シャープや京セラなど日本の太陽電池パネルメーカーの世界シェアが急速に低下している。2004年には日本メーカーが世界シェアの50%超を占めていたが、2008年にはそれが4分の1以下まで落ち込んだ。しかし、今の太陽電池市場は混迷期にある。100年に1度とも言われる経済危機の最中にあり、太陽電池に関する補助政策の変わり目でもある。
太陽電池市場が再び成長軌道に乗った際に、日本勢は輝きを取り戻せるのか。その命運を握るのは、既存の大手パネルメーカーだけではない。このコラムでは、日経ビジネス誌2009年6月8日号特集「決戦前夜 太陽電池」の連動企画として、太陽電池産業の隠れた主役となった企業を数回にわたって紹介していく。
今、市場に出回っている太陽電池は、原料にシリコンを使ったものが大半だ。しかし、ここへきて、「脱シリコン」をかけ声に新規参入した異業種企業の存在感が増している。
住宅の屋根に載せる太陽電池には、昭和シェル石油とホンダが参入している。両社が原料にしているのは「CIGS」という化合物半導体で、これは銅(Copper)とインジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)の4元素からなる。次世代太陽電池との呼び声も高い「有機薄膜太陽電池」では、トッパン・フォームズが米コナルカ・テクノロジーズと提携し、新市場の開拓を始めている。原料はフラーレン系の樹脂である。
太陽電池パネルで厳しい競争を勝ち抜くためには、製造コストを引き下げることが絶対条件である。新規参入組が原料にシリコンを使わないのは原料費を圧縮できるからだ。そのうえ、シリコンの供給不足や価格変動に左右されるリスクも回避できる。さらに、シリコンを使わないことで生産工程もシンプルになる。例えばCIGSの製造工程数は、シリコンを使う場合の約半分と言われる。現在、低製造コストで世界のトップを走る米ファーストソーラーも、シリコンではなく化合物半導体を使っている。
一方、有機薄膜太陽電池は、印刷技術を応用して作ることができるため、製造コストを劇的に引き下げられる。「シリコンを使う太陽電池に比べて、製造コストを10分の1にできる潜在性がある」(トッパン・フォームズ)。
新規参入組は量産を開始したばかり、もしくは今後量産を始める準備段階にあるため出荷量自体は少ないが、今後大きく成長する可能性を秘めている。
1000億円規模の設備投資を表明した昭和シェル
ここ数年の太陽電池市場の台頭を商機と見たパネルメーカーは、軒並み1000億円規模の設備投資を決めている。年間生産量が1ギガワット(ギガは10億)クラスの生産設備を持ち、量産効果によって製造コストを引き下げないことには、生き残れないとも言われる。1ギガワットは、原子力発電所1基分に相当する。

昭和シェルは後発ながら、この主戦場に正面から挑む。同社の生産規模は、現時点では60メガワット(メガは100万)にとどまる。しかし、新井純社長は、「ファーストソーラーと戦える世界トップクラスの低価格が実現できるめどが立ち次第、1000億円規模の投資判断をする。おそらく今秋になる」と断言する。
同社にとって、太陽電池は新たな収益の柱の最有力候補。石油の国内需要は既に頭打ちの状況にあり、石油事業だけでは生き残れないという強い危機感が後押ししている。「投資可能なキャッシュフローが5000億円あるが、3分の1を太陽電池に投入したい」という気合の入れようだ。
現在、製造装置メーカーのアルバックなどと量産に向けた技術開発を急ピッチで進めている。太陽電池事業を手がける子会社の昭和シェルソーラーの亀田繁明社長は、「もし世界トップクラスの低価格が実現できないなら、大規模投資をしないのはもちろん、事業自体を諦める」と言う。だが、その言葉には確かな自信がにじむ。
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