲労は明らかだ。

 「農協、自民党、農水省」。減反政策と高米価政策を推し進めてきたのは、この鉄のトライアングルだった。そして、その恩恵を最も受けてきたのが兼業農家だった。この生産調整が日本の農業にどのような弊害を与えたのか。そして、今後の農政をどう考えればよいのか。長年、減反政策を批判してきた元農水官僚、山下一仁氏に聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン記者 篠原匡)

 ―― コメの生産を抑制する減反政策。ようやく政府内でも見直しも含めた議論が始まりました。この減反政策がどれだけ政策として不合理なのか。その点からお聞かせください。

 山下 生産調整でコメの生産を抑制し、高米価を維持する――。これは、一言で言えば供給制限カルテル。ほかの産業であれば、独占禁止法の対象になる行為でしょう。「減反政策はカルテルである」。この点を、最初に強調しておきます。

「減反政策はカルテルである」


山下一仁(やました・かずひと)
経済産業研究所上席研究員。1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省に入省。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農水省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任した後、2008年に農水省を退職。1982年米ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。今年1月、『農協の大罪 「農政トライアングル」が招く日本の食糧不安』(宝島社新書)を上梓した。「減反政策をやめ、コメを作るべき」と強く主張している。(写真:大槻純一、以下同)

 このカルテルで最も得をするのはカルテルを破るアウトサイダーです。カルテルを破って、カルテルで維持された高米価でコメを生産すれば間違いなく儲かる。だから、生産者をカルテルに参加させるための何かのインセンティブが必要になります。そのインセンティブが年間2000億円、累計で7兆円に上る補助金でした。

 この7兆円に上る補助金を負担しているのは誰でしょうか。言うまでもありませんが、私たち国民です。しかも、この高米価を維持するために、この国は輸入米に対して高い関税を課している。その代償として、ミニマムアクセスを設定し、一定の輸入米を購入している。

 ―― 年間77万トンのミニマムアクセス米ですね。

 山下 そう。778%という高関税を設定した結果、国内の消費量の8%に当たる77万トンを輸入するという約束を世界貿易機関(WTO)と結びました。閣議了解事項でこのミニマムアクセス米は国内市場で流通させないことになっており、大半を海外の食料援助のために保管している。その保管料もバカにならない。

 1トン当たりの保管料は約1万円。77万トンを保管するだけで77億円かかる。もちろん、過去の在庫がありますから毎年保管料に100億円以上がかかる。しかも、国産米が玄米で流通しているのに対して、ミニマムアクセス米は精米の状態で輸入している。

 昨年9月、米加工会社、三笠フーズによる汚染米の横流しが発覚しました。残留農薬やカビのあるコメを酒造会社などに転売した事件ですが、あのコメも大半はミニマムアクセス米でした。わざわざ腐りやすい精米を長期間保存しているわけですから、カビが生えるのも当たり前でしょう。

コメの主業農家を殺した減反政策

 ―― 汚染米事件の原因は減反政策にあったわけですか。

 山下 つまり、国民はカルテルで形成された高い米価と減反補助金の財政負担、ミニマムアクセス米の保管料と二重、三重の負担を強いられている。生産調整と高米価という消費者負担型の農政を展開した結果、減反政策を守るための財政負担がかかるだけでなく、77万トンのミニマムアクセス米を輸入し、その輸入米を保管するためのコストがかかっている。コストがコストを呼ぶ仕組みになっているわけですよ。

 ―― 減反政策は、国民に多くの負担を強いているわけですね。

 山下 この二重、三重の国民負担が減反政策の悪の1つ。さらに、もう1つの悪を挙げると、この政策のしわ寄せがコメ作りを専業にする主業農家にいったことでしょう。

 第1に、高米価政策を採ったことで零細の兼業農家が滞留した。ご承知の通り、コメを作るのはそれほど難しくありません。実際のところ、週末だけの農作業でもコメが作れてしまう。そうして作ったコメが高値で売れていくのだから、兼業農家が農地を手放すはずがありませんよね。

 零細の農家が水田を手放さなかったために、主業農家の規模拡大が難しくなった。規模拡大ができないのだから、コストを下げられない。コストが下がらないからコメを専門にしても所得も増えない。高米価政策の影響を受けたのは主業農家でした。

 それに、減反政策をやるのであれば、生産コストが高い兼業農家に減反面積をたくさん背負わせればよかった。コメを低コストで生産しようと考えれば、規模が大きく生産コストの低い主業農家がコメを作り、高コストの兼業農家が減反をすべきでしょう。そうすれば、兼業農家がコメを作るメリットが薄れ、主業農家に農地が集約されたはず。それが、国民のためになるし、コメを専業にしている主業農家のためにもなる。ところが、一律の減反配分をやってしまった。

農業の中でも異常なコメの世界

 ―― それはなぜでしょう。

 山下 農協の政治的な基盤は圧倒的多数の兼業農家。その兼業農家に減反を強制することは自分たちの政治力を削ぐことになる。まあ、やりませんよね。その代償として、コメを専門に作る主業農家がどんどん不利になっていった。

 ほかの農業を見ると、酪農だって、野菜だって、主業農家のシェアは8割から9割はあるわけですよ。稲作だけですよ、主業農家のシェアが40%を切っているのは。こんな変な産業は農業の中でもないわけですよ。コメだけですよ、本当に。

 ―― 同じ農業の中でも異常ですよね。

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「「兼業農家」が日本を滅ぼす」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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