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いまどき「国産」の「靴下」に賭けて増収増益!

タビオがコモディティー商品で味わった栄光、挫折、そして復活

2009年7月1日(水)

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 「靴下」というコモディティーで増収増益を実現している希有な企業がある。その会社の名前はタビオ、その昔はダンと言った。

 「売れる商品を必要な分だけ作る」。この理想の実現に燃えた創業者は、店頭のPOS(販売時点情報管理)データを協力工場などと共有する仕組みを構築。極力、在庫を持たない効率的な生産システムを作り上げた。2000年10月には大阪証券取引所第2部に株式を上場。SCM(サプライチェーン・マネジメント)の最先端企業として内外の注目を集めた。

 もっとも、表舞台でのスポットライトとは裏腹に、組織の内側は病魔に蝕まれていた。「靴下の神様」と崇められる創業者が生み出す製品はいつでも最高級の品質を誇っている。だが、「モノ作り」に対する過度の傾斜と、それによって醸成された「プロダクトアウト(生産主導)」の社風は、売り場の荒廃を招き、現場の士気を落とした。その結果だろう。上場後の数年間は足踏み状態が続いた。

 そのタビオが、ここにきて輝きを取り戻しつつある。これから、タビオの軌跡を見ていく。栄光と挫折、そして復活――。逆風下で輝く企業の本質が見えるに違いない。

(日経ビジネス オンライン、篠原匡)


 その瞬間、大広間は凍りついたように静まり返った。

 奈良県広陵町にある大豪邸の一室。20人は座れそうな長机の向こう側には裸足の“会長”がいた。目の前には紳士用靴下のサンプルが4つ置かれている。このサンプルを前に、会長は仮借ない意見を飛ばしている。

 「おまえ、これはボテ感ありすぎやろ。もう少し薄い方がエエ」

 「これ、ヨリをもっときつくして、リブにしたらどうや」

 「これは悪うないけど、足首が緩くないか。もっと裏糸のパワーがキツイ奴の方がエエんと違うか」

 「とにかくヨリを上げてくれ」

 ボテ感、裏糸、ヨリ、リブ――。傍らで聞いていて、何を言っているのかよく分からない。だが、こうした指摘に対して、担当者は真剣な顔つきで聞き入っている。

靴下のサンプルが出来上がると、越智直正会長(写真右)に持っていき、出来上がりを見てもらう
(写真:宮嶋康彦、以下同)
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 ひとしきり感想を言い終えると、その中の1つを手に取り、鋭く睨みつけた。「履きますよ」。参加者の1人がそう囁くや否や、会長はずいっと一息に靴下を履いた。それも、靴下を膝まで引っ張るように力強く。そして、かかとをさすりながら履き心地や感触を確かめていた。

 「会長はダメだと思う靴下は履いてくれません。会長に履いてもらえるだけで私たちは感激なんですよ」。先の参加者はそう言うと、胸をなで下ろした。そして、会長はデザインや締めつけ感、肌合いなどについて、いくつかの改善点を指摘していった。

 それにしても、なぜ靴下を踏み抜くように強く履くのか。あまりに不思議だったので、会議が一段落した時に聞いてみると、会長はにやりと笑ってこう言った。「靴下はな、かかとが上がりも下がりもせずスパっと鎮座せないかん。それを確かめとるわけや」。この人物は越智直正氏。タビオの会長である。

たとえ女性用のタイツであっても感触を確かめる

 タビオは「靴下屋」や「Tabio(タビオ)」などを展開する靴下専門チェーン。女性用靴下を中心に、年間に3000~4000アイテムの靴下を企画、販売している。売上高は約153億円、経常利益で約18億円(2009年2月期)。「3足1000円」という安価な中国産が幅を利かしている靴下業界にあって、国産靴下にこだわり、持続的な成長を続けている。

 この会社をここまで大きく育てたのは「靴下の神様」の異名を取る越智会長である。中学卒業後、大阪の靴下問屋に奉公に入った。だが、誤解から奉公先の大将と衝突。28歳の時にクビになった。その後、独立し、一代でタビオを業界一の会社に育て上げた。

越智会長はすべてのサンプルに足を通す
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 2008年5月、長男の越智勝寛氏に社長の座を譲り会長に退いたが、会長になった今も、商品開発の要であることに変わりはない。新商品のサンプルが出来上がると、タビオや協力工場の担当者はサンプルを会長の自宅に持っていく。たとえ女性用のタイツであっても、越智会長は足を通して感触を確かめる。会長が首を縦に振らない限り、そのサンプルが商品化されることはない。

 サンプルの試着に臨む越智会長の姿勢は神聖だ。靴下を最初に履いた時の感触を大切にするため、普段はずっと素足で過ごしている。「健康上よくない」という声を受けて、最近でこそ冬に靴下を履くようになったが、数年前まで冬の間も素足のサンダル履きを貫いていた。靴下と革靴を履いていたのはIR(投資家向け広報)などフォーマルな場だけだった。

 靴下屋の店頭を彩る靴下は、このカリスマのお眼鏡にかなった靴下である。

 普通の靴下はもちろんのこと、ギンガムチェックのサンダルカバー、トレンカ(つま先とかかとがないもの)のレギンス(スパッツ)、足元にアクセントをつけるフットバンド、細糸のラメが入った5本指のカバーソックス、サンダルにぴったりのパーツソックス――。靴下屋を覗くと、形も様々、色とりどりの靴下が並んでいる。高いファッション性と国産に伴う高品質。タビオの靴下は若い女性を中心に圧倒的な人気を誇っている。

靴下屋の店頭はカラフルな靴下がたくさんあって楽しい
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「店舗の隣に工場を造る」が意味するもの

 1968年の創業以来、靴下にこだわり続けたタビオ。靴下1つでここまで成長したのは「売れる商品を売れるだけ作る」という理想のシステムを追い求めてきたためだ。

 靴下は流行次第で売れ筋が大きく変わる。ファッション誌などの影響で爆発的に売れる靴下が出る一方、ブームが終わると一転して死に筋商品に変わってしまう。トレンドにヒットする商品を提案する企画力はもちろんだが、移ろいやすい流行に即応できる生産体制がないと、欠品や不良在庫の山を築いてしまう。

 もっとも、それは口で言うほど簡単な話ではない。在庫ロスや機会ロスを極力、出さない生産体制。この理想を実現するために、越智会長は40年の歳月をかけて独自の生産体制を作り上げてきた。

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「いまどき「国産」の「靴下」に賭けて増収増益!」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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