「御立尚資の「経営レンズ箱」」

名リーダーに共通する3つの要件

企業社会に求められるリーダーシップ

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2009年4月17日(金)

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 仕事柄、様々なリーダーの方にお目にかかる機会が多い。また、産業界のリーダー育成のお手伝いをさせていただくこともある。こういった経験を通じて、リーダーの要件には、「コンテクスチュアル(contextual)な部分」と「普遍的な部分」とがあると考えるようになった。

 まず、コンテクスチュアルな部分。政・官・民を問わず、個々の組織の置かれたコンテクスト、すなわち文脈、背景次第で、リーダーに求められるものは異なってくる。

 単純な例だが、変化の少ない落ち着いた環境下であれば、名トップとして君臨したであろう人物が、自分がトップ就任後に起こった業界再編や技術の非連続的変化の中で、リーダーとして全く機能しなくなる、といったことをよく見聞きする。

 これ以外にも、「壊し屋」として既存のシステムを破壊するのに長けた人物が、壊した後の再構築に全く力を出せないという例や、環境の変化にもかかわらず、同タイプのリーダーが続きすぎて企業自体がおかしくなるという例も数多くある。

 逆に、閑職に追いやられていた人が、企業の危機に際して頭角を現し、人が変わったように大活躍するということもある。
 
 これらは、リーダーシップのコンテクスチュアルな部分を示したものだと言えるだろう。

変革を成功させるリーダーシップとは

 一方、「普遍的な部分」というのは、相当数の組織のリーダーに共通に当てはまる個別性の低い要件であり、性格、行動様式、そして知見・能力といったものが挙げられることが多い。

 古今この部分については、実に数多くの論が出されてきた。マキャベリの『君主論』やクラウゼヴィッツの『戦争論』といった古典から、小説や演劇の中でのリーダー像に至るまで、枚挙にいとまがないほどだ。

 ただよく見てみると、「普遍的な部分」といっても、千年の時を経てもなるほどな、と唸らされるものもあれば、もう少し賞味期限が短く、「コンテクスチュアルな部分」に近いものもある。

 例えば、リーダーシップ論の専門家であるハーバード・ビジネス・スクールのジョン・P・コッター教授は、組織変革を実現するための「10の教訓」の中の1つとして、「20世紀の歴史とその時代に培われた企業文化の影響を受けた人々は、大変革を実行しようとする際に、皆、同じような過ちを犯す」ということを挙げている。

 これは、日本でよく言われる「調整型のリーダーは、変革期に向かない」ということとは少し異なる。彼は「意義ある変革を成功に導く原動力は、リーダーシップであってマネジメントではない」としたうえで、ハイアラーキーの中での権威と権限で組織をコントロールする(20世紀型の)マネジメントは、ビジョンの作り込みとインフォーマルな人間関係をも徹底的に駆使する変革型リーダーシップと相容れないと主張しているのだ(『リーダーシップ論―いま何をすべきか』ダイヤモンド社刊より)。

 大部分の組織が変革を必要としていると考えれば、(少なくとも21世紀初頭という時代においては)個々の組織の個別性を超えた「やや普遍的」な話だろうし、もっと長い時間軸で組織や社会が変革期と安定期を繰り返していると考えれば、「ややコンテクスチュアル」だとも言えよう。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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