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episode:15
「秘密基地をわたしに教えてしまっていいんですか」

  • 阿川 大樹

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2009年6月23日(火)

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前回までのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)の新部署、第三企画室の出社禁止期間は終わりに近づいていた。父の遺したGB250クラブマンでツーリングに出かけた風間麻美(かざまあさみ)は港の定食屋で出会ったCB750Fに乗る初老の男、堂本に連絡をとった。彼のいう「ガレージ村」をその目で確かめるためだ。

「すごい!」

 風間麻美は思わず声に出した。

 堂本から話に聞いていた「ガレージ村」は思った以上に本格的だったのだ。

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「柱は伝統的な木造住宅の様式で組まれている」

 堂本はうれしそうな顔で説明をはじめた。

「ただし、トタン屋根で上が軽いから、柱の間隔は広く取れる。僕はよくわかっていないんだけどね。これでもちゃんと強度の計算はされているらしい」

「らしい……ですか」

「仕事がないっていう大工の棟梁にね、暇なときでいいからって納期の催促なしで安くやってもらった。だから骨組みはプロの仕事だ。そしたらほんとに仕事がなかったらしくてさ。若いのを連れてきて、10日かそこらでできてしまった。そこからトタン屋根を葺いたのは一応自分たちだ」

「一応って?」

「あのさ、一列だけは棟梁がお手本でやってくれて、それを見よう見まねでやるはずだったんだが、実際にはその後も棟梁はヒマだってんで、半分以上〈お手本〉を見せてくれた。こうなれば不景気ってのもなかなかありがたいもんだね」

「やっぱり屋根の上は恐いから、俺たちが登ると、びびっちゃってさ、てんで能率が上がらないわけ。手を滑らせてトンカチを地面に落としちゃうしさ」

 口を挟んだのはいま紹介されたばかりの別の仲間だ。

「その代わり外回りは全部自分たちでやったんだ」

 ちっとも〈代わり〉になっていない。もともとそこも自分たちでやるはずだったのだろう。何と代わったのだ、と思ったが、細かいことにツッコミは入れない。

「ここはいわば俺たちの〈秘密基地〉ってわけだ」

 秘密基地。

 男たちはほんとうに秘密基地が好きだ。麻美は思った。

 子供の頃、遊び仲間の男の子が、「すごいの見せてやるよ」というからついていったら、林の中のぽっかり空いた小さな空間に、拾ってきた枝だの新聞紙だので作られた〈建物〉ができていた。

 それは体を小さく縮めてふたりがやっと入ることができる大きさで、誘われて一緒に入ってみても、自分にはただ窮屈なだけだった。男の子はそれができたことがすごくうれしかったらしく、別れ際に「秘密基地なんだから誰にもしゃべっちゃ駄目だぞ」といった。

 それ以来、いったい自分は何人の男たちとそうやって「秘密」を持っただろう。

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