• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

波、潮流、そして自己責任

輸出立国を超えた国家コンセプト作り

2009年2月27日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 最近、子供の頃に海水浴に連れて行ってもらった時のことを、よく思い出す。おそらく幼稚園児ぐらいだったのだろう。海水浴とは言ってもまだほとんど泳げず、岸からさほど遠くないところで、浮き輪につかまりながら波遊びをするのが楽しみだった。

 少し高めの波が来ると頭からもろに海水をかぶり、下手をするとしたたかに水を飲む。うまくやれた時には、波に乗ったような形で大きく体が持ち上げられ、次の瞬間には波と一緒にすべり落ちていく。これが楽しくて仕方がない。今思うと、随分単純なことで、心底楽しめていたものだ。

 さて、こうやって波とたわむれていてふと気がつくと、岸から50メートルほど離れたところまで流されている。急に怖くなり、大慌てで浮き輪の力を借りながら、岸の方へ戻っていくことになる。

 眼前の波だけに気を取られていた子供は、沖へ向かって、引いていく潮の流れに全く気づかない。潮の満ち引き、あるいは、海流といった大きな力の存在を、学校で知識として習い覚えてからも、目の前の波についつい目を奪われてしまうものだ。

 ただ、知識がついてから、実際に沖に流されてしまった時の恐怖心は、それを知らなかった時の比ではない。もっともっと流されてしまうのではないか、ひょっとすると岸に戻れなくなってしまうのではないか。なまじ大きな力の存在を頭で分かっているだけに、より悪い想像がどんどん膨れてしまい、恐怖心に包まれてしまう。

「大波」「潮の変わり目」への対応

 最近の金融危機は、多くの企業にとって大変な「大波」だ。この波をどう乗り切るかということが、経営者にとっての重大事であることは間違いない。だが、「大波」の陰に隠れたもっと大きな潮の変わり目に対して、ややもすると目配りがおろそかになりがちなのが気になって仕方がない。

 さらに重要なのは、うすうす潮の変わり目に気づいていたところに「大波」が来て、不安感が不安感を生むという状況が起こっていることだ。

 金融危機以前から、企業や消費者の大部分は、日本を取り巻く大きな変化が起こりつつあることに、何となく気づいていた。新興国の台頭、資源・環境問題、情報・通信技術の進化――こういったものが組み合わさって起こり、ある閾値を超えたところで、社会や経済に急激な変化をもたらす。その予感を持っていた人は多い。

 一方、日本の政治システム、社会システム、そして企業は、これまでのパラダイムの中での漸進的変革だけに汲々として、大きな変化にとても対応できるようになっていない。これも多くの人に共有されていた感覚だろう。変化の予感と対応力不足の認識。これが、社会全体の閉塞感や将来への不安感につながっていたような気がする。

 そもそも今回の金融危機は、自国の金融機関への影響という観点からは、日本が先進国の中で最も良い位置にいたはずだ。しかし、実体経済への影響は、逆に日本が最も大きく受けている。この背景には、円安バブルに依存して、輸出頼りの景気回復だったという以外に、潮の変わり目を感じながらも、自らの対応力に自信がないという要因があるように思える。

 企業も個人も、将来への不安感を募らせているところに金融危機が発生し、皆が「不安感の中で生き残りを図るためには、とにかく消費や設備投資、あるいは雇用を縮小させるしかない」という行動に出る。これは、個々の判断としては決しておかしくないのだけれど、いわば合成の誤謬の典型症状で、皆が自己防衛に走ることで、経済がどんどん悪化し、それがまた次の悪化を生むという状況になっているのだ。

コメント2件コメント/レビュー

拝読いたしました御立さんのいう「輸出立国に変わる、新たなモデル作り」というのは確かにうなずけるのですが、そうは言っても、市場の大きさから言って今後も海外市場への販売重要になっていくのは仕方ないことだと思います(特に中国)なので、輸出するものを何にするかとか、現地生産比率を上げたり、現地企業のM&Aを活用する新しい輸出モデルの構築が重要になるんじゃないかと私はは思います。具体的には上流部分の知財、ビジネスモデルとか下流部分のサービスでの付加価値が高いものを輸出する形になるんじゃないかと思います。(2009/03/02)

「御立尚資の「経営レンズ箱」」のバックナンバー

一覧

「波、潮流、そして自己責任」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

拝読いたしました御立さんのいう「輸出立国に変わる、新たなモデル作り」というのは確かにうなずけるのですが、そうは言っても、市場の大きさから言って今後も海外市場への販売重要になっていくのは仕方ないことだと思います(特に中国)なので、輸出するものを何にするかとか、現地生産比率を上げたり、現地企業のM&Aを活用する新しい輸出モデルの構築が重要になるんじゃないかと私はは思います。具体的には上流部分の知財、ビジネスモデルとか下流部分のサービスでの付加価値が高いものを輸出する形になるんじゃないかと思います。(2009/03/02)

これからの日本は輸出立国でも内需型経済への転換でもなく、外需と内需の両方を振興させることが必要ではないでしょうか?どうも片方にふれるような傾向が多いように思います。そのためにも、日本の国家コンセプトというものをもう一度再考し、政治システムや社会システムにブレークダウンし、いかに、国益を守るか(最悪でも毀損しないようにするか)、国民の就業機会を増やすか、などなど、総合的に検討する必要があると思います。人生で修羅場をくぐってこられた団塊の世代以上の方々の活躍の場は、現役時代の場以外にも多いと思うし、企業人も仕事やこれ以外の分野でも、世代の異なる方々と連携し、していかなければなければならないことは多いと思います。(2009/02/28)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

店長や売り場主任などの管理職は、パートを含む社員の声を吸い上げて戦略を立てることが重要だ。

川野 幸夫 ヤオコー会長