成果主義が嫌われる原因は、成果主義そのものではなく、思い込みに基づく誤った運用にある──。
経営コンサルタントとして企業の人事制度改革の支援も手がけている明治大学大学院の野田稔教授は、インタビューの前編でこう主張した。
では成果主義を好かれるものにするにはどうしたらいいのか。その方策は会社によって異なると野田教授は指摘し、トヨタ自動車とリクルートという業容の対照的な企業の例を挙げながら、ポイントを解説する。
(このインタビューの前編こちらから)
どうしたら成果主義は好かれるようになるのか。その処方箋は企業ごとに異なります。
例えば、(私が社長を務める)ジェイフィールで今、非常に知的レベルの高い社員が集まったサービス業の会社を相手に、成果主義型の制度を見直すお手伝いをしています。
この会社は知的レベルの高い社員が集まっていますが、業務にはチームで取り組み、成果もチームで上げる形になっています。たとえ能力が突出していても、誰か1人が頑張ってどうにかできることはない。
さらに言うと、チームの誰がどれだけ貢献したか、個々のメンバーの貢献度を評価するのが非常に難しい業態でもあります。
無理に差をつけるから不満が生じる

1957年生まれ。1981年一橋大学商学部卒業。87年同大学大学院商学研究科修士課程修了。野村総合研究所経営コンサルティング部長、リクルートフェロー、多摩大学経営情報学部教授などを経て、2008年4月から現職。コンサルティング会社のジェイフィールの代表取締役を兼務する。主な著書に『中堅崩壊』(ダイヤモンド社)、『やる気を引き出す成果主義ムダに厳しい成果主義』(青春出版社)、『誰にも聞けなかった会社のしくみ』(日本経済新聞社)など。
ところが現行の制度は、個々の社員ごとの貢献度を厳格に算定することになっている。結果として、無理やり貢献度に差をつけて、それを処遇に反映しているのが実情です。
社員たちから見れば、いわれのない差をつけられていることになるので、当然ながら納得がいかない。
彼らにヒアリングすると、次のような話が出てきました。個々の貢献度の評価が難しいといっても、同じランクの社員が10人いたら、最も優秀で業績に大きく貢献している人とそれに次ぐ2番目の人は、誰が見てもはっきりと分かると言うのです。この1番と2番を高く評価して厚遇しても、誰も文句は言わないと。
また、逆に貢献度の最も低い10番目と次に低い9番目の人も明らかで、その人たちが低く評価されて処遇が良くなくても、恐らく本人たちも異を唱えないし、「それは仕方のないことだ」と周囲も思いますと。
そこで、問題なのは3番から8番までの中間に位置する人たちだと言うのです。これらの人たちは、はっきり言ってどんぐりの背比べで、能力も貢献度もさほど変わらない。にもかかわらず、差をつけようとするから腹が立つと言うんですね。
中間に位置する人に差をつけて、半分は平均点以下にする。そうすると、知的レベルの高い人が集まっている会社ほど、士気が下がります。優等生として育ってきた学歴の高い人はそれまであまり叱られた経験がありませんから。
極端な話、会社に入ってそこで初めて「平均点以下」というらく印を押されるわけです。その瞬間に「俺はもうダメだ」と思い込んで、やる気をすっかり失ってしまうのです。
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