「同世代リーダーに聞く〜「体にいい経営術」」

今売れるのは「お金で買えないもの」

ゼットン社長 稲本健一氏【3】

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2009年7月10日(金)

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 日々激務をこなしつつ、自らの体をマネジメントし、それを組織全体の健全さに結びつける工夫を、40代を中心とした若手経営者たちに聞く連載「体にいい経営術」。連載の第2クールは、自らトライアスロンに挑み、「いい身体」を創りあげたゼットン社長・稲本健一氏にお聞きする。

●前回はこちら→「「俺はなんのためにこんなつらい仕事をしているんだろう」そう思ったら

 「飲食業は人の問題の連続」という稲本氏。一時は食事が喉を通らないほど悩み通したが、「悩み続ける覚悟」をしたら視界が開けた。同時に、体への意識も高まったという。今回は、体の視点から考えた商売のお話。「お金で買えないものが売れる」という、現在のトレンドとは?

――飲食業の世界へは、学生の頃から興味があったのですか?

稲本 いいえ。学生時代はこてこてのスポーツ青年。高校はバスケットのスポーツ特待生として入学し、陸上に転向しました。100メートル走で北陸代表としてインターカレッジにも出たんですよ、一回戦で負けちゃいましたが。大学ではビーチバレー部にいました。

――その当時にビーチバレー部があったんですか。

 ええ。ちょうどハシリの頃。ビーチバレージャパン第1回大会が1987年でしたから。進学は、アート方面に関心があったので、芸術系(名古屋造形芸術短期大学)に入りました。

ライブ感に魅かれて飲食業の世界へ

 卒業して入った商社を半年で辞め、デザイン事務所に入り、プロダクトデザイナーとして、大手自動車メーカーの内装デザインにたずさわったんですが、給料が安かったので(笑)、夜にバーテンダーのアルバイトをしていたんですよ。それで飲食業の面白さを知った。

――どんなところが面白かったんですか。

 プロダクトデザインでは、デザインしてから商品になるまで1〜2年かかる。今はもう少し短くなっているだろうけど。

 一方、バーテンダーの仕事だと、目の前にいるお客さんのためにカクテルをつくり、お出しした瞬間に「きれいだね」「おいしいね」と反応がある。しかも、そのお客さんがまた来てくださったり、友達を連れてきてくださったり。これは面白いと思った。

――自分のアクションへの、リアクションの速さが。

 加えて、ライブ感とコミュニケーションも、飲食業の魅力でした。僕は、映画のように静的なものより、ライブのように動的で、相互にコミュニケーションがあるものの方が好きなんです。

 それで飲食業の道へ進もうと決めたら、「こんな店をつくりたい」というイメージが鮮やかにわいてきた。

――どんなイメージだったんですか?

店づくりは街づくり。チェーン店はつくらない

 「青空の下の芝生で食べるおにぎりに勝るものはなし」というのが僕の持論なんです。青空の下で食べる、大好きな人が握ってくれたおにぎりは、フォアグラやらフカヒレやらを使ったどんなに高級な料理より、絶対にうまい。

 だから僕は、できれば飲食店に屋根などない方がいいと思っていて。僕の店にはテラス席がやたらと多いんです。小さな店舗にえらくでっかいテラスを造ったりしてね(笑)。空の下の風の吹くところで食べたり飲んだりするのは、最高に気持ちがいいからね。

――確かに、このお店もテラス席が広い。(取材場所の隣はゼットンの店舗「ALOHA TABLE Daikanyama Forest」だった。)

 僕が最初の店を持った15年前の名古屋には、オープンカフェのようにテラス席でお酒を飲める店が一軒もなかった。「名古屋にテラスのあるレストランバーをつくりたい」と思ったのが最初の一歩でした。

 そういう思いから飲食業を始めたので、僕はチェーン店をつくりません。1つのパッケージをつくって、それを何十軒も増やしていくことにはどうも興味が持てない。

――なぜですか。

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著者プロフィール

奥原 剛(おくはら・つよし)

1974年、大阪生まれ。PHP研究所を退社後、フリーランスライターに。執筆業の傍ら、東京都台東区で「操体レクリエーション」を開業し、気持ちよさで身心の治癒を促す医術「操体法」の施術・講習を行なっている。

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら



このコラムについて

同世代リーダーに聞く〜「体にいい経営術」

 経営とは、つまるところ体の問題である。

 ぎりぎりの状況下での判断、分刻みでの感情の切り替え、そして土壇場での振る舞い。土気色のリーダーにそれがこなせるだろうか。すべて、健康な体が土台にあってのことだ。だが、リーダーは忙しい。体調に顧慮する余裕などあるのだろうか? 実は逆だ。リーダーが不健康な状態に陥る組織は、内部に重大な問題を抱えている。言い換えれば、健全な判断をリーダーが下せる組織は、優れた経営システムを持っている、と言っていい(もちろんこれは、リーダーが部下に全てを押しつけて安楽に暮らすという馬鹿げた話ではない。そんな組織はモラルハザードを起こし、すぐ崩壊する)。

 日々激務をこなしつつ、自らの体をマネジメントし、それを組織全体の健全さに結びつける工夫を、40代を中心とした若手経営者たちに聞いてみよう。

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