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民営化見送りで大赤字の米郵政庁

毎年の値上げでも賄えず、配送頻度の削減も

  • 大矢 昌浩

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2009年6月30日(火)

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 日本の郵便は米国と比較して料金が2倍で、国民1人当たりの郵便通数が3分の1だと前回のコラムで書いたが、米国郵政庁(USPS)の運営が順調というわけではない。むしろ逆で、先日来日した米郵政規制委員会のダン・ブレア委員長によると、「USPSは今期中にも資金ショートを起こす懸念がある」と言う。

 USPSの業績は2006年度が51億ドル、2007年度が28億ドルと2年連続で赤字を計上している。2008年10月から始まった今年度は赤字がさらに悪化し、上半期は売上高360億ドルに対して23億ドルもの損失を計上した。通年では60億ドル超の損失が見込まれている。

 経費削減のため、USPSは今期既に全国80カ所の地域拠点のうち6カ所を閉鎖、15万人の早期退職募集、521の管理職ポストの廃止を実施している。残る74カ所の地域拠点でも1400以上の現場管理職を廃止し、管理職の人員数を15%削減する計画だ。

 一連のコスト削減効果として約60億ドルが見積もられている。ただし、通年の60億ドルという損失見込みは既にこれを織り込んだもの。つまりリストラしなければ120億ドルもの赤字を出すことになる。

金額を印字しない切手も登場

 財務状況は急速に悪化している、2005年度にゼロだった長期借入金が今期第1四半期末には65億ドルに。米連邦議会はUSPSに対し、借金の限度額を年間30億ドルまでと定めている。その枠を目一杯使ったとしても、今期末には35億ドルの資金不足を生じさせる恐れがある。

 そこでUSPSは現在、米議会に対して従来の週6日配送を週5日に削減すること、そして退職者用健康保険基金の積み立て義務の緩和を求めている。それが認められなければ、税金を投入して赤字を補填するか、大幅な値上げしかない。

 米国の郵便料金は既に4年連続で値上げしている。2006年まで37セントだった米国内の一般封書便(第一種郵便)の料金は、39セント、41セント、42セントと毎年改訂されて、今年5月には44セントに上がった。

 ちなみに値上げ幅が小刻みなのは、物価変動に基づいて値上げ幅を制限するプライスキャップ制を敷いているためだが、これでは切手を貼るのも面倒だ。そのため、2007年4月には額面に金額を印刷しない「フォーエバースタンプ」という切手が登場している。

 フォーエバースタンプの値段は現行の郵便料金。購入後どれだけ値上がりしても追加料金なしで永遠に使えるため、料金改定前には買いだめする人が増える。郵便物の減少を食い止めるための苦肉の策だそうだが、売り上げの先食いでもある。

 米政府は2004年の「年次改革要望書」で、日本に対して郵政民営化を要求したとされる。しかし、その前年に当時のジョージ・ブッシュ米政権はUSPSの国営維持の方針を打ち出している。これを受けて2006年12月制定の米郵便改革法では、USPSの国営と市場の独占が追認された。

 具体的には、一般郵便、ダイレクトメール用の大口割引郵便、定期刊行物の配送および住所リストサービスなど付帯事業の独占が認められた。家庭の郵便ポストもUSPSだけが使用できると規定された。もし民間の物流企業が郵便ポストに投函すれば、罰則を受ける。

 国民の誰もが一律の条件でサービスを利用できるという、ユニバーサルサービスの原則を維持するには、国営という組織体制と事業の独占が必要だというのが米政府の見解だ。郵便事業の効率性やサービス品質は経営に対する監視を強化することで担保できるという判断だった。

コメント4件コメント/レビュー

民営化でなんでも解決するなら、ニュージーランドの悩みも発生しないのだけれど(そもそも倒産する民間企業があるのが変でしょう)。(2009/07/07)

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いただいたコメント

民営化でなんでも解決するなら、ニュージーランドの悩みも発生しないのだけれど(そもそも倒産する民間企業があるのが変でしょう)。(2009/07/07)

どこの国でも、国営企業が抱える問題は似たようなものですね。リストラのみでしか未来図を描けないようでは、USPSの先は長くなさそうです。民営化は大仕事ですが、経営が傾いた国営企業にとっては、避けては通れない道なのかなぁと思いました(うり)(2009/06/30)

USPSは単に手紙小包の配達だけではなく、アメリカ建国時はポストマンは大きな権限を持ち、市民の生活の重要な部分を助けてきた。そのプライドがある。現在でも、黒人や移民などの貧困層はUSPSしか利用できない。FEDEXやUPSはサービスが良いが、高いからである。USPSが民営化すれば、貧困層の切捨てになる。まさに、日本で国鉄が民営化され、地方が切り捨てられ、疲弊して行ったように。アメリカの貧困層は、日本の地方の人のようにおとなしくはない。郵便事業が利用できなくなったら、かなりの反発、政治行動が予想される。FEDEXやUPSの利権確保という経営的な面だけでなく、アメリカの政治的な面も見る必要がある。(2009/06/30)

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