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「年金改ざん」を巡る思考停止が厚生年金を崩壊させる

舛添厚労大臣が断罪した「社保庁の組織的関与」の中身

  • 郷原 信郎

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2009年3月3日(火)

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 昨日の本コラムに対して、多くの方々からの反響があった。中には、私が述べていることの前提となる基本的事項についての質問・疑問もあった。厚生年金という制度に関わる問題であるだけに、若干分かりにくい面があったのかもしれない。

 そこで、「年金改ざん」問題を考える上での重要な事項について、改めて説明しておこうと思う。

年金額は「いくら支払うべきだったか」の金額で決まる

 まず、「保険料を払っても払わなくても将来もらえる年金額が変わらない」というのは、給与・報酬の実態に応じて申告で定める標準報酬月額に基づいて、支払うべき保険料と将来の年金受給額が決まっていて、その保険料を実際には払わなくても年金受給額には影響しないということだ。保険料を実際に「いくら支払ったか」ではなくて、「いくら支払うべきだったか」の金額に応じて、将来の年金額が決まるのだ。

 もし、保険料を滞納したまま事業者が倒産した場合のように、保険料の支払不能が確定した場合でも、年金の受給額には影響しない。それどころか、厚生年金の場合は、そもそも、保険料の滞納や不払いがあっても、標準報酬月額が変わらない限り、その人の年金受給額を減らすことにはなっていないのだ。

 厚生年金に加入している事業者が支払うべき保険料を支払わなければ、その分、保険料を支払う債務が残っているわけで、社保庁職員は、それを支払うよう説得し、それでも支払ってもらえなければ滞納処分としての差押えをして強制的に取り立てるというのが法律の建て前だ。

 しかし、実際には、保険料を滞納するような中小企業の場合、会社名義の財産はほとんどなく、差押えで滞納保険料を回収することは極めて困難だ。その結果、滞納が解消できないままになってしまっても、保険料を支払わなかった事業者の将来の年金額には影響しないということになる。

 その結果、保険料を真面目に払っている年金加入者の負担が増えるという不公平を招くというので、滞納している事業主の標準報酬月額を遡って引き下げて、支払うべき保険料自体を減額して、その分、年金受給額が少なくなるようにするというのが、事業主の標準報酬月額の遡及訂正だ(従業員と事業主の険料を区別して支払うことはできないが、事業主分だけの標準報酬月額を引き下げることは可能)。

 このような遡及訂正は、保険料を滞納している経営不振の事業主の報酬の実態に必ずしも反していないし、保険加入者の負担の公平のためにはやむを得ない措置と見るべきではないかというのが私の見方だ。

合理的な事業主案件まで「年金改ざん」と呼ばれた

 一方、従業員の標準報酬月額を本人が知らない間に遡及して引き下げるのは、その分、保険料を天引きされている従業員の年金受給額が減額されることになるから、まさに実質的な被害が生じる。このような案件は徹底して調査し、それに社保庁職員が関わっている事実があれば厳しく責任追及しなければならない。

 また、その結果不利益を受けている保険加入者がいれば救済しないといけない。しかし、少なくとも、調査委員会の調査では、この従業員の標準報酬月額の遡及訂正に社保庁職員が関わった具体的な根拠は得られていない。

 問題は、現時点では具体的に明らかにはなっていないと言っても、実際に、このような実質的な被害が生じている従業員案件がどの程度あるかだ。

コメント27件コメント/レビュー

会社総務で社会保険事務を担当しています。現場をよく知っている者として、非常によく納得できるご意見で参考になりました。ついでに、年金記録問題について取り上げて欲しいですね。年金が自己申告の手続き主義であること。自分の手続きもれや手帳管理が甘くて記録もれしているののに、それを社保や会社のせいにしてバッシングクレーマーが多いこと。そのクレーマーを生み出したマスコミ報道の問題もぜひ取り上げて欲しいと思います。(2009/03/03)

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会社総務で社会保険事務を担当しています。現場をよく知っている者として、非常によく納得できるご意見で参考になりました。ついでに、年金記録問題について取り上げて欲しいですね。年金が自己申告の手続き主義であること。自分の手続きもれや手帳管理が甘くて記録もれしているののに、それを社保や会社のせいにしてバッシングクレーマーが多いこと。そのクレーマーを生み出したマスコミ報道の問題もぜひ取り上げて欲しいと思います。(2009/03/03)

昨日に続き、さらなる詳しい説明をありがとうございました。 1円で会社を興し、報酬を約款規定し、赤字で実体のないまま会社を畳んでも届出報酬額に見合う年金受領資格が得られる・・・合法的な詐欺のような手口ですね。 縦割り行政によるバランスの取れていない立法・改正の結果でしょう。 1円起業はベンチャーお越しとしてNHKなどでも大きく取り上げられていましたが、このような落とし穴があったとは。 人気取り大臣にしてもセンセーショナルが好きなマスコミにしても、すべての根源は短期間に結果・成果を求めるアメリカ的発想にあるのかもしれませんね。 その流れに押されて立法や法改正が行われてしまう。 まじめな小市民は浮かばれませんね。(2009/03/03)

世間すなわちマスコミの論調や、人気のある?大臣の発言とは対立する、勇気ある発言に敬意を表します。マスコミの論調は、事件を聞いた人々が反射的に抱く感情の域をあまり出ていないと感じています。マスコミにやってほしいことは、問題を真に考えている専門家の解説をわかりやすく紹介してくれることです。それによって、国民が考えることができるようになるのです。この記事は、あるべきマスコミの姿を示してくれたと思い、初めてコメントを書きました。(2009/03/03)

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