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episode:9
「一言で言えば、これからつづく不景気に負けない会社にすることだ」

  • 阿川 大樹

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2009年5月21日(木)

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「じゃあ、始めるよ。第三企画室創立第一回の記念すべき会議だ」

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 旭山室長が真新しいホワイトボードに「第三企画室」と書きながら開会を宣言しただけだというのに、妙に気分は高揚していた。室長と風間さんが醸し出す、どこか仰々しい空気が伝染したのだ。

「ここが初めての配属先である楠原さんも、少し先輩にあたる風間さんも、ここへ来てもらってから長い間待たせて申し訳ありません」

 室長は新入社員の自分を呼ぶときにも「さん」づけで呼ぶ。

「当然二人とも、この第三企画室が何をするための部署なのか、ということがいちばん気になっていることだと思う」

 もちろんそのとおりだ。

「いよいよこれからその答えを僕がここで説明することを期待しているだろうけど、その期待は裏切らせてもらう」

 どういうことだ。

「いやむしろ答えは簡単だ。我々が何をすべきなのか。具体的には何も決まっていない」

「そんなぁ」

 風間さんの声には明らかに抗議の意志がこめられている。自分だって声を上げたいところを抑えたのだ。

「ミッションがないんですか」

 風間さんは悲劇が自分を襲ってくるかもしれないと怯えたプレーリードッグのように、首と背筋を伸ばして室長を見据えている。

「ミッションはある」

「だって……」

「ミッションは大日本鉄鋼を救うこと」

「救う、ですって?」

「一言で言えば、これからつづく不景気に負けない会社にすることだ」

「そんなことたった三人でできるんですか」

「できるんですか、じゃなくて、やるんだよ。できない理由はない」

「ちゃんと説明してください。ねえ、楠原くん」

 風間さんは急にこちらを振り向いて、弘毅に同意を求めてきた。予想を超えた展開で、弘毅には何をどう理解していいのかわからない。

「風間さんには少し話したことがあるが、簡単にいえば、鉄以外のことをやるということだ」

 自分は鉄鋼会社に就職したはずなのに。弘毅は思った。

「この部署を作る前に、松宮会長と議論した。いま世界で起きていることをどう捉えて、そして大日本鉄鋼としてそれにどう対策を講じていくかということについてだ。最初から共通で認識していたことは、この不景気はとても長くなるかもしれないということだ。世界のいろいろな産業で受注が何割も落ちている。収入が減ることがはっきりしてしまったとき、ひとつひとつの企業ができることは、自分の身体を小さくすることだけだ。売り上げが下がった原因が同業他社との競争に負けたからではなく、景気の波に飲み込まれたせいであれば、自分の努力で簡単に製品が売れるようにはならない」

 たしかにいわれるまでもない。成功するには努力が必要かもしれないが、だからといって努力すれば必ずすべてがうまくいくというわけではない。それは当たり前のことなのに、自分でそう言い切りたくはない気持ちも少しあった。

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