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episode:17
「すべては自分の仕事のためであり、世の中に雑用という名の仕事はないのだ」

  • 阿川 大樹

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2009年7月7日(火)

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前回までのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)の新部署、第三企画室の出社禁止期間が明けた。旭山は風間麻美(かざまあさみ)と楠原弘毅(くすはらこうき)のふたりを前に、自分が大日本鉄鋼を離れるきっかけとなった、大日本セミコンダクタ売却のいきさつを語った。90年代の半導体業界で日本はどんなポジションだったのか、そしてなぜ松宮会長は自分を呼び戻したのか--。

 鉄から離れて外の世界を見ること、そして会社を外の世界から見ること、それが第三企画室の存在意義なのだと、旭山さんは〈出社禁止明け〉の日の朝、話してくれた。

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 それは雑談から始まった話だったけれど、いつのまにか楠原弘毅にとって、一週間前の会議以上に、会社のことを知るよいきっかけになった。

 この部屋に初めて来たとき、大きな製鉄所でもなく立派な本社でもないマンションの一室に配属になったことに失望していた。学生時代には自分がロックをやっていたというのに、髪の毛の赤い上司を見て自分の将来が不安になった。

 就活という〈手続き期間〉を通じて、社会のことを何も知らない自分が想定していた〈会社員のあるべき姿〉に自分を合わせ、入社2か月にして、そんな会社員像に染まっていた。

 そうするのが当たり前のことだと思っていた。みんなそうなのだ。実際、社会にはさまざまな暗黙のルールと暗黙の行動原理があり、それによって世の中が動いていることは確かなことなのだ。

 けれど、一方で、一人一人の構成員がそれに何の疑問も持たないことが、変わり続ける世界に合わせて、会社が変わっていくことを妨げていると、旭山さんは身に滲みて体験したということらしい。

 会社を辞めて12年、60過ぎのオッサンが真っ赤な髪の毛を逆立てていることの意味が、弘毅にはなんとなくわかるような気がしてきた。裁判官の法服が「どんな色にも染まらない」黒であるとするなら、旭山さんの頭は、別のやり方で「染まらない」ことを周囲に宣言しているようであり、もしかしたら意識の奥で、なんとか自分こそが周囲を赤く染めてやろうと思っているのかもしれない。

「楠原さん、電話してピザ頼んでくれないか。ランチを食べながら一週間の成果報告会をやろう」

「はい」

 弘毅はすぐに電話に手を伸ばした。

 第三企画室に初めてやって来た日、オフィスの備品を調達しろと言われて感じた反発は、いま弘毅の胸のどこにもなかった。

 ここは自分の会社であり、すべては自分の仕事のためであり、世の中に雑用という名の仕事はないのだ。

「おお、茄子とトマトとアンチョビか、いいセレクションじゃないか」

 旭山さんが届いたピザに手を伸ばしながらそういった。電話でピザを注文するという、これ以上ないほど簡単な仕事だったけれど、誉められたことがなんだかうれしい。

「じゃあ、年齢順ってことで、楠原さんの一週間から話をしてもらおうか」

 弘毅は渋谷のライブハウスでの一夜について語り始めた。

*  *  *

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