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不祥事の屈辱をバネに風土改革
「日本で一番誠実な会社」に挑戦

日本ハム

  • 小林 暢子

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2009年5月13日(水)

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2002年に起こした食肉偽装事件で消費者の信頼を失い、市場からの「退場」を覚悟。
40億円の商品を焼却させられた悔しさを改革の原動力として、競争に勝つための「強い組織」から、法令順守を重視した「正しい組織」への転換を図る。
不正を「しない」ための風土改革と、「させない」ための内部統制に取り組む。 (文中敬称略)

<日経情報ストラテジー 2006年8月号掲載>

プロジェクトの概要

 2002年夏、不祥事で地に落ちたブランドを再生させるため、新経営陣の下、徹底した組織改革を断行。企業倫理の専門家の支援を受け、翌春から「過度の業績至上主義の排除」「強過ぎる組織の壁の撤廃」「監査体制の強化」の3つの課題に取り組む。

 組織風土の改革を目指して社員自らが行動規範を策定し、グループ会社を含め500カ所以上の事業部で自律的なコンプライアンス(法令順守)活動を実践する。組織の壁を越えた情報の共有を実現するインフラ整備も促進し、「都合の悪い情報」が特定組織内に隠ぺいされない仕組みを作る。2004年からはリスク管理を目的に内部統制のフレームワーク作りに取り組み、基幹業務の規定、要領を作成した。グループ標準を各事業部やグループ各社でカスタマイズするため、「NTサークル」を組織し、業務の改善まで踏み込む。

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 「あの日本ハムがまた不祥事」

 2003年12月24日。日本ハムは、養豚事業を営む子会社で、国内で未承認のワクチンを使用していたことを発表した。その1年半前、牛肉偽装事件で社会の糾弾を浴びた日本ハムは、コンプライアンス(法令順守)を中核とした経営改革を推進していた。にもかかわらず不正を絶てないとして、同社の企業体質に再び批判が集まった。

 法令違反が明らかになったのは、同年3月から全社的に進めていた業務の自主点検活動による。ワクチン投与は牛肉偽装事件以前に起こったもので、ワクチンも欧米では一般的に利用されており、薬事法専門の弁護士からも「刑事責任は問われない可能性が高い」と助言を受けていた。

「コンプライアンス経営には痛みを伴う。だからこそ痛みを血や肉に変えなければならない」と話す社長の藤井良清 (写真:山田 愼二)

 それでも社長の藤井良清は、この違反を公にすることを選択した。「発表するかどうか、悩みに悩んだ。コンプライアンスに取り組んできた社員の意気をくじく恐れもあった。でも『日本一誠実な会社になろう』と社員に言い続けてきた自分が隠しごとをするわけにはいかない」

 企業倫理研究の第一人者として、日本ハムのコンプライアンス向上を支援してきた麗澤(れいたく)大学教授の高(たか)巖は、この一件で「コンプライアンス経営定着の手応えを感じた」という。「問題が起こらないように努力するのはもちろん、問題が起きた時に積極的に公表し、これを改めるという姿勢が浸透した証(あかし)」。この評価は、2002年以来自己否定を繰り返しながら、風土の刷新に取り組んできた藤井や現場社員にとって最高の賛辞だった。

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