「危機の中で明日を拓く CFO“新論”」

失われた「飲み会」の良さを取り戻す仕掛け作り

成果は出さなくてもいい「もち兵衛フォーラム」が出した“成果”

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2009年6月8日(月)

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 この連載の第1回に、CFOの持つ複数の顔を紹介しました。今回と次回では、財務機能のリーダーとして、取り組んできた事、心がけてきた事をお話しします。

失われた10年は、インフォーマルな交流を失った10年

 前回、多国籍の多様な人材を強い組織にするためには、粘り強い努力とさまざまな仕掛けが必要であるとお話ししました。しかし、すでに、日本の企業でも「あ、うん」の呼吸で仕事をすることが既に出来なくなっているとも実感し始めていました。「あの資料の、あの数字だけど…」では、通じなくなってきていました。JTでもそのような気配が漂っていたのです。

 なぜこうなったのか。バブル崩壊後の失われた10年は、インフォーマルで濃密なコミュニケーション機会が失われた10年でもあったからなのです。つまり、それまで行われていた、就業時間後の職場仲間との飲み会に代表される、インフォーマルな交流の機会が、1990年代の人員削減、組織階層の簡素化と、バブル崩壊後の負の資産への対処で、業務が繁忙を極める中、失われていったのです。

 私は、過去の日本企業内のチームワークや連携の強さが、このようなインフォーマルなコミュニケーション機会にあったと考えています。ところが、これらは、必ずしもそう意図せずに行われていました。そのため、業務の繁忙化に伴い、意図せずに行われていた故にこれらの機会は自然消滅していったのです。

 しかし、単純に、お酒を飲みながらの、この様なコミュニケーションを復活させよと言っているのではありません。と言うのは、以前の日本企業内のチームワークは、ともすればそのチーム内だけのものでした。そして、部門横断的なチームワークではなく、部門内あるいはもっと小さい単位だけのチームワークは、時に縄張り意識をももたらし、全社挙げての課題解決の足を引っ張ることすらありました。いわゆる日本語でセクショナリズム、英語でsilo thinkingと呼ばれるものです。

 前々回、強い組織とは、「元気で、高いスキルを持つ個が、部門横断的に協働し、より高い成果を追い求める組織」であると説明しました。どうせ、それまで意図せず存在していた90年代までの濃密なコミュニケーションを失ってしまったのであれば、今度は意図して、部門横断的な協働をも可能とするコミュニケーションの仕掛けをつくってはどうかと考えるのです。もちろん、個々人が、飲みニケーションをはかること否定するわけではありません。

「対話」型コミュニケーションの必要性

 話題をJTに戻しましょう。JTでは幸いにも80年代のバブル経済崩壊の影響は比較的軽微でした。また、以前述べたように、1998年頃まで、国内たばこ事業の事業量が成長していました。そのため、後ろ向きの仕事よりは、むしろ、98年以降の一連の買収により、筋肉を鍛える負荷が飛躍的に増大していました。

 しかし、JT PLAN-Vによって、2004年以降、それまでの約1万7000人のJT社員は約1万1000人に減少しました。多くの人が希望退職で会社を去り、管理職をはじめ大きく人が入れ替わりました。また、支店や工場等の財務関連業務を、2004年夏に新たに設立した財務経理サービスセンターに集約し、同時に財務機能の組織再編を実行したことで、仕事の内容、分担等に大きな変更が起きました。この財務経理サービスセンターには、多くの派遣社員の方が仲間として加わったことも、それまでにない大きな変化でした。一方、前回述べた財務、税務でのグローバル・コーポレート化への検討も始まっていました。

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著者プロフィール

新貝 康司(しんがい・やすし)

新貝 康司日本たばこ産業取締役。JT International, SA 副社長、副CEO、最高財務責任者。1980年京都大学大学院電子工学課程修士課程修了後、専売公社(現JT)へ入社。たばこの工場現場を経験後、経営企画部で企業買収案件に従事。1989年、同社ニューヨーク事務所所長代理、1990年JT America Inc.社長。以後6年にわたり、抗HIV薬Viraceptの開発等、米国製薬・バイオベンチャーとの数々の共同研究開発提携案件を発掘。1991年から米国NASDAQ上場バイオベンチャー企業Cell Genesys, Inc社外取締役を兼任。1996年、JT本社に戻り経営企画部部長として中期経営計画、企業変革プログラム、企業買収プロジェクト(鳥居薬品、旧RJR International)等、全社経営企画業務を担当。2001年、JT財務企画部長に就任。全社の中期経営計画、経営管理、財務戦略を担当。企業買収、事業売却も手がける。2004年、JT執行役員財務責任者(CFO)に就任。05年取締役に就任(現任)。06年、日本、中国以外のたばこ事業の世界本社であるJT International, SA(ジュネーブ)の副社長(現任)、副CEO(現任)に就任。ギャラハー社買収と統合を指揮。2007年 JT Internationalの最高財務責任者も兼任、現在に至る。



このコラムについて

危機の中で明日を拓く CFO“新論”

日本企業の財務・経理部門は“職人”的な集団になってしまいがちです。しかしCFOはCEOの財務面でのブレインであり、経営者そのもの。危機を乗り切る経営には、この財務のブレインの存在はますます重要になるでしょう。国内最大規模のM&Aはじめ、数々のベンチャー企業の立ち上げや買収などを通して考えた、理想のCFO、そして理想のリーダー論を展開します。

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