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ファイナンスが買収の成否を握る

巨大M&Aを仕掛けた思い

  • 新貝 康司

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2009年3月9日(月)

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 2007年の英ギャラハーの買収は、買収作業のチーム(社内では、Business Development 略してBDと呼んでいます)、財務、会計、税務といった財務機能、そして法務のメンバーが、用意周到に準備を重ねてたどり着いたものです。この買収を題材に、経営者の視点から、CFO(最高財務責任者)として、考えたこと、果たした役割の一端に触れたいと思います。

ギャラハー買収の背景

 なぜギャラハーを買収したのか――。その背景にあった思いを以下にご説明します。

一国に依存する脆弱さ

 前回述べたように、1999年に行ったRJR International買収により、海外たばこ事業の基本骨格ができました。しかし国内のたばこ事業は、ギャラハーの買収を行うまで、依然として日本たばこ産業(JT)グループ全体の4分の3の利益を生み出していました。

 一方、国内たばこ市場の総販売数量は、80年代に想定していた通り、20歳から60歳の人口がピークを打った98年を境に減少に転じました。売り上げや利益は、必ずしも総販売数量に比例するわけではありませんが、改めて一国の市場に大きく依存することの危うさを感じていました。安定的に利益を創出できる市場を1つでも多く増やしたい。これが偽らざる思いでした。

多角化事業への投資原資の確保

 医薬事業、食品事業といった多角化事業が、国内たばこ事業の利益を補完するまでには時間を要します。2006年当時、食品事業は工場に例えるといわばパイロットプラントでした。食品事業は商品開発力とマーケティング力、医薬事業は研究開発力といった、コアコンピタンス(価値を創造する中核の競争力)を育成中でした。

 この多角化事業のコアコンピタンス獲得期間に、既に一定の経営・事業ノウハウを身につけた海外たばこ事業を拡大させ、将来の多角化事業への一層の投資原資を生み出せる体力をつけたいと考えました。これは、当時よく投資家を訪問した時に説明したことでした。

通貨別キャッシュフロー創出力の最適化

 国内のたばこ事業にキャッシュフローを頼るということは、円建てのキャッシュフローに依存することを意味します。つまり、円の価値変化とともに、企業の価値が上下するわけです。円が強くなればよいですが、それは誰も予見できません。

 一方、自らが自らの将来を切り拓くためには、座して円の価値という波間で揺られているわけにはいきません。バランスの取れた、複数のハードカレンシーでのキャッシュフローを生み出せる事業体に変貌させることを目指したいと思いました。それが、企業として環境変化により強くなることに直結すると考えたのです。

 以上のような経営上の思いが、ギャラハー買収の根底にありました。もちろん、複数の候補企業の中から、ギャラハーを買収ターゲットに決めるには、様々な要素を勘案しました。これについては、既に買収時の対外発表等で述べていますので、ここでは繰り返しません。

 自らの将来を自らで切り拓きたい――。その志の下、具体的な準備を進めていきました。経営の一翼を担う者として、会社の10年先を見据えて今を生きています。そのためには、独立自尊の気概を持ち続けることが必要だと考えました。

忍び寄る金融危機の中でのファイナンス

 米国発金融危機の津波に襲われ、グローバルに金融市場、株式市場、外国為替市場が混乱し、各国で経済動乱といった様相を呈している今、以下の話をすると、読者の方は、話が出来過ぎだと思われるかもしれません。

 この買収に伴うファイナンスについては、買収の検討を始めた2003年の終わり頃から、2007年半ば、できれば2006年末には完了したいと考えていました。買収にとって、ファイナンスの実行可能性は最重要項目です。

 2003年以降注視していたリスク要因の代表は、景気面では、米国住宅価格のトレンドから上方へ乖離した価格上昇、中国北京オリンピック特需の一巡が与える中国経済成長への影響でした。この時、1989年から96年まで7年間、米国滞在時に学んだことが大いに役に立ちました。

コメント1件コメント/レビュー

今回の掲載内容全体から、「自らの将来を自らで切り拓く」という意識を持つことの大切さを教えていただきました。自分の頭で、世の中で起こっている事象を捉え、自ら分析し仮説を立て検証する、歴史から学び、自らを律する。世の中の情報に惑わされずに、この考え方を貫くことは非常に難しいことですが、歴史の節目には、必ず、「自らの将来を自らで切り拓く」人物が現れ、次の時代の礎となっていることを考えれば、今の世の中だからこそ、自分自身で考えることを大切にしたいと思います。(2009/03/09)

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今回の掲載内容全体から、「自らの将来を自らで切り拓く」という意識を持つことの大切さを教えていただきました。自分の頭で、世の中で起こっている事象を捉え、自ら分析し仮説を立て検証する、歴史から学び、自らを律する。世の中の情報に惑わされずに、この考え方を貫くことは非常に難しいことですが、歴史の節目には、必ず、「自らの将来を自らで切り拓く」人物が現れ、次の時代の礎となっていることを考えれば、今の世の中だからこそ、自分自身で考えることを大切にしたいと思います。(2009/03/09)

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