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「戦略なき戦術の日本」が終わる日

常識の源流対論・辻井 喬 (その2)

2009年4月28日(火)

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伊東(以下――)前回、1980年代半ば頃からマーケットの反応が鈍くなった、というお話を伺ったわけですが。

辻井 はい。

―― これは推測も含めてなんですが、オイルショック(1973年9月)以前、高度成長期後期とでも言えばよいんでしょうか、そのあたりまでは、西友なんかでセールを打っても、バッと反応があった。それがオイルショック前後から「安定成長」と呼ばれる時代に、今度は「おいしい生活。」のようにイメージ、情報を売る物流にだんだん変容していくわけですよね。「モノがなかった」という時代と「ひと通りモノがある」飽和、とは言いませんが、まあまず行き渡ってきてからの消費動向とは、全然違うように思うんです。

辻井 その通りです。

―― ところが80年代半ばを過ぎると、情報も飽和してしまって、冷戦が終わる90年代以後は平成構造不況といわれるような国内状況になって、別の谷底を迎えてしまう。そんな有為転変があったと思うわけですが、そこで辻井さんはメディアに責任があるとお考えになるわけですよね?

辻井 そう思います。メディアには大きな責任があると思いますね。

―― そこでぜひメディアの責任とその自覚について、お伺いしたいと思うんです。

メディア・イメージの戦略と倫理

―― この連載ではしばしば「戦略と倫理はほぼ同一のもの」という論旨をコラムとして書いているのですが、今は「倫理」なんかはどこかに行ってしまって、戦略というか、「イケイケどんどん」で売れたら売れたもの勝ち、みたいなことに、どうしてもなりやすい。そこで情報操作の問題が出てきて、CSR(企業の社会的責任)が言われたり。偽装表示やマルチ商法詐欺などが社会問題になったりしたわけですが、どうも「倫理」というと、多くの読者は興味を持ってくれないんですね。同じことを「戦略」というと、みんな面白がってくれるんですが。

辻井 喬 (つじい・たかし)氏
詩人・作家。本名、堤清二。1927年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。1955年に詩集『不確かな朝』を刊行、以来数多くの作品を発表。2006年に第62回恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員、日本ペンクラブ理事、日本文藝家協会副理事長。詩集に『異邦人』(室生犀星詩人賞)、『群青、わが黙示』(高見順賞)、『鷲がいて』(現代詩花椿賞、読売文学賞詩歌俳句賞)、『自伝詩のためのエスキース』(現代詩人賞)など、小説に『いつもと同じ春』(平林たい子文学賞)、『虹の岬』(谷崎潤一郎賞)、『沈める城』、『風の生涯』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『父の肖像』(野間文芸賞)、『書庫の母』、『遠い花火』など。また、評論・エッセイ集に『新祖国論』など、講演録集『憲法に生かす思想の言葉』がある。
(写真:大槻 純一、以下同)

辻井 そうなんだよね。でも、ほとんどの人は、戦略と戦術の区別がついていない。戦略と戦術を混同している人が実に多い。

―― その辺から伺えればと思うんですが。

辻井 私がビジネスマンの時代、言葉の上で一番苦労した1つが、戦略と戦術がいかに違うかということの説明だったんです。結果としては、こちらの表現力も乏しかったんだと思うんだけど、でも結局、理解されなかったように思う。つまりまず「手」が考えられちゃう。

―― ああ、「手」ですね。言い得て妙です。

辻井 それで「手」を考えちゃうと、これは戦術なんですよ。戦略というのは手を考える前の、考え方全体なんだよと。ところがこれが分かりにくいらしい。

―― 横文字で言うとタクティクスが手ですよね、ストラテジーが戦略。

辻井 うん、その「ストラテジー」というのが分からなくなっている。それは60年代から分からなかったので、ある意味では一貫して戦略不在、なんですけれどもね。

―― 戦後の日本は戦略不在、とは、よく聞くフレーズですが、辻井さんから改めて伺うと大変に感慨深いです。

辻井 以前から分からなかったのだけれども、それがいよいよ分からなくなってきている、と思いますね、最近は。というのは、ストラテジーを組み立てるには、思想、基本的には認識能力がなければ組み立てられない。タクティクスの方はマーケティング屋さんと同じで、どうしたら効果が上がるかということですから・・・。

コメント8件コメント/レビュー

辻井さんの話はついうなづいてしまう。最近は国際会議でもインテレクチュアルコントリビューションが期待出来ないとのことで招待もされ無くなったようです。最もユニークなプリンシプルを持ちうる日本人が何も世界に提案できないのは寂しい限り。(2009/05/02)

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いただいたコメント

辻井さんの話はついうなづいてしまう。最近は国際会議でもインテレクチュアルコントリビューションが期待出来ないとのことで招待もされ無くなったようです。最もユニークなプリンシプルを持ちうる日本人が何も世界に提案できないのは寂しい限り。(2009/05/02)

このコラムの愛読者です。今回は伊東氏の意見が多過ぎて、期待していた辻井氏のコメントが少ないのが残念です。伊東氏の視点と舌鋒の鋭利さはいつもの楽しみなのですが、今回は、かつての個人的な事情からたいへん興味をもって拝読しています。一文学者としての時代回顧と、経営者堤清二としての甚大な失敗と責任をご本人はどう捉えているのか。経営したグループ最盛期にはその家族を含めれば数万人に影響を及ぼした人物がどう過去を認識しているのか。観察者、批評家としての辻井氏と実業の実践者だった堤氏の乖離の深さに触れる好機と、勝手ながら期待していました。(2009/04/30)

そもそもこのコラム自体が、「常識の源流探訪」なわけで、何らかの解答を出すためでなく、何がどうなって、今常識になっているかというプロセスを紐解いていくコラムのはずです。コメントの中で、[題名に非常に興味をもったが、内容が薄いのか、脱線が多いのか、途中で読む気がしなくなり、飛ばし読みした。もうすこし戦略的に練られた記事にすべき。]というコメントがあったが、当コラムの内容としては、辿るべきプロセスをきちんと辿った脱線のない「常識の源流探訪」になっていると感じました。(2009/04/29)

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