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「企業戦士」たちの苦悩[8]あなたの心が危ない-1 会社を蝕む勝ち組・負け組症候群

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2009年3月4日(水)

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 バブル崩壊後の長引く不況で痛んだのは企業だけではない。そこに働く企業戦士たちの心もまた蝕まれていた。世間では時あたかもITバブル。一攫千金で金持ちになったIT長者たちが「勝ち組」と称され、会社の中では実力主義の人事制度が幅を利かせ始めた。日本社会は二極化への道をひた走っていた。その結果、現在日本は年間自殺者数3万人を超える自殺者大国に。働く人間の中に巣食う心の病はいまや、企業にとっても重大な問題となっている。

(注)会社名、肩書きなどは当時のまま

* * *

2000年4月3日号

電通裁判で企業にも衝撃

自殺者数の増加が止まらない。
現代人の心の危機が深刻さを増している結果と見ていいだろう。
とりわけ、急激な変化と競争の激化に直面するビジネス社会では、誰もが心の病と無縁ではない。
「勝ち組」「負け組」――そんな言葉で企業や社員の選別が一気に進む中、頑張らなければ生き残れないというストレスも日増しに強くなる一方だ。心が病んだ従業員の増加は、企業の生産性をも悪化させるだけでなく、自殺した社員の遺族が会社を訴えるなどのリスクも増している。3月に最高裁が差し戻した電通過労死裁判でも、企業の責任はこれまで以上に厳しく問われた。メンタルヘルスの問題は、企業が緊急に取り組むべき経営課題でもある。

(廣松 隆志、川上 慎市郎)

ワーキングハイ症候群 家族も恐れる働き盛りの仕事中毒

図表、交通事故の死亡者数と自殺者数の推移

 外資系コンピューターメーカーのシステムエンジニア、中山武さん(41歳)は、職場の机の横に松葉杖を置いている。仕事に没頭している時に、目に飛び込んでくるようにと、あえて使う必要のない松葉杖を飾った。松葉杖を見ると、「この辺で仕事を切り上げなければ」と考えるようにしている。

 4年前のある朝、中山さんは突然脚が動かなくなってしまった。医師の診断は「ギランバレー症候群」。原因不明の奇病で、体の様々な個所が急に動かなくなってしまう病気だ。呼吸器系に発症すれば命を落とす恐れもある病気だが、数カ月間安静に寝ていれば自然と治癒する。中山さんも1カ月の安静と2カ月間の松葉杖を用いながらのリハビリテーションで、再び体が動くようになった。

 病気の原因は不明だが、メンタルヘルスの専門家からは、「過剰適応」を指摘された。過酷な仕事の環境に本来の体力・能力の限界を超えて適応してしまい、気づかないままストレスをためてしまう。

 実際、当時の忙しさは尋常ではなかった。その頃の手帳を見返すと、自分はこんなに働いていたのかと驚くほど予定がびっしりと書き込まれていた。

忙しいとの自覚まったくなし

 ボイスメールはいつも満杯、顧客の注文や苦情処理に忙殺されて、夜はほとんど外食だった。毎日、その日に処理すべき仕事のリストを作った。リストにやり残した仕事があるのが苦痛でたまらなかった。リストアップした仕事を全部片付けるまで帰宅しようとは思わなかった。それでも自分が心を病むほどにストレスを抱えていたという自覚はない。

 しかし、同僚や家族は「今だから言えるけれども明らかに異常を来していた」と口を揃える。特に妻の話は、全く覚えていなかっただけに自分でもショックだった。帰宅後、妻がその日の出来事をとりとめもなく話し始めた時のことだった。「結論から言え、結論から」。突然中山さんが妻を怒鳴りつけた。仕事ではだらだらと報告すれば時間を無駄にしてしまう。部下から仕事の報告を受ける時と同じ対応を、妻にしていた。

 息子が「お父さんは本当に怖かった」と振り返ったのもショックだった。夏休みに家族旅行に出かけた時のことだった。旅先でうっかりボイスメールを聞いてしまった。その瞬間、家族のことは視界から消えた。すぐに部下に電話をかけると電話口で30分以上も怒鳴り続けた。今になって息子がつぶやいた「お父さんはまたいつか怖くなるかもしれない」という一言に、涙がこぼれた。

 病気療養をきっかけに、ようやく当時の異常さを自覚できるようになった。報道される過労死のニュースが他人事とは思えない。あのまま病気にならなかったら、自分もまた過労死へとまっしぐらだったと思えるからだ。

松葉杖を病気の教訓に

 「なぜ仕事をするのか」。人間なら当然考えることも、当時は問いかけたことさえなかった。家族のために働こう、同僚や他社との競争に勝ち抜くために働こう、などと考えていたわけでもない。あえて言えば、仕事をするために生きている、としか答えようがなかった。長距離ランナーが走ることで脳内に化学物質が分泌されて気分が高揚することを「ランニングハイ」という。中山さんは当時を「ワーキングハイ」だったと振り返る。限界を超えて働くことで高揚感を保ち続けたとしか思えない。

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