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「値下げ」で不幸にならない唯一の方法

単なる安売りでは「悪魔のサイクル」にはまる

  • 常盤 文克

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2009年6月29日(月)

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 昨秋からの急激な景気悪化で、様々な分野で商品やサービスの値下げが相次いでいます。1000円を切るジーンズの人気やファストフード業界の好調など、1年前の異常なガソリン高や食品の高騰が嘘のように、安売り競争が加速しています。

 モノやサービスの価格が安くなることは、表面的には、また短期的には消費者にとってありがたいことに思えます。しかし、日本企業にとって、日本経済にとって本当にプラスに働くのかどうかを考えると、話は変わってきます。安売り競争の行き着く先に、果たして人々の、社会の幸せがあるのか――。この点について、今回は考えてみたいと思います。

 物価の下落には、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは、原材料や素材の調達価格が下がり、それに伴って最終製品の価格も下がるという動きです。「下がる」という言葉の通り、外部の市場環境の変化に連動して起きる自然な値下がりです。

 もう1つは、消費が低迷する中で何とかして売り上げを伸ばそうと、価格を下げる動きです。こちらは「下げる」という言葉からも分かるように、利益を削って値を下げ、安く売ることを意味します。いわゆる「安売り」です。前者と後者では、自然な「値下がり」と、あえて安くする「値下げ」とである点が大きな違います。

不健全な値下げが企業を弱らせる

 安売りの根底にあるのは、安くすれば買ってくれるだろうという間違った認識です。いま、市場はモノであふれ、飽和しています。消費者は安いからといってモノをたくさん買うわけではなく、必要なものを必要なだけしか買いません。安売り戦略では業績が上がらないのです。これは、ここ10年のスーパーやデパートの売り上げの伸び悩みを見れば分かります。

 安売りすることは、企業にとって決して健全な活動とは言えません。なぜなら、本来なら得られるはずの適正な利益を削って正常な価格を下げ、異常な価格で売るからです。安売りは企業の体力を弱め、ひいては従業員の賃金や雇用にも影響を及ぼします。仮に賃下げやリストラといった事態になれば、消費者である従業員やその家族の購買力を低下させ、回り回って小売りメーカーの売り上げの減少という形で跳ね返ってきます。

 しかも、影響は安売りした企業だけにとどまりません。小売りであれば川上の製品メーカーへ仕入れ価格の値下げを要求し、メーカーはさらに川上の原材料サプライヤーに同様の値下げを迫ります。安売りは、モノづくりの下流から上流へとさかのぼってすべてに影響を及ぼし、結果的にみんな痛んでしまい、経済全体のカネの循環を逆回転させる可能性すらあるのです。

 また、安売りの悪い影響は、いろいろなところで、いろいろな形であらわれます。まず、社員の士気を下げ、組織を弱らせてしまいます。皆が努力して作り出した製品が店頭で安売りされているのを目の当たりにしたら、社員はどう思うでしょうか。

 かつてある携帯電話メーカーの技術者は、自分が設計した製品が店頭で1円で売られているのを見て、「俺の努力の価値は、たった1円なのか」と落胆したといいます。最近も通信サービスとセット販売の「100円パソコン」を店頭で目にしますが、セットならいくらか利益が出るからとはいえ、実際にその開発者が目にしたら悲しい思いをするでしょう。安売りによって、作る側の意欲をそぐようなことがあってはなりません。

 ここまでの安売りは極端な例かもしれませんが、安売りするためのコスト削減の取り組みも、実は社員の士気に大きく影響します。そもそもコストを削ることは前向きな仕事ではありませんし、それが何かを創造しているわけではありません。そこには、夢や働く喜びは感じられないでしょう。行き過ぎたコスト削減や効率化を強調する会社では、社員が萎縮してしまわないかと心配です。

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