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episode:12
「そして、最後にオートバイが残った。」

  • 阿川 大樹

バックナンバー

2009年6月2日(火)

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これまでのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)が立ち上げた新部署の名は、第三企画室。6年目の女子社員、風間麻美(かざまあさみ)と工学部出身の新入社員、楠原弘毅(くすはらこうき)を従え、髪を赤く染めたボスは何をしようとしているのか。記念すべき第一回目の会議の途中で入った報せは、インドの鉄鋼会社、ヒッタイト・スチールが大日本製鋼を買収するかもしれないという厳しいものだった。

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 バックミラーにバイクが見える。

 気になってのぞき込もうとすると、すぐにそれは視野を外れる。さっきからそれを繰り返していた。なぜ、後ろのバイクは追い越さず私をつけてくるのだ。

 風間麻美は振り返りたい気持ちを押さえて、一定のスピードを保った。時速50Km、制限速度いっぱい。海岸沿いの道路を平日のこの時刻、オートバイで走るにしてはむしろ遅い速度だ。

 走ることに夢中になるのも好きだ。だが、今日に限っては、むしろ、エンジンや風の音、それにタンクやグリップから伝わってくる振動、そういうものだけで五感を塞いでしまいたくなかった。バイクと自分の対話ではなく、通り過ぎる風景や道行く人や、それぞれの場所の暮らしのわずかな徴(しるし)を感じとろうとして家を出てきたのだ。

 それにしては速度が出すぎていると気づいてアクセルをもどしたところで、後ろを走ってくるもう一台のバイクに気づいた。空いている道でも遅く走るのは案外に難しい。一人なら自由にできそうなものだけれど、ゆっくり走るとすぐにだれかに追いつかれ、そうするとたちまちゆっくり走るのが憚られるのだ。

 だめだ。抜かせよう。

 今日のバイクはあくまでも手段だ。

 麻美は意思表示するために、ウィンカーを出して路肩に車を寄せた。ずっと後ろについていたバイクは、増速するでもなくそのままの速度で傍らを通り過ぎていった。

 どうやら彼(追い抜いていったのはやはり男だった)は、ゆっくり走っているわたしに苛立ってはいなかったようだ。そして、私の後ろをつけてきたのでもないらしい。なんだ。だったら、あのまま走っていてもよかったのだ。

*   *   *

 それにしても、平日の昼間、〈仕事で〉バイクツーリングだなんて、なんて不思議な境遇にいるのだろう。

 そんな仕事があるのは、せいぜいモーターサイクル・ジャーナリストなどと呼ばれる、バイクの雑誌に記事を書いている人くらいじゃないのか。

 第三企画室の会議第一回の一番最後に旭山はいったのだ。

「というわけで、明日から一週間、出社禁止だ」

コメント4

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