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誰が地域を作るのか――。

議会と役場を変えた自治会活動

2009年3月13日(金)

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 西松建設による巨額献金事件。小沢一郎代表の公設秘書が逮捕された民主党だけでなく、自民党議員にまで延焼し始めた。世界的な経済危機によって、国民生活は深刻な影響を受けている。だが、泥仕合を続ける与野党は有効な手を打てていない。永田町と霞が関に対する国民の不信は回復不能な域まで達している。

 危機の今、一人ひとりの国民は何を考えればいいのか。徹底した住民自治を展開している長野県阿智村にその手がかりがあった。この村では自治会が村作りを提案、役場と共同で村作りを進めている。住民の意識レベルの向上によって、議会の改革も実現しつつある。阿智村の実験。ここにも国の未来が見える。


阿智村の高台から南アルプスを望む(写真:宮嶋康彦、以下同)

 長野県南部、飯田市と下條村に隣接する阿智村。中央アルプスの南端、恵那山の麓に広がる静かな山村である。人口は6466人。かつては律令時代の五幾七道の1つ、「東山道」の宿場町として栄えた。街道の要衝は今でも変わらない。阿智村を横断する中央自動車道をクルマで走れば、下伊那地域の中心地、飯田市まで15分で辿り着く。恵那山トンネルをくぐれば、名古屋まで1時間半しかかからない。

 この村は、日本の“地方”が望むすべてのものを手に入れてきた。

「三種の神器」を手に発展を続けた村

 1つは工場誘致である。高度経済成長期になると、他の山村と同様に、人口流出に悩まされた。51年に8200人いた村民も65年には7000人を切るまでに減少している。減り続ける若者をいかに引き留めるか――。産業振興に活路を求めた阿智村は工場誘致条例を制定、積極的な工場誘致を展開した。

 そして、阿智村出身者が経営する自動車関連企業の誘致に成功。300人規模の工場が阿智村で操業を始めた。1968年のことである。その後、下請け企業など産業のすそ野も拡大。バブルの最盛期には300億円近い製品出荷額を誇るまでに成長した。

 この村は観光資源にも恵まれた。南信州最大の温泉郷、昼神温泉である。年77万人が訪れる昼神温泉は阿智村の観光産業の支柱となっている。もっとも、この昼神温泉は73年、旧国鉄のトンネル試掘の際に偶然、発見されたもの。僥倖によって、一大温泉郷を手に入れた。


阿智村は東山道の宿場町として栄えた

 74年には中央道の恵那山トンネルが貫通。翌年には中央道西宮線「駒ヶ根-中津川」関が開通した。下り入口と上り出口だけのハーフインターチェンジながらも、92年には園原インターチェンジも完成している。

 工場誘致、温泉湧出、高速道路。昭和50年までに、多くの村々が羨むような環境を手に入れた。山深い南信州の奥地にもかかわらず、70年以降、人口が減少することなく推移したのはこの三種の神器を手にしたからにほかならない。

 ところが、バブル崩壊とともに舞台は暗転していく。

逆回転を始めた山村の成長モデル

 村を支えていた自動車関連工場は90年代の景気後退とグローバル化の進展によって、徐々に売上高を落としていった。300億円に届こうかという勢いだった製品出荷額も、2002年には130億円まで減少した。

 打撃を受けたのは観光産業も同様だった。温泉湧出以来、観光客が増え続けた昼神温泉。だが、旅行形態の変化などもあり、1990年代前半には伸びは止まった。


昼神温泉には年間77万人の観光客が訪れる

 バブルのピークに計画したスキー場、「ヘブンスそのはら」は96年に開業したものの、時すでに遅し。全国のスキー場の例に洩れず、早々に経営が行き詰まった。

 スキー場の経営は村とは切り離していたが、道路などの周辺整備で多額の借金が発生。公共下水の整備や学校建設を含めると、起債残高は約100億円に達した。山村の成長モデルを体現した阿智村。その歯車は見事に逆回転を始めた。

 近い将来、地方交付税が削減されることは目に見えていた。高齢化も急速に進みつつある。ほかの山村よりも恵まれていたが、今のままの村政では行き詰まることが明白だった。超えがたい壁に直面した阿智村が選んだ道は「発展」ではなく「緩やかな持続」。そして、住民自治だった。

コメント9件コメント/レビュー

阿智村、下條村の事例を見れば、「国・地方自治体・企業・学校など形態に関わらず全ての"共同体"の浮沈は、その共同体の状態に最も利害を受ける"当事者"がどれだけ高い意識で行動できるかに掛かっている」というシンプルな結論にたどり着きます。ただ、企業人として全力を尽くしながら地方自治体の活動にも相応の力を割くことは、労働人口が減り、一人ひとりの負荷が重くなる中、相当能力がある人でないと困難(というより不可能)とも思います。企業活動に力を割く人の割合が高い都市部は自治体経営は人任せにする分行政コストが高くなり、産業と自治体の結びつきの強い非都市部は自治体維持のための労働が増える分行政コストは安く済む、という構図になっていくのではないでしょうか。国という共同体は、日本ぐらいの規模になると様々な共同体の利害が錯綜し、国民による直接統治は困難なので、地方分権化が進み、連邦体制に移行していくのが自然だと思います。大前さんや弘兼さんが何十年も前から言っていることですが、そうなるには後十~二十年ぐらいかかるのでしょうか。(2009/03/15)

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「誰が地域を作るのか――。」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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阿智村、下條村の事例を見れば、「国・地方自治体・企業・学校など形態に関わらず全ての"共同体"の浮沈は、その共同体の状態に最も利害を受ける"当事者"がどれだけ高い意識で行動できるかに掛かっている」というシンプルな結論にたどり着きます。ただ、企業人として全力を尽くしながら地方自治体の活動にも相応の力を割くことは、労働人口が減り、一人ひとりの負荷が重くなる中、相当能力がある人でないと困難(というより不可能)とも思います。企業活動に力を割く人の割合が高い都市部は自治体経営は人任せにする分行政コストが高くなり、産業と自治体の結びつきの強い非都市部は自治体維持のための労働が増える分行政コストは安く済む、という構図になっていくのではないでしょうか。国という共同体は、日本ぐらいの規模になると様々な共同体の利害が錯綜し、国民による直接統治は困難なので、地方分権化が進み、連邦体制に移行していくのが自然だと思います。大前さんや弘兼さんが何十年も前から言っていることですが、そうなるには後十~二十年ぐらいかかるのでしょうか。(2009/03/15)

プロ化してないからこそいい結果になったのではないか?(2009/03/14)

久しぶりに良い記事に出会いました。記事の中で自治会が上手く機能しているということならば自治会会長を議員にする。そして現在の議員数を減らし少人数で村全体を横断的に考える役割を与えるほうが良いかと思えたのですが。現議員の役割、存在価値が見えない。(2009/03/14)

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