今後も着実な成長を遂げると言われる太陽電池産業。ところが足元を見ると、金融危機と欧州各国の補助政策の後退で厳しい局面を迎えている。太陽電池パネルメーカーは軒並み大規模投資を決めており、既に供給過剰に陥っているとも言われる。
ある関係者は、「スペインの港湾へ行ったら、行き場を失った中国製の太陽電池パネルが入ったコンテナがはるか遠くまで連なっていた」と驚きを隠さない。パネルメーカーを取り巻く事業環境は、生易しいものではない。
みずほコーポレート銀行産業調査部エレクトロニクス担当の村木章弘調査役は、厳しい過当競争が待ち受けるパネルメーカーよりも、流通や施工など川下分野の方が日本企業は強みを発揮できるのではないかと指摘する。「川上がコスト競争になると、川下に利益が落ちてくるもの。大規模太陽光発電所(メガソーラー)のインテグレーション(システム設計や施工)など、製品を使いこなす技術に日本企業は長けているのではないか」。
実際、三井物産や伊藤忠商事といった総合商社はグローバルに太陽電池事業を展開しており、存在感を強めている。さらに、東芝や日立製作所などの重電メーカーも、得意の電力関連機器を中核にメガソーラーのインテグレーターとしての地位を確立しようと水面下での準備を進める。
バリューチェーンを押さえにかかる総合商社
三井物産ソーラービジネス事業部の石森進部長は、「モノ作り以外はすべてやる」と断言する。シリコンなどの素材供給からパネルへの組み立て、流通、発電といった太陽電池産業のバリューチェーン全体を押さえようとしているのだ。
同社が太陽電池パネルの取り扱いを始めたのは1980年代のこと。太陽電池パネルの取り扱いという、商社が得意とする川中領域から参入した。当時は太陽電池市場自体が小さかったため細々と事業を進めていたが、2000年を境に本腰を入れて川下分野への展開を開始した。米国で太陽電池の導入実績でシェアトップの米サンワイズ・テクノロジーズなど、海外のインテグレーターを買収。さらに太陽光発電所を建設、運営するIPP(独立系発電事業者)も買収し、事業領域を広げてきた。
国内では東京電力と共同で、羽田空港に新たに建設される国際線地区貨物ターミナルの屋根を2000キロワットの太陽光発電所にする計画を進めている。国内にはまだメガソーラーが数えるほどしかなく、東京電力にとっては羽田が第1号となる。
三井物産は国内と海外でビジネスモデルを明確に分けている。海外はメガソーラーのインテグレーション事業を展開するが、国内ではインテグレーションだけでなく発電事業まで踏み込んだ形での実施にこだわる。
「国内はパネルメーカーが販売、施工まで担っており参入の余地が小さいし、1件当たりの導入量が小さい住宅が主戦場。当社自らやるビジネスではないので、大規模な太陽光発電所を電力会社とともに建設、運営する発電事業に絞る。一方で海外はインテグレーションだけでも十分、事業として成り立つ」(石森部長)
三井物産によれば、2007年の太陽電池市場は、原料のシリコンが1600億円、シリコンから製造するインゴット・ウエハーが3200億円、太陽電池パネルのセル・モジュールが6800億円でインテグレーションが1兆2000億円だったという。これが2010年には3000億、5000億、1兆5000億円、2兆8000億円に拡大する見込みで、インテグレーション事業の占める割合は、ますます大きくなりそうだ。
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