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episode:14
「子供の頃の輝くような毎日を取り戻せないものか」

  • 阿川 大樹

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2009年6月16日(火)

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前回までのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)が立ち上げた新部署の名は、第三企画室。ヒッタイト・スチールによる買収が噂されるなか、旭山が下した判断は意外にも「出社禁止」だった。父の遺したGB250クラブマンでツーリングに出かけた風間麻美は、港の定食屋でCB750Fに乗る老紳士と知り合う。

 大日本鉄鋼第三企画室の「出社禁止期間」がまもなく終わろうとしていた。

 この一週間で自分は何かのヒントを掴んだだろうか。

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 一週間自分が一番やりたいことをやってみろといわれて、風間麻美は久しぶりにバイクを乗り回した。それは確かにやりたいことだった。幸いなことに天候にも恵まれた。房総半島も富士五湖も箱根も、以前走ったことのある道路も、初めて入る細い道も、思いつくままに走り回った。

 ツーリングの毎日だったが、頭の隅に「何かを見つけなくては」という気持ちが小さなトゲのように刺さったままだった。

 自分がしていることは仕事なのだ。仕事であるのにあまりにも漠として掴み所のない課題が、日が進むにつれ重荷になってきていた。

 早く何かを得なくては。

 高速のサービスエリアの土産物屋の品揃えをいつもよりも丁寧に見た。小さなパーキングエリアのファストフードのメニューをメモ替わりにデジカメで撮影した。路傍の自動販売機の品揃えの地域差を調べてみようとも思った。

 無人販売で売られている野菜。

 たまにしかバスがやってこない田舎道の停留所に掲げられた広告(どういうわけか布団や殺虫剤が多い)。

 予約なしでふらりと泊まってみたペンション。

 防波堤で釣りをしていた老人との世間話。

 それぞれに新鮮ではあったけれど、同時に、どれもこれも想像通りのようにも思われた。30代の脱サラで始められたらしいペンションは、20年を経て今や50代のオーナー夫婦が経営していて、生活の匂いが色濃く染みついていた。防波堤では、20年前も昨日も今日も明日も、だれかが同じように釣りをしているにちがいない。

 こんなことをしていて、大日本鉄鋼の役に立つ発見があるのだろうか。焦りにも似た気持ちが繰り返し頭をもたげてくる。

 ヒッタイト・スチールが大日本鉄鋼に買収を仕掛けてくるかもしれないとして、自分の立場でそれを阻止する術(すべ)など見つかるはずがない。いや。そもそも旭山は第三企画室で買収を阻止するのだとは一言もいわなかった。だが、買収があろうとなかろうと、たしかに大日本鉄鋼が何もせず、いままでどおりでいいとは思えなくなっていた。世の中がどんどん変わっていくのなら、会社だってそこで働く人間だって変わっていくしかない。そして、十分な速度で自然に変わることができるほど、大日本鉄鋼は柔らかくもなく、ただただ大きい。

 一週間会社を離れたくらいで、決定的なものが見つかるはずもない。旭山はいった。初めて経験する世の中でいままでの経験が役に立つとは限らないと。だからといって、たった一週間の新しい経験が役に立つことにはならない。28年しか生きてきていないというのに、すでに何をしても、たいていのことは想像の範囲なのだ。

 子供の頃の輝くような毎日を取り戻せないものか。

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