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法科大学院は「セミの抜け殻」でいいのか?

常識の源流対論・團藤重光(その2)

2009年5月19日(火)

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伊東(以下――) 僕はちょうど1年前、4月1日付の日経ビジネスオンラインのこのコラムで、ちょっといたずらをしたことがあるんです。改めて申すまでもなく僕は法は素人ですから、素人なりにということでコラムを書いていたんですが、その中で「罪刑法定主義」という言葉に関して、團藤先生からお教え頂いたことを、先生のお名前を伏せて書いてみたんですね。このコラムは読者からコメントを寄せてもらえるんですが、お名前を伏せて書いたところ、ずいぶんいろいろな意見や批判があったんです。

團藤 なるほどね。

―― で、その翌週、実はこれは團藤先生から伺った話で・・・と種明かししたら、前の週までいろいろ書いてくれた方が静かになっちゃったり・・・変化があったわけです。それでちょっと考えました。本来法というのは、堅固な構成を持つべきものだと思いますが、ある諸説がある時、それが権威者によるものであれば沈黙し、そうでない時はあれこれ言うというのは、科学的な態度ではないな、と思ったわけです。

團藤 全くです。ただね、本当の権威者ということは、優に基礎に尽きます。物事の価値は水面下の部分の深さにあります。表面は同じようでも、水面下にどれだけ蓄積を持っているかで、その価値は質的に違うのです。理科系などの学問でもそうで しょうが、法学のような総合科学は、特にそうです。これは大切なポイントです。

朱子学権威主義と日本的誤解

―― なるほど。全くよく解るように思います。40を過ぎてから、先生にご指導いただくようになって、僕が痛感したのは、團藤先生のご議論がいかに基礎や原理原則に忠実で、論理の飛躍や頭ごなしなところがなく、法に忠実でありながら形式に陥らず、人の目指す方向性を柔軟に、遵法的に実現しておられるか、その有り様でした。そこで思うのは、同じ内容でも「権威の諸説だから・・・」と神棚に奉じて中身を理解しなければ、きちんとした伝承は不可能だという事実です。

團藤 その通りです。

―― 昨年は、先ほどの「罪刑法定主義」という言葉が、かなりの程度「日本の概念」だということを知りました。米英の「ルール・オブ・ロー」とも違うし、欧州成文法ともどこか違う。「罪や刑を法で定める」ということ、それ自体は中世もそうだったはずですが、現実には恣意的な運用が圧倒的大半を占めていた。それを改めて近代日本の法制の中で、概念として定着させる必要があったのだと思います。

團藤 重光(だんどう・しげみつ)氏
1913年生まれ。刑法学者、東京大学名誉教授。東大法学部長、最高裁判所判事、宮内庁参与を歴任。95年に文化勲章受章。『刑法綱要』(創文社)、『刑事訴訟法綱要』(弘文堂書房)、『死刑廃止論』(有斐閣)、『法学の基礎』(有斐閣)など著書多数。
(写真:大槻純一、以下同)
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團藤 日本の法学はヨーロッパの制度を基に、明治以後に作ったものです。そこで、前回も出た「法的安定性Rechtssicherheit」みたいに、本当は時代の変化の中で動いてゆくものを杓子定規に考えると、おかしなことになるわけね。

―― そういう、いわば日本的な誤解を考えてみたいんです。どうも日本人はよそ行きでない本音の部分で、非常に堅苦しい、奉行所もかくや、という「お裁き」の意識を持ち続けているような気がします。あえて言うなら「朱子学」的な権威主義というか、事大主義というか。テレビでも「水戸黄門」みたいな時代劇が相変わらず好まれます。先例墨守の権威主義で法を空文化するのが得意ですし・・・。

團藤 生きていなきゃだめですね、生きていなきゃね。

―― 生きた内容の解釈で、罪刑法定主義も法的安定性も一貫していくのが、非常に重要だと思うんですが。

團藤 そうですよ。

―― この「日本的誤解」を考えるうえでは、近代法制のことですから、1つには欧州にも根があることと思います。でも今、裁判員制度という形で「民意」が大きく司法に影響しようという時、明治以前からの日本の法思想を改めて考える必要があるような気がします。そこで團藤先生のご所説で、朱子学の先例遵守と陽明学の自在さの対比が、大きなヒントを与えているように思うのです。

團藤 ありますね、陽明学は。

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