脳科学のアプローチを応用して人間の消費にかかわる心理や行動を解明しようとする「ニューロマーケティング」。それによって、消費者調査の“革命”が起きようとしている──。
「五感ブランディング」の提唱者で、ブランドマネジメントの世界的な第一人者の1人と目されているマーチン・リンストローム氏は、前回にこう指摘した。
その目に、革命が成就した後のニューロマーケティングの未来はどう映っているのか。単独インタビューに応じた同氏が持論を語った。
マーチン・リンストローム氏
(Martin Lindstrom)
リンストローム・カンパニー会長兼CEO(最高経営責任者)。1970年デンマーク生まれ。従来の視覚や聴覚だけでなく、触覚や味覚、嗅覚までを含めたすべての感覚に訴求してブランドの認知を強化し、ブランド価値を高める「五感ブランディング」の提唱者。2005年から博報堂のアドバイザーを務める。主な著書に『五感刺激のブランド戦略』(ダイヤモンド社)、『買い物する脳』(早川書房)など。
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── 著書の『買い物する脳』(早川書房)では、日本、米国、英国、ドイツ、中国の5カ国で計2000人余りの被験者を集めて行ったニューロマーケティングの興味深い実験結果が紹介されています。あれほど大がかりな実験に取り組んだのはなぜですか。
マーチン・リンストローム 第1の理由は、「ニューロマーケティング」と呼ばれる新たな調査方法が信頼できるものなのかどうかを自ら確かめたかったからです。
人間の行動の85%は無意識のうちに行われています。つまり、我々の行動の大半は潜在意識によって決定されている。消費者の行動を本当に理解しようとすれば、潜在意識を調べることが必要になります。
ところが、現在のインタビューやアンケートによる調査では、潜在意識までは把握できない。それをニューロマーケティングによって解明できるのかどうかを確認したかったわけです。
全く正反対の反応を被験者の脳が示す
もう1つの目的は、広告宣伝やブランディングにおいて我々が現在行っていることが正しいのかどうかを、実験を通して評価することでした。
いくつかの実験では、インタビューやアンケートによる回答と全く正反対の反応を被験者の脳が示していることが分かりました。ニューロマーケティングによって人の潜在意識、すなわち“本音”を把握できることが実証されたと言っていいでしょう。
一方で、広告宣伝やブランディングにおいて、これまで「常識」と考えられてきたことのいくつかが誤りであることも判明しました(前回を参照)。
多くの人に便利でも特定の人には不便なことも分かる
── ニューロマーケティングは消費者の本音をえぐり出すのに有効かもしれませんが、消費者に価値のあるものを生み出すのに使えるのでしょうか。
リンストローム 本当に価値のあるものを作り出すことこそが、ニューロマーケティングがもたらす最大の貢献だと私は考えています。
世の中には、多くの人にとっては便利でも、特定の人にとっては不便なものがあります。
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