これまでのインタビューやアンケートでは把握できない消費者の“真意”を、脳科学のアプローチで解明する――。
この「ニューロマーケティング」と呼ばれる新たな調査手法は、既に広告や商品デザインの評価という形で事業化されている。日本でも昨年11月、米リサーチ会社のニールセン・カンパニーがサービスを始めた。
果たして新たなサービスは広告の訴求力をどれだけ強化できるのか。調査の効率性は本当に高まるのか…。自ら被験者となって体験してみた。
(写真:陶山 勉、以下同)
「これを頭に被っていただきます」
そう言って手渡されたのは、青い布製のキャップ。表面には、白い“バナナチップ”のような形をしたものが、いくつも付いている。
その異様な姿に思わず「これは何ですか」と尋ねると、バナナチップは脳波を測定するセンサーの接続部だという。このセンサーが取り付けられるキャップは、「ニューロマーケティング」と呼ばれる新たな消費者調査に使う測定システムの一部だ。米カリフォルニア州バークレーにあるベンチャー企業、ニューロ・フォーカスが開発した。
市場調査最大手の米ニールセンが出資
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ニューロマーケティングとは、脳科学のアプローチを応用して人間の消費にかかわる心理や行動を解明しようとするもの。MRI(磁気共鳴画像装置)といった測定機器を使って、人間の脳の反応を計測する。それによって、グループインタビューやアンケートといったこれまでの調査方法では把握しきれなかった消費者の潜在意識を解読する。
人間の行動の大半は、無意識のうちに行われている。新たな調査方法で人間の潜在意識、すなわち“本音”を読み解くことができれば、今まで以上に消費者の嗜好に合った商品を開発したり、消費者に訴求する広告や映像コンテンツを制作したりできるようになる。こうした期待から、マーケティング関係者の注目を集めている。
既に欧米では広告や商品のデザイン、パッケージ、ブランドイメージなどを評価するサービスが事業化され、それを専門に扱うベンチャー企業も数多く設立されている。
ニューロ・フォーカスはその1社だ。米カリフォルニア大学バークレー校の脳科学者や、米ハーバード大学経営大学院のマーケティング研究者らが参画して、2006年に誕生した。
2008年2月にはマーケティングリサーチ(市場調査)の最大手、米ニールセン・カンパニーが同社に出資して提携。同年11月にニールセンの日本法人がニューロ・フォーカスのサービスを日本でもスタートさせた。
「既に国内の製薬会社やIT(情報技術)関連企業が、広告やブランドイメージの評価に利用した例がある」。ニールセン・カンパニーの金子雄太・取締役カスタマイズド調査本部長はこう明かす。
準備はわずか10分で終了
ニューロ・フォーカスの創業者であるA・K・プラディープCEO(最高経営責任者)兼社長が、この2月中旬にスタッフを率いて来日した。同社が開発した測定システムによる調査を実際に体験し、その結果をプラディープCEOに解析してもらえるというので、東京都港区にあるニールセンの日本法人を訪れた。
自ら被験者を買って出た記者がまず手にしたのが、冒頭の青色のキャップだ。実はこれは、脳の反応を「EEG(エレクトロエンセファログラム)」という脳波計測方法で調べるシステムの“要”。これに取り付けられた64個ものセンサーの一つひとつが、毎秒約2000回の頻度で脳波を計測する。
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