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episode:11
「この時期に限っていえば、ローテクの方が強いというわけだ」

  • 阿川 大樹

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2009年5月26日(火)

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これまでのあらすじ

 12年前に大日本鉄鋼を退職した旭山隆児(あさひやまりゅうじ)は、会長松宮賢一(まつみやけんいち)からの要請で再登板し、新しい部署を立ち上げることとなった。メンバーは、上司のセクハラを社内の人事相談室に訴えたことで異動が決まった6年目の女子社員、風間麻美(かざまあさみ)と工学部出身の新入社員、楠原弘毅(くすはらこうき)。組織表に載っていない部署と、髪を赤く染めた風変わりなボス、3人だけのメンバー--いったい、旭山は第三企画室で何をするつもりなのか。

「ちょっとすまん」

 会議の途中で電話が鳴った。オフィスのではなく旭山の胸ポケットの携帯の。

「ああ、松宮さん、ええ、まあ、ぼちぼちです」

画像のクリックで拡大表示

 どうやら相手は会長らしい。

「なんですって?」

 旭山の顔がこわばった。

「なんと……。ええ、なるほど、そうですか、気に留めておきます。そうはいっても、まあ、すぐに私ができることは何もありませんが」

 電話を切ると、旭山は大きく深呼吸をした。

 これほど真顔の旭山を見るのはもしかしたら初めてかもしれない。ステージ上の忌野清志郎かと思うほど真っ赤に染めた頭で、臆せずオヤジギャグを飛ばす男。そうでなくても細いその目は優しそうに映る。その彼がそれまで見せたことのない厳しい顔つきに変わった。

「おい、みんな、面白くなってきたぞ」

 言葉とはうらはらに、けっして〈面白い〉ときの表情ではない。

「会長からですか」

「ああ。どうやら我々を高く買ってくれようとしている人がいるらしい」

「第三企画室を? まだ何もしていないのに高く買うって、何の評価が出ているんですか」

「まさか。我々というのは大日本鉄鋼のことだ」

「ええっ!」

 大声を挙げたのは楠原弘毅だ。

「まさか、買収?」

 麻美が続いた。

「そのとおり」

「そんなことがあり得るんですか? いったい誰が」

「ヒッタイト・スチール」

 旭山の口から出たその名を聞いて、麻美も楠原もしばらく言葉が出なかった。
 たとえ日本人の多くが知らなくても、いつのまにか世界最大のスチールメーカーになっていたその会社の名前は、鉄鋼業界の人間なら知らないものはない。

「うちの株価のグラフを出せるか」

「はい、いますぐに」

 楠原弘毅がミーティングテーブルのパソコンを操作し、大日本鉄鋼の株価グラフを表示させた。

「いいか、ここに過去10年の株価の推移が出ている」

「自分の働いている会社の株価なんて気にしたことがありませんでした。随分、変動するもんなんですね」

 技術系新入社員の弘毅くんらしい感想だ。

「昨日の終値が360円。3月に250円を割り込んで底値だったところから少し上がってきている。ちょうど10年前の1999年半ばとほぼ同じ水準だ」

 百年に一度の不景気などといっても、株価だけで見れば10年前だって同じだったということか。ただし、同じグラフに表示されている日経平均は10年前に比べて3割ほど安い。

「過去10年で一番高かったのが2年前の2007年6月、900円を超えていた。いまの2.5倍だったわけだ」

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