日々激務をこなしつつ、自らの体をマネジメントし、それを組織全体の健全さに結びつける工夫を、40代を中心とした若手経営者たちに聞く連載「体にいい経営術」。連載の第2クールは、自らトライアスロンに挑み、「いい身体」を創りあげたゼットン社長・稲本健一氏にお聞きする。
●前回はこちら→「「俺はなんのためにこんなつらい仕事をしているんだろう」そう思ったら」
「飲食業は人の問題の連続」という稲本氏。一時は食事が喉を通らないほど悩み通したが、「悩み続ける覚悟」をしたら視界が開けた。同時に、体への意識も高まったという。今回は、体の視点から考えた商売のお話。「お金で買えないものが売れる」という、現在のトレンドとは?
――飲食業の世界へは、学生の頃から興味があったのですか?
稲本 いいえ。学生時代はこてこてのスポーツ青年。高校はバスケットのスポーツ特待生として入学し、陸上に転向しました。100メートル走で北陸代表としてインターカレッジにも出たんですよ、一回戦で負けちゃいましたが。大学ではビーチバレー部にいました。
――その当時にビーチバレー部があったんですか。
ええ。ちょうどハシリの頃。ビーチバレージャパン第1回大会が1987年でしたから。進学は、アート方面に関心があったので、芸術系(名古屋造形芸術短期大学)に入りました。
ライブ感に魅かれて飲食業の世界へ
卒業して入った商社を半年で辞め、デザイン事務所に入り、プロダクトデザイナーとして、大手自動車メーカーの内装デザインにたずさわったんですが、給料が安かったので(笑)、夜にバーテンダーのアルバイトをしていたんですよ。それで飲食業の面白さを知った。
――どんなところが面白かったんですか。
プロダクトデザインでは、デザインしてから商品になるまで1〜2年かかる。今はもう少し短くなっているだろうけど。
一方、バーテンダーの仕事だと、目の前にいるお客さんのためにカクテルをつくり、お出しした瞬間に「きれいだね」「おいしいね」と反応がある。しかも、そのお客さんがまた来てくださったり、友達を連れてきてくださったり。これは面白いと思った。
――自分のアクションへの、リアクションの速さが。
加えて、ライブ感とコミュニケーションも、飲食業の魅力でした。僕は、映画のように静的なものより、ライブのように動的で、相互にコミュニケーションがあるものの方が好きなんです。
それで飲食業の道へ進もうと決めたら、「こんな店をつくりたい」というイメージが鮮やかにわいてきた。
――どんなイメージだったんですか?
店づくりは街づくり。チェーン店はつくらない
「青空の下の芝生で食べるおにぎりに勝るものはなし」というのが僕の持論なんです。青空の下で食べる、大好きな人が握ってくれたおにぎりは、フォアグラやらフカヒレやらを使ったどんなに高級な料理より、絶対にうまい。

だから僕は、できれば飲食店に屋根などない方がいいと思っていて。僕の店にはテラス席がやたらと多いんです。小さな店舗にえらくでっかいテラスを造ったりしてね(笑)。空の下の風の吹くところで食べたり飲んだりするのは、最高に気持ちがいいからね。
――確かに、このお店もテラス席が広い。(取材場所の隣はゼットンの店舗「ALOHA TABLE Daikanyama Forest」だった。)
僕が最初の店を持った15年前の名古屋には、オープンカフェのようにテラス席でお酒を飲める店が一軒もなかった。「名古屋にテラスのあるレストランバーをつくりたい」と思ったのが最初の一歩でした。
そういう思いから飲食業を始めたので、僕はチェーン店をつくりません。1つのパッケージをつくって、それを何十軒も増やしていくことにはどうも興味が持てない。
――なぜですか。
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