経営とは、つまるところ体の問題である。
ぎりぎりの状況下での判断、分刻みでの感情の切り替え、そして土壇場での振る舞い。土気色のリーダーにそれがこなせるだろうか。すべて、健康な体が土台 にあってのことだ。だが、リーダーは忙しい。体調に顧慮する余裕などあるのだろうか? 実は逆だ。リーダーが不健康な状態に陥る組織は、内部に重大な問題 を抱えている。言い換えれば、健全な判断をリーダーが下せる組織は、優れた経営システムを持っている、と言っていい(もちろんこれは、リーダーが部下に全 てを押しつけて安楽に暮らすという馬鹿げた話ではない。そんな組織はモラルハザードを起こし、すぐ崩壊する)。
日々激務をこなしつつ、自らの体をマネジメントし、それを組織全体の健全さに結びつける工夫を、40代を中心とした若手経営者たちに聞いてみよう。
連載の第2クールは、最近の若手経営者のトライアスロンブームの火付け役のひとり、名古屋生まれの外食企業、ゼットンを率いる稲本健一社長。4回にわたってお届けする。
| 稲本 健一(いなもと けんいち) 1967年生まれ。商社、デザイン事務所勤務を経て、1995年、株式会社ゼットンを設立。名古屋、東京、京都、オーストラリアにレストランバー、ハワイアンダイニング、和食居酒屋など多様な店舗を展開し、名古屋テレビ塔など公共施設へも出店している。39歳からトライアスロンを始め、世界各地の大会に出場している。 |
![]() (写真:大槻 純一) |
――・・・というような企画で、今回は文字通り直球、「いいガタイ」の経営者をお訪ねしてみました。稲本さん、そもそも、トライアスロンはどんなきっかけで始めたんですか。
稲本 飲食業ですから試食が多いでしょう。以前は人の数倍食べていたんですよ。おかげで30代の一時期は、体重が90キロ近くありました。
このままじゃいけないと、筋力トレーニングのボディメイキングを始めました。パーソナルトレーナーについてもらい、仕事に差し支えない範囲で食事制限もして。
それで体は引き締まったんだけど、ただ黙々と体を鍛えることが味気なくなっちゃった。風呂から出て鏡を見て、「おっ、ムキムキになってきたな!」とポーズをとっても、なんだかねぇ(笑)。
――なんのために鍛えているのか分からなくなった。
ええ。しかも、ワークアウトでつくった筋肉は硬い。まるでしなやかさがない。スーツも似合わなくなるしね。「なにか夢中になれるスポーツがないかな」と思っていたときに、ロンドンマラソンで走ることになったんです。
――いきなりロンドンマラソンですか。それはどんな経緯で?
飲み屋の約束は守る
昔からの友達の甘糟りり子という作家が、「ロンドンマラソンに出て『42歳の42.195km』という本を書く」というので、「それじゃあ応援ランするよ」とノリで言っちゃった。僕自身フルマラソンの経験はありましたが、「えらい約束をしてしまった」と思いました。しかし、「飲み屋の約束は守る」というのが僕らの掟(笑)。結局、友だちと一緒に応援ランをしました。
走り終わって、夜、みんなで飲んでいたら、甘糟りり子のトレーナーをしていた白戸太朗さんから、「稲本さん、絶対、トライアスロン向いてるよ」と言われた。
最初はもちろん、「ありえん、ありえん、絶対無理」と一蹴しましたよ。トライアスロンなんて、肉体を鞭打つことにとりつかれた、別世界の人間がやることだと思っていましたから。
――代表的なスタイルでは、水泳(スイム)1.5km、自転車(バイク)40km、マラソン(ラン)10kmだそうで。もともとは海兵隊員が始めた、とか言われていますね。
「オレには無理だよ」と断ったんですが、相手があまりに熱心にすすめるので、「そこまで言うなら、やってみっか」と。
――また飲み屋で約束してしまった(笑)。
その後、帰国してからも背中を押される出来事がありました。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。





からのご案内




