• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

天国に一番近い島で体感した「資源は呪い」

ニューカレドニアとブータンのパラドックス

  • 谷口 正次

バックナンバー

2009年5月20日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ニューカレドニアというと南太平洋に浮かぶ“天国に一番近い島”。ブータンというとヒマラヤ山脈を背にした“国民の幸福度世界一の国”。

 前者は、レアメタルのニッケル・コバルトの産出国で、ニッケル埋蔵量世界第2位、生産量で第5位。国土の面積はほぼ四国と同じ1万8800平方キロメートルで人口約22万人。後者は、対照的に目ぼしい資源は何もない。面積はほぼ九州と同じで4万6500平方キロメートルで人口約60万人の王国。いずれもごく小さな国である。筆者はこの2つの国に、今年3月と4月に取材旅行した。 

 まずはブータン王国。国民の幸せ度を表すGNH(Gross National Happiness)という指標を編み出したのは、先代の第4代国王。GNHはブータン語ではGeluon Ghaki Peldom(=Everybody・Peaceful・Spiritual wealth)だそうだ。ブータン人の通訳によると、もともとブータンには幸せという言葉はないという。

 第4代国王は、賢くかつリーダーシップ抜群で国民から尊敬され、信頼されていたが、2005年に52歳にして退位して皇太子を第5代国王に指名した。

資源開発よりも、文化と伝統を優先

 戴冠式は2008年に行われた。それに先立ち憲法を制定し、民主的選挙によって首相を選び立憲君主制を敷いた。先代国王は、チベット仏教を心の拠りどころにして、命を大切にし、文化と伝統を守ることこそブータンを持続可能な国にする方法と考えた。

 そのためには、豊かな森と水を何よりも大切にしなければならないとして、憲法で国土の70%を占める森林を60%以下に減らしてはならないとうたい、25%の森林を自然保護区に指定した。国民にはブータンのゾンカ語と英語を習得し、そして男性には“ゴ”、女性には“キラ”という伝統衣装の着用を義務づけた。

 学校教育局長にインタビューして、その教育方針を聞いた。すると「母親からよく聞かされたことだ」と言って、次のような話をしてくれた。「石を川の中に投げ込んではいけない。また、川の中にある石を陸に放り出してはいけない」。それは、「自然を乱し、バランスを崩す行為だから」。そして、「あらゆるものに命が宿る」「殺生はするな」。いわゆる“山川草木悉皆成仏”ということであった。

 尾黒鶴の避寒地となっているポブジカ(Phobjikha)というところに行ってみた。見事な松林に囲まれた山懐の広い谷の湿地帯に飛来した鶴を見るためだ。せっせと餌をついばむ43羽を数えた。そこの周辺の村には電気が来ていない。行政が電線を引こうとしたが、村の人々は鶴が電線に引っ掛かるとかわいそうだから電気は要らないと言って断った。

 尾黒鶴の保護センターでは太陽光発電だ。鶴が遊ぶ谷間のど真ん中に小学校があり、5年生の社会科の授業を参観した。教科書は英語で、内容は一般社会・地理・歴史・天文。生徒は皆、伝統衣装を着用している。教育に力を入れた結果、国民の識字率は1950年代に15%だったが、2008年には59.5%になった。

 ブータンの経済は水力発電による電気のインドへの売電と農業が支えている。ネパール、インドからの移民問題を抱えている。国民の生活は、携帯電話、自動車、家電製品など文明の利器による便利な生活という先進工業国の価値観で見ると、決して豊かとは言えない。

 しかし、国民の96%の人たちが幸せだと思っている。それは、彼らの価値観が先進諸国のような限りない便利さと欲望を満足させてくれるモノにはないからである。

コメント5

「資源ウォーズの世界地図」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

社長に就任してずっと言っているのが ファンダメンタルズの強化。

安形 哲夫 ジェイテクト社長