「需要蒸発に勝つ価格戦略」

不況下でも利益を2倍にする売り方

V字回復に成功した「成城石井」

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2009年6月20日(土)

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 深刻な不況の中、多くの小売りが商品の大幅な値下げや特売に走っている。それらの同業者と一線を画し、価格の高い商品を取り揃えて業績を伸ばしているスーパーがある。東京都や神奈川県、大阪府などの都市部に59店舗を展開する食料品専門スーパーの「成城石井」だ。

リーマンショック後も業績を拡大

成城石井の横浜ランドマーク店。レジの前に、来店客に売り込みたい「重点商品」が並ぶ(写真:陶山 勉)

 同社の単体の経常利益は、2006年12月期に5億3700万円と、前期から半減した。しかし、そこから業績をV字回復させた。2008年9月のリーマンショックで需要が急激に落ち込んだ後も、成長軌道を維持している。

 2008年12月期は、フランチャイズチェーン(FC)店の収益計上基準を変更した影響で、売上高こそ前期比1%減の402億円と減少したが、経常利益は前期比約2倍の24億100万円まで増加した。2009年12月期も増収増益を見込んでいる。


 注目すべきは、経常利益が2007年12月期から2期連続で2倍に増えている点である。多くの小売りが利益を減らしている状況において、成城石井がここまで利益を増加させることができたのはなぜなのか。

顧客の購入点数は減少する一方で、購入金額が増加

 それは、この連載の初回でも解説した「品質フォーカス層」に分類される消費者に訴求してきたからにほかならない。

 品質フォーカス層の消費者は、価格よりも製品やサービスの質の高さに関心を抱き、価格が高くても質の良い製品やサービスに購買意欲を示す。

 この品質フォーカス層に属する消費者は、現在の不況で人数は減少しているものの、依然として健在だ。彼らを呼び寄せることができているから、成城石井の利益は大幅に伸びている。成城石井・営業本部商品部の服部吉宏部長は次のように説明する。

 「来店するお客様の人数は横ばいで推移し、一人ひとりのお客様が購入する商品の点数は減っている。それでも売り上げと利益が増えているのは、お客様が価格の高い商品を購入する傾向が強まり、1人当たりの購入金額が増えているからだ」

 まずは、成城石井の店舗を頻繁に訪れる“ファン”がいる。そしてその人たちが、価格が高くて利幅が大きい商品を購入してくれているというわけだ。

成城石井でしか買えないモノがある

 ファンが来店するのは、成城石井の店舗でしか買えない商品があるからだ。まず、通常の食品スーパーでは見つけることのできないワインやジャム、チーズといった輸入品を豊富に取り揃えている。

 さらに同社は最近、プライベートブランド(PB)の商品に力を入れている。PBは、スーパーなどの小売りが自ら企画開発してメーカーに製造を委託し、自社ブランドで販売する商品を指す。

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著者プロフィール

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス記者。日経アーキテクチュア、日経コンストラクション、日経ビズテックの記者を経て、2005年12月日経ビジネス記者。2010年4月から現職。

上田 隆穂
(うえだ・たかほ)

上田 隆穂学習院大学経済学部教授。現在は経済学部長と学習院マネジメント・スクールのヘッド・マスター(校長)を兼務する。専門分野は価格マーケティングとセールス・プロモーション。1978年東京大学経済学部経済学科卒業、東燃入社。80年に退職し、一橋大学大学院商学研究科修士課程に進学。85年博士課程の単位取得後に退学して、同大学商学部助手に就任。学習院大学経済学部専任講師、同助教授を経て、92年から教授。2000年に経営学博士号を取得。主な著書に『マーケティング価格戦略』(有斐閣)、『日本一わかりやすい価格決定戦略』(明日香出版社)など



このコラムについて

需要蒸発に勝つ価格戦略

「100年に1度」とも言われる不況で、モノやサービスの需要が急減している。まるで蒸発でもしたかのような落ち込みぶりだ。こうした事態を受けて大幅な値下げや特売を行う動きが広がっているが、それに安易に追随しても利益を出すことはままならず、業績がさらに悪化しかねない。不況のさなかでも、質に見合った価格でモノやサービスを提供し、利益をひねり出す。その仕組み作りの秘訣を、企業の価格戦略研究の第一人者が実例を基に解き明かす。

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