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「アメリカの秋」をクリエーティブに生き抜け!

常識の源流対論・辻井喬(その3)

2009年4月30日(木)

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伊東(以下――) 辻井さんは「日本の伝統」と「日本の伝統のように見せかけて作られたもの」とを厳密に区別することが重要だ、とお考えになっているわけですよね。

辻井 伝統的なものに見入られたからやったんじゃなくて、「伝統的なるもの」を、よこしまな意図で自分たちの支配に悪用しただけのことだ、と。

―― 不況が続くとどうも右傾化したキナ臭い空気が漂いやすくなります。最近もそんな雰囲気を感じることがありますが、「伝統」そのものと、「伝統」を標榜すること、いわば実体のない見せかけ、ジャン・ボードリヤールの「シミュラークル(本体のない概念)」を援用するなら「日本的なるもののシミュラークル」が勝手に暴走することが危険だと思うのです。これはさっき、お話に出した裁判員制度についても同様で、犯罪を巡るシミュラークルが法廷に横溢することが問題だと思うわけですね。

 伝統即右翼といった短絡ではなく、自分たちの生活文化に根ざす、ということと、望ましい方向への改革とを、そのつどケジメしてゆくことが必要だと思います。

スケープゴート化された「日本の伝統」

辻井 ところが、なかなかそこが識別できなくて、伝統は即、悪だ、ということになってしまった。

―― 戦後の浅はかなレッテル貼りですね。いわばスケープゴートとして槍玉に挙げられているのでしょう。

辻井 だから短歌や俳句は第2芸術だとか。

―― 日本語ローマ字化論とか。

辻井 喬 (つじい・たかし)氏
詩人・作家。本名、堤清二。1927年東京生まれ。東京大学経済学部卒業。55年に詩集『不確かな朝』を刊行、以来数多くの作品を発表。2006年に第62回恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員、日本ペンクラブ理事、日本文藝家協会副理事長。詩集に『異邦人』(室生犀星詩人賞)、『群青、わが黙示』(高見順賞)、『鷲がいて』(現代詩花椿賞、読売文学賞詩歌俳句賞)、『自伝詩のためのエスキース』(現代詩人賞)など、小説に『いつもと同じ春』(平林たい子文学賞)、『虹の岬』(谷崎潤一郎賞)、『沈める城』、『風の生涯』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『父の肖像』(野間文芸賞)、『書庫の母』、『遠い花火』など。また、評論・エッセイ集に『新祖国論』など、講演録集『憲法に生かす思想の言葉』がある。
(写真:大槻 純一、以下同)

辻井 そういうもの。特に外国文学者がほとんどそういう考え方になっちゃった。外国文学者がそういう考え方になっちゃったのは、ある意味では無理ないんですね。それまで敵性文化を勉強した疑わしき日本人という、社会的な監視、権力も監視したし、人々も監視するという中で、手も足も出なかった。その鬱憤をいっぺんに晴らしますから、日本的なものは全部なくして、ドイツの思想、フランスの文学みたいなものに惹かれていった。

―― そうやってデラシネ(根無し草)みたいになっていったわけですね。

辻井 「これは社会の中に入れていけません」「これはダメです」って、外国文学者は、それで鬱憤は晴らせただろうけれども、ただ伝統を否定して、外国から輸入したものとだけ関わっても芸術は作れないんです。

―― 大学に勤めていると、実作者に憧れながら、そうはなれなかった人のコンプレックスというか怨念というか、そういうものに直面することがありますが、それはこのあたりと関係があるような気がしますね。

辻井 外国の芸術から刺激を受けて、作品を作る時には、自分の中に入っている感性に接点が生まれなければ、クリエーティブな仕事はできませんから。だから、そこのところで、1945年以後の作品は、少なくとも文学に関する限り、ひどく弱いものしか出てないんじゃないかな。つくづく思うんだけれど。2006年、オルハン・パムク(1952~、2006年文学賞受賞)というトルコの作家がノーベル賞を取りました。

―― トルコのEU入り問題なんかも含めて、微妙なところですね。

辻井 彼が日本に来る、対談をしてくれというので、急いでパムクの長編を2つ読んだのだけれど、そうしたらパムクは、トルコはどう生きていったらいいか、というのが文学の根底にあるわけです。ヨーロッパからの影響を受けるか、アジアからの影響を取るか。本当はヨーロッパから見るとアジアに入っていますが、トルコ人は自分はアジアそのものではない、緩衝地帯に存在していると思っているわけですね。

―― EU入りを希望するくらいですし、実際ウクライナとかベラルーシとかグルジアとか、トルコよりも東にある「ヨーロッパ」もあるわけだし・・・。

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