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会社の履歴書【1】日立製作所

日立とニッポン 技術独善、100年目の孤独 1

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2009年4月10日(金)

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 バブル崩壊後、日本企業は好むと好まざるとにかかわらず、大きな「変革」を余儀なくされた。金融部門の痛みは、日本企業の成長を支えた間接金融の縮小、株式の持ち合いの解消を迫り、急速に進展したグローバル化は終身雇用、年功序列の終焉をもたらした。その中で問われたのは企業の変革能力である。劇的に変化する外部環境にどう対応し、組織をどう変えていくのか。それに成功した企業もあれば、依然として対応し切れない企業もある。企業が「失われた15年」をどう生きたのか。1991年以降、「日経ビジネス」で取り上げた日本の代表的な企業の記事を「会社の履歴書」として取り上げる。
(文中の肩書き、名称などは掲載当時のままです)

日立製作所

 今年3月16日、古川一夫社長の辞任と日立プラントテクノロジー会長兼日立マクセル会長の川村隆氏の4月1日付けでの社長就任を発表した日立製作所。異例の元副社長の本社への返り咲きが示すのは日立の危機が深刻化である。そこにはかつて「GNP(国民総生産)1%企業」と言われ、自他共に日本を代表する総合電機メーカーとして君臨した面影はない。原子力発電所からコンピューター、白物家電まで。「重厚長大」も「軽薄短小」も内部に取り込んだそのビジネスモデルは、日本株式会社の典型だった。しかし、繁栄を謳歌したバブル期から一転、日本の成長力が劇的に落ち、そしてグローバル化が急速に進展した中で、日立はかつての栄光を取り戻せずにいる。日立に何が起き、日立は何を起こせなかったのか。過去16年を振り返る。

* * *

2008年4月14日号より

 樹齢100年の大きな樹がある。木陰には多くの人々が集い、雄大なその姿は国のシンボルだった。2010年、日立製作所は創業100年を迎える。その軌跡は近代工業国家としてのニッポンの歴史に重なる。

 優秀で真面目な人材が揃い、世界最高水準の技術力もある。だが、木陰からは1人、また1人と顧客や投資家が去っていく。業績は低迷し、株価はさえない。そんな日立の姿は、今のニッポンに重なる。政治の混迷、日本株売り、中国の台頭…。モノ作りでは世界一のはずなのに、期待も心配もされない孤独。

 2010年、日本はもはや「世界第2位の経済大国」でないかもしれない。

 日立のデジタル家電が世界を席巻する日はもう来ないかもしれない。だが、この樹を枯らすわけにはいかない。世界の人々が憩う木陰を作り続ける使命が、この樹にはある。

 まずは組織にはびこる「技術独善」の壁を突き破らなければならない。この樹の力強い復活を世界は待ちわびているのだから。

=文中敬称略(日本経済新聞社産業部 大西 康之、坂田 亮太郎)

孤立深める「10兆円企業」

日本を代表する企業グループが不振から抜け出せないでいる。
技術に執着するあまり、消費者や社会とのギャップは広がるばかり。
原子力発電所の事故で社会から孤立する怖さも思い知らされた。

 2008年3月末の日曜日。東京都内の家電量販店は来店客で大賑わいだった。とりわけ活気があるのが薄型テレビの売り場。エスカレーター近くの“一等地”には人気ブランドの商品が大量に陳列されている。液晶テレビならシャープの「アクオス」とソニーの「ブラビア」、プラズマテレビなら松下電器産業の「ビエラ」が客を出迎える。

 人気ブランドの販売エリアは押し寄せる客と販売員でごった返している。ただ、壁際近くまで進むと、いきなり“空白地帯”が現れる。日立製作所やパイオニアなど下位メーカーの販売エリアだ。手持ち無沙汰の販売員に声をかけてみると、閑古鳥が鳴く理由が分かった。

 「日立のテレビですか? 正直、売りにくいですよ。画面はきれいなんですけど、今はどこも変わりませんから。値段で差がなければ、お客さんはブランド力のあるメーカーの商品を買っていきますよ」

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