「伊東 乾の「常識の源流探訪」」

所得で支え続けた基礎研究

常識の源流対論・吉村作治 その1

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2009年3月3日(火)

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 編集部 お2人が実際にお会いになるのは今日が初めてだそうですね。

 吉村 いやぁ、お会いしたかったんですよ。

 編集部 そもそも吉村先生の書評がきっかけということで…。

吉村 作治(よしむら・さくじ)氏

吉村 作治(よしむら・さくじ)氏
1943年東京都生まれ。サイバー大学学長、工学博士(早稲田大学)、早稲田大学客員教授。エジプト考古学者。66年、アジア初の早大古代エジプト調査隊を組織して現地に赴く。以降、40年以上にわたり発掘調査を継続。数々の発見により国際的評価を得る。2005年1月、未盗掘・完全ミイラ、2007年1月に未盗掘の夫婦の未開封木棺、10月に未盗掘の親子ミイラを発見。ホームページは「吉村作治のエジプトピア

(写真:大槻 純一、以下同)

 吉村 僕が伊東さんの『バカと東大は使いよう』という本に出合いまして、何度も読んで大変に影響を受けたんです。今、サイバー大学を発展させてゆくうえで、大切なヒントがたくさん入っていて。そんなことをWEDGEという雑誌の書評欄に書いたんです。

 編集部 新幹線のグリーン車に置いてある雑誌ですね。

 吉村 そうしたら、わざわざ伊東さんにドイツからお手紙を頂いて、それからメールで文通が始まったんです。

 伊東(以下――)でも僕が、吉村さんのお仕事と、それからあまり報道されない、本当に良心的なご研究の舞台裏を知るようになったのは、かれこれ20年も前、NHKで音楽の仕事をしている時だったんです。

 編集部 そのあたりから伺えますか?

「自腹でピラミッドを発掘する考古学者」

 ―― 20代半ば頃、私はNHKテレビで音楽の仕事をしていました。その頃「きょうの料理」という番組の「男の料理」という特集に「吉村作治という考古学者が出演して、それが大変に面白いうえに、テレビのギャラ、出演料ですね、そういうものすべて、私財を投じて、実はエジプトでピラミッドの発掘を営々と続けているらしい…」。そんなふうに聞いたのが、最初だったんです。

 吉村 まだ本当にテレビに出始めた頃ですね。

 ―― で「常識の源流探訪」の対論企画で研究・教育を取り上げる時、最初にお話を伺うのは吉村さんしかない、と思ったわけです。

 吉村 大変光栄です。

 ―― とんでもありません。ただ、「日経ビジネス オンライン」の読者も、多くのテレビ視聴者も、「吉村作治」という名前をもっぱらポピュラーな側面から理解していると思うんです。僕自身、今回いろいろ伺って、例えば「吉村作治教授、サイバー大学学長に就任」というのが、吉村先生ご自身でリスクも背負って事業を起こされたものだ、とか、基本的なことを全く理解していないことが分かって、大変恥ずかしく思っています。

 吉村 いえいえ、そんな、そんな…。

 ―― もしよろしければ、今回は、従来の「吉村作治像」を完全に一新するようなお話を伺えないかと思っています。教育、研究と、歴史的宗教的、あるいはもっと哲学的な背景なんかにも触れながら。ちょっと硬めで、テレビ向きではないと思いますが、「日経ビジネス オンライン」では噛み応えのある記事がしっかり読まれますので…。

 吉村 僕自身は硬い方が好きなんですが。ただ硬いことを言っても誰も取り上げてくれないから…。

 ―― (笑)

 吉村 だから軟らかくやっているだけなんです。

 ―― 違う横顔というんでしょうか、シリアスに語られる、専門家としての吉村先生の「別の顔」でお話を伺えればと思います。

 吉村 どうもありがとうございます。

研究は教授の「お仕事」なのか?

 ―― 早速ですが、大学の問題を考えたいので、まず日本の教育の現状をどうご覧になられますか?

 吉村 伊東さんも大学の先生でいらっしゃるから、大学教員を前にして言いにくいんですが…僕は、今の大学は壊滅寸前じゃなくて、すでに壊滅していると思います。
 
 ―― 確かに非常に厳しい状況にあると思いますね。

 吉村 1つは、教える側と教わる側の利害が不一致。

 教える側の人が「不一致」になる理由は、細かく言えばみんなばらばらですが、大きく言って大学の教員を職業だと思っている。そして生活の糧だと思っている。そこを履き違えていると思うんです。

 ―― といいますと?

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著者プロフィール

伊東 乾(いとう・けん)

伊東 乾

1965年生まれ。作曲家=指揮者。ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督。東京大学大学院物理学専攻修士課程、同総合文化研究科博士課程修了。松村禎三、レナード・バーンスタイン、ピエール・ブーレーズらに学ぶ。2000年より東京大学大学院情報学環助教授(作曲=指揮・情報詩学研究室)、2007年より同准教授。東京藝術大学、慶応義塾大学SFC研究所などでも後進の指導に当たる。基礎研究と演奏創作、教育を横断するプロジェクトを推進。『さよなら、サイレント・ネイビー』(集英社)で物理学科時代の同級生でありオウムのサリン散布実行犯となった豊田亨の入信や死刑求刑にいたる過程を克明に描き、第4回開高健ノンフィクション賞受賞。科学技術政策や教育、倫理の問題にも深い関心を寄せる。他の著書に『表象のディスクール』(東大出版会)『知識・構造化ミッション』(日経BP)『反骨のコツ』(朝日新聞出版)『日本にノーベル賞が来る理由』(朝日新聞出版)など。



このコラムについて

伊東 乾の「常識の源流探訪」

私たちが常識として受け入れていること。その常識はなぜ生まれたのか、生まれる必然があったのかを、ほとんどの人は考えたことがないに違いない。しかし、そのルーツには意外な真実が隠れていることが多い。著名な音楽家として、また東京大学の准教授として世界中に知己の多い伊東乾氏が、その人脈によって得られた価値ある情報を基に、常識の源流を解き明かす。

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