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「年金改ざん」批判は根拠のない「空中楼閣」

バッシングの元凶は舛添厚労大臣の「人気取りパフォーマンス」

  • 郷原 信郎

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2009年3月2日(月)

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 私は、厚生労働大臣直属の調査委員会の委員として、「年金改ざん問題」の調査に加わった。その結果分かったことは、この「年金改ざん」による社会保険庁職員への非難がほとんど根拠のないものだということだ。

 少なくとも、社保庁職員が、国民に実害を生じさせるような「犯罪行為」に関わった具体的な証拠は、調査委員会の調査結果からは何一つ得られていない(標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会報告書)。

 そればかりか、全国の社会保険事務所で「仕事の仕方」として定着していた「標準報酬月額の遡及訂正」というやり方は、保険加入者間の負担の不公平を防止することにもつながるものでもあった。

 なぜ、ほとんど「空中楼閣」のような「社保庁組織丸ごと犯罪者集団ストーリー」が作り上げられてしまったのか。その大きな原因が、社保庁を含む厚生労働省のトップである舛添厚労大臣が、「改ざん」の事実を確認することもなく、制度の仕組みを理解することもなく、自らの部下である社保庁職員を「犯罪者」のように決めつけて一方的にこきおろしたことにある。大臣の国民への「人気取り」のパフォーマンスがマスコミのバッシングをエスカレートさせることにつながった。

 これまでにも数々の不祥事を重ねてきた社保庁組織や職員に問題が多々あったことは否定しないし、私は、それら全体を擁護する気持ちは全くない。しかし、少なくとも、この厚生年金記録の「改ざん問題」に関しては、社保庁職員に対する非難は明らかに重大な誤解によるものだ。

 しかも、その誤解を解消しないと、今後の年金に関する業務体制の構築や運用の在り方について重大な悪影響が生じる。将来の年金給付率の低下が予測され、若年世代に年金制度への不満が高まっている現状の下ではなおさらだ。誤解に基づくバッシングのツケは、将来、厚生年金加入者全体が払うことになりかねないのだ。

「刑事告発」が目的だった大臣直属の調査委員会

 中央大学法科大学院教授で弁護士でもある野村修也氏から、いわゆる年金「改ざん」問題に関する厚労省の調査委員会の件で依頼があったのは、9月末のことだった。「従業員の給料から年金保険料の半額が天引きされているのに、社保庁職員が、標準報酬月額を不正に減額して、事業者の年金保険料の支払いを免除したり、少なくしたりしている問題について、舛添厚生労働大臣から調査の依頼を受けている。場合によっては刑事告発に至る可能性もある。そのメンバーとして加わってほしい」という話だった。

 「消された年金」「年金改ざん」などと呼ばれて、社会的にも大きな関心を集めている問題であり、刑事処罰についての適切な判断のためにも検事経験の長い私のような弁護士が関わることが必要なのだろうと考えて、私は、野村教授の依頼を受けることにした。

 その後、具体的説明を受ける機会がないまま、10月6日の夕刻、厚生労働大臣室で調査委員会の最初の会合が行われることになった。そして、その当日の朝刊には、「年金改ざん、調査チーム設置へ、舛添厚労相、刑事告発も」という見出しで、この調査についての記事が出ていた。

 「舛添要一厚生労働相は5日、茨城県龍ケ崎市で講演し、厚生年金標準報酬月額改ざん問題での社会保険庁職員の関与を調べるため、弁護士数人でつくる厚労相直属の調査チームを6日に設置する方針を明らかにした。改ざんへの関与が明らかになった場合、公文書偽造などの罪に当たるため、時効になっていないケースの刑事告発を検討する。 舛添氏は『(改ざんされた)紙が残っていれば、それを証拠に悪い職員を逮捕できる。徹底的にうみを出したい』と述べた」

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