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社員に無理難題、セコム流人材育成法

ある日突然、看護師が食品バイヤーに

2009年3月12日(木)

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 「豁達」――。警備業大手セコムの社内には、至る所に墨痕鮮やかな達筆で書かれたこの2文字が掲げられている。「フータ」と読むこの2文字の意味するところは「心ひろやかに、明るく、小さなことにこだわらないさま」。セコムの持つ新進の気風をよく表す言葉だ。それは、警備から発して医療、福祉、情報システム、保険など失敗を恐れずに新たな事業に挑戦し続け、永遠のベンチャーたろうとする伸びやかな精神を表す。

 セコムの社内では、萎縮する部下に向けて上司が今も言う。「フータでいこう」。今日その声は、まるで世界同時不況で萎縮する企業社会全体に向けられているかのようにも聞こえてくる。

 このシリーズでは、セコムが挑戦する各事業と、それを切り開く「フータ」な人々を紹介していく。第6回目となる今回は、食品の通信販売事業の立ち上げを任され、看護師からバイヤーに転身した女性社員に話を聞いた。(文中敬称略)

 台風のような女性だ。

 表情がくるくると変わる。破顔一笑して失敗談を語るかと思えば、厳しい表情で事業にかける思いを説く。

セコム特品部 猪口ゆみ主任

セコム特品部 猪口ゆみ主任
(写真/的野弘路)

 会話のテンポが速い。質問に対して、間髪入れずに言葉を返してくれる。ただ単に会話の条件反射に長けているのではない。その言葉には、実感と手触りが込められている。そこまで素直に言葉を発して大丈夫なのだろうかと、聞いているこちらが心配になる。

 「セコムの食」というサービスがある。セコムの展開する食品の通信販売事業だ。記者は、警備業大手セコムが通販事業を展開するというギャップが面白い、と思って取材のアポイントを入れた。が、「やっていること」よりもその「やり方」と「やっている人」がもっと面白かった。

 セコムに転職して1年ほどの元看護師の女性社員が、ある日突然、本人の希望もないのに「通販事業をやれ」という辞令を受ける。仕事は、販売する商品の選定、生産者との交渉、カタログに掲載する原稿の執筆とそのための取材、クレーム処理。要するに、バイヤー兼ライター兼カタログ編集者である。経験などまるでない素人に対して、これを1人でやれ、と言うのだから無理難題に近い。

 持ち前の負けん気もあったろう。女性社員――猪口ゆみはその無茶に応えて奮闘する。白衣を脱いだ素人バイヤーの悪戦苦闘、まるで台風のようなそのバイタリティーは、「豁達(フータ)」の言葉そのもののようだった。

漁船で吐き気に耐える

 猪口の肩書きは、セコム特品部「セコムの食」主任。ただし、東京・原宿の本社のデスクに座っていることはあまりない。1年間365日のうち、およそ3分の1の時間を費やして全国を飛び回っているからだ。

 「セコムの食」とは何か。説明するよりも、実際にご覧いただいた方が早い。「セコムの食」のカタログはインターネットでも閲覧できる。見れば分かる通り、コメ、パン、魚介加工品、飲料、菓子、調味料と、取り扱う商品は多岐にわたっている。同社のセキュリティーサービスの契約者でなくても、誰でも利用できる。

 取り扱う商品を探し出し、生産者を口説き落として販売に漕ぎ着けるところから猪口の仕事は始まる。どんな商品でも、何度も生産者に会い、生産の現場を必ず取材する。

 
生産者の声を聞く

生産者の声を聞く

 取り扱う商品の基準は「猪口自身の納得」だ。添加物をなるべく使わず、生産者が思いと手間をかけて素材のおいしさを引き出しているか。野菜であれば、農薬や化学肥料をなるべく使わずに栽培しているか。何より、食べておいしいか。それを猪口は、自分の五感で確かめる。確かめないものは、絶対に売らない。

 そのため、時間を惜しんで全国を飛び回っているのだ。

 生産現場を見るためには、加工場を視察することはもちろん、畑に入ることも、漁船に乗ることすらもある。

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「社員に無理難題、セコム流人材育成法」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長