「神谷秀樹の「日米企業往来」」

GM破綻とマネーゲーム

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2009年6月3日(水)

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 米クライスラーに続き、GM(米ゼネラル・モーターズ)が米連邦破産法11条(チャプター11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。これによってGMは再建を目指す新GMと清算処理に入る旧GMに分離され、新GMの株式の60%は米政府が、12%はカナダ政府などが所有する“国営会社”になる。

 米国の誇りの象徴でもあったGMが倒産に追い込まれたのは、消費者離れによるシェアの低下、UAW(全米自動車労組)が要求し続けた支払不能な福利厚生や退職金、とその理由は多岐にわたるが、直接の引鉄となったのはGMの倒産を望む自動車ビジネスとは無縁のマネーゲームに興じる集団勢力があったことだ。

 具体的にいえば、GMの無担保債を保有し、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を購入して倒産リスクをヘッジした “債権者”だ。

 CDSはサブプライム危機、リーマンショックで盛んに報道されたのでご存じの人も多いだろうが、債務者の破綻など信用リスクを売買する金融取引のことだ。CDSはローンや社債の保有者などの債権者が、利払い停止やデフォルト(債務不履行)のリスクを回避するために買う一種の保険だ。

GMの倒産に賭けた債券投資家

 仮にGM債とCDSの購入価格よりも高い金額の“保険”支払いを受けることが出来れば、この投資家はGM破産により「儲かる」。

 GMと米政府はチャプター11申請の前に、債務の株式化など膨大な債務を減らし、身軽になる方法を模索した。しかし、CDSでリスクをヘッジした無担保債投資家は当初の政府案(10%の持分に転換)を拒否し、土壇場で政府から「破産申請後」新たに生まれる新生GMの25%の株式を取得できるワラントを与えるという案を引き出すことにより妥結したと伝えられている。

 彼らはもともとGMを支援するために債券投資をしたわけではなく、高利の資産運用を狙ってGMの倒産に賭けたのだった。

 GMの債券保有者にCDSを売った金融機関が、GM倒産で巨額の“保険金”を支払わなくてはならなくなることを米政府は恐れ、それも政府がこれまでGMのチャプター11適用をなかなか決断できなかった理由の1つだった。

 だが、今後これらの金融機関の財務悪化が表面化すれば、金融機関の不良債権処理問題が再びクローズアップされるかもしれない。今のところCDSを大量に販売した金融機関の顔ぶれ、そして彼らがどれだけの損失を被るのかは表面化していない。

再建のカギは経営者

 こうした懸念材料を抱えながらのGMのチャプター11適用申請だが、マクロ経済からミクロの問題までどこにもマイナス要因がない策などはあり得ない。重要なのはGMの再建スキームを軌道に乗せるため、何が重要かを考えることだ。

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著者プロフィール

神谷 秀樹(みたに・ひでき)
ロバーツ・ミタニLLC創業者兼マネージング・ディレクター

神谷秀樹

1953年東京都生まれ。小学校時代をタイで過ごし、75年早稲田大学政経学部経済学科卒業後、住友銀行入行。ブラジル・ミナス・ジェライス連邦大学留学を経て、84年ゴールドマン・サックス証券に移籍。92年に日本人では初めて米国で投資銀行の「ミタニ&カンパニー・インク」を設立、95年に「ロバーツ・ミタニLLC」に社名変更。米国在住。著書に『ニューヨーク流たった5人の「大きな会社」』『さらば、強欲資本主義』(いずれも亜紀書房)『強欲資本主義 ウォール街の自爆(文春新書)、共著に『世界経済はこう変わる』(光文社新書)がある。これまでに大阪府海外アドバイザー、フランス国立ポンゼショセ大学国際経営大学院客員教授などを兼務。

(写真:丸本 孝彦)

ロバーツ・ミタニLLCのサイトはこちら



このコラムについて

神谷秀樹の「日米企業往来」

日米の巨大金融機関で勤務した後に、顧客と投資家と投資銀行家の3者の利害が一致する投資銀行を実現したいと一人で投資銀行を設立した筆者。日米の企業風土や人生の価値観などを指摘する。

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