「同世代リーダーに聞く〜「体にいい経営術」」

人事権を社員に「戻せ」ば、組織は健やかになる

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)柴田励司COO【4】

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2009年4月17日(金)

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「社員に人事を含む、社長の権限の9割を譲るくらいの改革をやりたい」とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のCOO(最高執行責任者)、柴田励司氏は語る。それが「社長と社員の、体と心の健康のため」と。

●前回はこちら→「すばやく決裁するために、上司は「テンプレ」を用意しよう

 前回は、報告・提案の仕方のルール化など、リーダーのタイムマネジメントに役立つ工夫を聞いた。今回は、人事系コンサルタント会社を率いた柴田氏の真骨頂である人事改革の話題。人事権を会社から社員へ委譲するつもりだという。

――昔、編集長として雑誌を立ち上げたことがあるんです。このときに痛感したのが、「やりたいことをやるために『出世』したのに、立場が上になるほどやりたいことをやる時間がなくなる」こと。

 編集部員からバラバラと相談を持ちかけられる。決めたことが進んでいないと、こちらから呼んでもう一度話をする。イントラネットのスケジュール表が、自分の思惑などよそにどんどん埋まっていき、頭の中の段取りが、組み立てるはじから崩れていく。いつのまにか、「よくもこいつら、俺の時間を奪いやがって!」と理不尽なイライラを溜めたものでした。

 分かります。うまくいかないのを、他人のせいにしたくなるんですね。僕も昔はそういう邪悪な気持ちに支配されることがありました。

――「邪悪な気持ち」。それ、よく分かります。今でも邪悪な気持ちが湧くこと、ありますか。

 たまにありますが、湧きかけたら、「うわっ、まずい」と、抑えるようにしています。

(写真:大槻 純一)

――しかし、抑えようと思って抑えられるものなんでしょうか。

 “抑える”というと、言葉が違うかな。正確には、“昇華させる”かな。

「邪悪な気持ち」は、自分で細部まで考え、期待するから起こる

 立場が上になって忙しくなる理由のひとつは、「自分のイメージどおりに運びたい」という思いが強すぎることなんです。

 ディテールまで細かくイメージするから、「あれをしなくちゃ」「これを言っておかなくちゃ」と自分の働きかけが増える。忙しくなるだけでなく、イメージどおりに進まないからイライラする。

――第3回で「ディテールまで詰めすぎない」とおっしゃっていましたね。構想段階でディテールまで詰めすぎると、相手のディテールとの戦いになってしまう、と。

 プランを練るときは、最後まで考えず、相手のイメージで完結させます。

 話をするときも同じです。相手の言葉で完結させるように心がけています。「1+1=2だ」と言ってしまうと、「そのとおりです」で話が終わってしまう。相手は完全に受身です。言いたいことがあっても、言い出す隙がない。しかし、「1+1は?」と言えば、相手は「2です」と答える。相手に参加する楽しみが生まれるんです。

 これは、浅田次郎さんの文章を読んで、特に意識するようになりました。浅田次郎さんの文章は、わざと説明を省いていますよね。書き手の意図的な省略を、読者がイメージで補いつつ読むことで、読む楽しみが増す。これは人と話をするときも同じだなと思って。

――リーダーは、最後まで言わない。

 最後まで言う代わりに、相手がその気になる状況をつくりたいと思っています。

 分かってもらいたいと思ったら、何度も言うのではなく、相手が気づくようにする。いちいち相談に来ずに自分で判断してもらいたいと思ったら、本人が自分で判断したくなるようにする。

――それで思ったように動いてもらえますか。

 いや、そもそも、自分の意のとおりに他人が動くはずがないんですよ。

 こちらに待つ余裕がないといけない。たまに思っていたとおりに動いてくれたら、「ミラクルだ!」と感激するくらいの腹づもりでね。思いどおりに動かそうとするからイライラするし、口出しをして忙しくなるんだから。

 詰め過ぎず、言い過ぎず、やり過ぎず。それが自分の心や健康にも、周囲にだって一番いい。

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著者プロフィール

奥原 剛(おくはら・つよし)

1974年、大阪生まれ。PHP研究所を退社後、フリーランスライターに。執筆業の傍ら、東京都台東区で「操体レクリエーション」を開業し、気持ちよさで身心の治癒を促す医術「操体法」の施術・講習を行なっている。

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら



このコラムについて

同世代リーダーに聞く〜「体にいい経営術」

 経営とは、つまるところ体の問題である。

 ぎりぎりの状況下での判断、分刻みでの感情の切り替え、そして土壇場での振る舞い。土気色のリーダーにそれがこなせるだろうか。すべて、健康な体が土台にあってのことだ。だが、リーダーは忙しい。体調に顧慮する余裕などあるのだろうか? 実は逆だ。リーダーが不健康な状態に陥る組織は、内部に重大な問題を抱えている。言い換えれば、健全な判断をリーダーが下せる組織は、優れた経営システムを持っている、と言っていい(もちろんこれは、リーダーが部下に全てを押しつけて安楽に暮らすという馬鹿げた話ではない。そんな組織はモラルハザードを起こし、すぐ崩壊する)。

 日々激務をこなしつつ、自らの体をマネジメントし、それを組織全体の健全さに結びつける工夫を、40代を中心とした若手経営者たちに聞いてみよう。

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