「すべては倉庫番が知っている」

「郵政・日通」連合から荷主が逃げ出した

進まぬ統合、鳩山総務大臣のクレームなど多難な船出

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2009年5月19日(火)

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 インターネット通販サイト「アマゾン」の利用者であれば、この春に起きた、ちょっとした変化に気づいたかもしれない。商品の配送が、従来の日本通運「ペリカン便」から、佐川急便「飛脚便」に切り替わった。

 日通にとって、アマゾンジャパンは最大の荷主。米アマゾン・ドット・コムは日本法人の業績を発表していないが、1日当たり平均10万個以上の出荷があると推測される。日通の宅配便取扱個数は約3億6000万個(2007年度)なので、アマゾンを失うことで取扱個数を1割程度、減らす計算となる。

ネット通販各社が日通を見放す

 アマゾンだけではない。これまでペリカン便を使ってきたセシールやベルーナなどの通販大手も、最近になってメーンの宅配会社を日通から佐川に切り替えている。また、中堅以下の通販会社では日通からヤマト運輸に切り替える動きが目立っている。

 一体、何があったのか。

 4月1日、日本郵政グループ「ゆうパック」と日通「ペリカン便」を統合するJPエクスプレス(JPEX)が事業を開始した。その1週間後には名鉄運輸が「こぐまの名鉄宅配便」の配送を全面的にJPEXに委託すると発表。中堅以下の宅配便が郵政・日通連合に吸収される形で、宅配便市場にヤマト、佐川に続く第3の勢力が誕生しようとしている。

 宅配便の大口利用者にとっては、宅配会社の選択肢が2つから3つに増えるのは歓迎だろう。JPEXが価格攻勢に出ることで、当面は法人向けの実勢単価も下がることが予想されるからだ。

 ところが、荷主の動きが示すように、今回の事業統合は、このままでは失敗に終わる公算が大きい。このことは、日通や郵政社内の人間も含め、物流業界関係者の間では、広く共通した見方となっている。

 理由の一端は、統合のもたつきにある。日通と郵政が宅配便事業を統合すると発表したのは、民営化直後の2007年10月のこと。当初の計画では、2008年4月までに最終合意を結び、発表から1年後となる同10月には新会社(JPEX)が事業を開始する予定だった。

 ところが両社の話し合いは難航し、最終合意が8月にずれ込んだことで、事業開始は今年4月に延期。さらにはシステム整備に予想以上の時間がかかり、今年9月までは既存の体制のまま業務を継続することに。

 JPEXで販売する宅配便のブランド名も、現時点でまだ決まっていない(5月末までに決定する予定)。当初はJPEXの3分の2の株式を握る郵政の「ゆうパック」がそのまま使われると目されていたが、これに日通側が強く反発。「ペリカン便だけがなくなるのでは社内を説得できない」として、全く新しいブランド名が採用されることになった。

 統合計画の遅れは、ペリカン便に重い代償となってのし掛かっている。この間、ペリカン便は将来に向けた投資がほとんどできなかった。今後のサービス対応や商品開発を荷主から尋ねられても何も答えることができない。

鳩山総務大臣が事業計画に“物言い”

 市場は待ってはくれない。目標とするヤマトや佐川は配送網や情報システムの整備に年間数百億円規模の投資を継続し、着々とネットワークの拡充を進めている。

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著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

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