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なぜ日本はテポドンで右往左往するのか?

技術に定見を欠く人材育成がもたらしたもの

2009年4月6日(月)

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 アメリカの報道をきっかけに、北朝鮮の「テポドン」関連の話題が騒がしいことになってきました。私の結論は「本質を見抜く目をもって落ち着いて事態の推移を眺める」という以上でも以下でもないのですが、騒ぎの表層、米軍や韓国軍の落ち着いた対応と、(支持率がすでにまともな体をなしていない)麻生太郎政権の対応など、表面的な「空騒ぎ」の底流で、より本質的に深刻な「技術に関する定見の喪失」が進んでいると、改めて痛感しています。

 元来は今週から辻井喬さんとの対論の掲載を予定していたのですが、今回は「テポドン」をきっかけとして、この問題を考えてみたいと思います。

「喪失」を象徴する事件

 3月13日のことです。研究室のF君からのメールで、私は「国立産業技術史博物館」計画頓挫に関して発生している事態を知りました。

 大阪府吹田市の万博記念公園内に建設構想があった「国立産業技術史博物館」のために、大阪府などが作った協議会が蒐集した歴史的な産業資料2万数千点が、一度も公開されないまま廃棄処分されることが決まったというのです。F君は音響に関する科学技術史の専門家で、憤懣やる方ない、といった調子で情報を教えてくれました。

 読売新聞の報道によると「国立産業技術史博物館」の構想はバブル期に暖められたものとのことです。しかしバブル崩壊後に計画は頓挫、同博物館に展示するべく集められた、膨大な「産業資料」は、日の目を見ることなく万博公園内の旧万博パビリオン「鉄鋼館」の中に保存されていました。ところがその「鉄鋼館」が万博資料館「EXPO'70パビリオン」として改修されることとなり、資料の保管場所がなくなったというのです。

 財政難に苦しむ大阪府では、新たにかかる保管費用を賄うことができないと判断、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、日本産業技術史学会で作る「国立産業技術史博物館」誘致促進協議会が3月6日に会合を開いて資料の「廃棄処分」を決定しました。また、1986年に設立されながら97年以後休眠状態にあった同協議会も3月末で解散が決まりました。

 さてしかし、ここに集められていた「産業資料」とは、いったいどんなものなのでしょう?

江戸時代以来の貴重な産業資料

 集められていた資料2万数千点というのは、関西電力や東京農工大学など約30の企業や大学、個人が「産業技術史博物館のために」と寄贈した貴重な資料ばかりだといいます。

 かつて実際に使われていた日本最初の発電所のタービン、江戸時代の鋳物工場で使われていた木製人力クレーン、あるいは大阪砲兵工廠で使用されていた日本の軍需製造機械など、一度失ってしまったら、二度と戻らない重要なものを、わざわざ保存するべく集め、20年近く塩漬けにした末に、何を作るのか知りませんが新規の「パビリオン」への改修などを理由にして(そこで回転する予算と、関連する業者などもあるわけですが)、わざわざ集めた貴重なものを、丸ごと「産業廃棄物」にしてしまうという。

 はっきり書きますが、日本で新たに作る「パビリオン」だのナンだのというので、ろくなものをほとんど見ません。とくに「科学博物館」の類は、私も関わったことがありますので率直に書きますが「浅い」「中身がない」「薄っぺらい」悲惨の極みのようなものが大半です。公営のものは、科学を修めていない専従者が「子供にも喜ばれるように面白おかしく」企画を考え、官費を狙って業者が入り込んで、本質の薄い水増しバラエティー番組みたいな代物になっているケースばかり目にします。

 新たな万博資料館がどのようなものかは知りませんが、数百年に及ぶ産業の歴史と計りあえるものとは思いません。

コメント13件コメント/レビュー

技術史資料の価値について定見を持つものでも、軍隊が「胆力ある技術経営の教育と実践の場」と考える者でもありませんが、資料をゴミ視する無責任無定見な官僚と、テポドンにただただ大騒ぎするだけの政治に共通の背景を見るという点では同感です。行政の執行役である官僚は、行政がある種の暴力行使(この場合資料の廃棄)に他ならない事と、それを制御するのが政治の第一の仕事であると考えるからです。特に、軍や警察など直接暴力装置の実力行使には極めて慎重かつ抑制された制御が必要と考えます。無用に危機感を煽り、騒ぎ立てることは政治の責任放棄と考えます。(愚痩子)(2009/04/07)

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いただいたコメント

技術史資料の価値について定見を持つものでも、軍隊が「胆力ある技術経営の教育と実践の場」と考える者でもありませんが、資料をゴミ視する無責任無定見な官僚と、テポドンにただただ大騒ぎするだけの政治に共通の背景を見るという点では同感です。行政の執行役である官僚は、行政がある種の暴力行使(この場合資料の廃棄)に他ならない事と、それを制御するのが政治の第一の仕事であると考えるからです。特に、軍や警察など直接暴力装置の実力行使には極めて慎重かつ抑制された制御が必要と考えます。無用に危機感を煽り、騒ぎ立てることは政治の責任放棄と考えます。(愚痩子)(2009/04/07)

「世界同時不況」時に起きた今回のミサイル騒ぎは、「北朝鮮と日本の二国間」の枠内だけで考えてはいけないという指摘は、全くその通りだと思います。 私はイギリスに住んでいますが、北朝鮮と国交があり、お互いに大使館もあるこの国では、この事件に関して日本とは大分違うニュアンスで報道されています。BBCラジオの朝のニュース番組には北朝鮮の専門家(イギリス人)が出て、日本の宇宙衛星技術が北朝鮮の脅威になっているとコメントし(日本側のコメントは一切無し)、北朝鮮が打ち上げたのは「人工衛星」という報道のしかたでした。これで日本が打ち落としでもしたら、どちらが「悪者」に見えるでしょうか?  国外に出てみると、国際社会で立ち回るには「戦略的思考」がいかに大切か実感します。「戦争は得をする人が起こす」という側面から考えると、ほとんどの日本人は戦争などしなくなくても、日本に戦争をさせたい勢力はいるかもしれません。 日本も「スマートパワー」を理解する政治家が必要ですね。(2009/04/07)

テポドン騒動(?)と技術力の衰退とは別問題では?テポドンの発射とそれに関連する問題は、あくまで日本の安全保障の問題であり、それなりに騒ぐのは当然であり必要です。ある意味、駆け引きの一環でもあります。単に技術的見識が高いから冷静に見るという問題ではなく、相手方の情勢を見て、こちらが有利になるのなら必要以上に騒ぐ必要性があると思います。それはそれで、この記事に記述されている貴重な資料の安易な処分は大変問題があるのは当然です。そもそも、今回の寄贈品の処分はきちんと寄贈者の許可を取ったのでしょうか?もし、寄贈者の許可を取らずに処分をするのなら、技術力うんぬん以前の人間としてのモラルの問題の気がします。また、産業史にとって重要と思われる品々を安易に処分をすることについては、現在の日本、特に行政・司法・立法の主要部分に理系の知識・見識を持つ人材が皆無に近い状況の方こそが問題ではないでしょうか?技術力の衰退以前に、そもそも日本では幅広い人材が乏しいとの見方もできると思います。本来ならそう言った記事にすべきだったと思います。(2009/04/06)

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