「御立尚資の「経営レンズ箱」」

戦略の未来を担う「アダプティブ・アドバンテージ」

プテラノドンと変化適応力

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2009年5月15日(金)

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 紀元前7000万〜8000万年頃、地球の空には翼竜の一種、プテラノドンの姿があったという。本当にどれくらい飛べたのかということについては、様々な議論があるようだが、一般的には翼長7メートルを超す(膜のような)大きな羽を使って、長時間滑空することはできたであろうと考えられている。

 面白いことに、彼らは鳥の祖先ではないらしい。最近の研究によれば、プテラノドンが存在した時代には地表を這っていた恐竜のうち、羽毛を持つ種類が、後に現在の鳥に進化したとする説が主流となっているようだ。白亜紀の末期、隕石の衝突が契機となって気候が激変。恐竜の大部分は絶滅したとされるが、プテラノドンをはじめとする翼竜は、さらにそれよりも早い時期に絶滅したということだ。

 現在の鳥につながる恐竜(の一部)は、なぜこの大変化の時期を乗り切り、さらに進化を遂げたのか。そのほかの恐竜や翼竜は、なぜ同じような道をたどれなかったのか。

 恐竜の絶滅の原因については、隕石主因説以外にも諸説あるようだが、「なぜ絶滅したのか」よりも「なぜ生き残れたのか」の方に興味があるのは、私だけだろうか。

 ダーウィン以降、進化論そのものが「進化」を遂げる中で、何が進化を引き起こすのかについては、遺伝子レベルでの突然変異説から、「生物という複雑系自体が進化を引き起こす」という自己組織化論まで、様々な理論が覇を競っている。

 しかし、「(進化の結果)新しい外部環境に合う特徴を有する種が生き残った」というダーウィンの自然選択説は、現在でも有力な理論として生き続けている。進化の原因にかかわらず、「変化に適応した進化を遂げる」ということが、(たとえ元の種とは、全く異なったものになったとしても)生物の系統として絶滅を避けるカギであることは確かだ、ということなのだろう。

「戦略不要論」は是か非か

 さて、閑話休題。プテラノドンではないが、経営戦略は絶滅危惧種のようなものだ、あるいは、経営に戦略は不要だ、という極論がある。

 環境変化が激しくなり、じっくり時間をかけて戦略を練り上げても、その戦略を実行する段階では、戦略の前提となっていた市場の状況が刻々と変わってしまう。下手をすると、戦略を作っている間にも、周囲の環境は激変してしまい、出来上がったその瞬間に、的外れな戦略になってしまうことすらある。したがって、戦略を作り、それにとらわれて行動することよりも、戦略など無しで状況に応じて判断を下し、自らの戦い方を修正していく方がより効率的かつ実際的である。すなわち、戦略構築は不要であり、そして当然のことながら、経営戦略論などというものは意味を失い、絶滅寸前にある――こういう考え方だ。

 私自身は、こういった戦略不要論には基本的には与しない立場を取っている。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



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コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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