私は長年、企業理念の共有浸透コンサルティングという仕事を通して、会社におけるコミュニケーションの問題を見てきました。
プライベートでさえ“伝わるようで伝わらない”コミュニケーション。仕事や組織が間に挟まることで、会社の中ではさらに複雑になっています。中でも大きなコミュニケーションの問題は、社長と、社長以外の幹部や社員との間で起きています。
会社において、社長の思いや会社の方針を幹部や社員に伝えるのは、社長の仕事です。例えば自動車ひとつを作るにしても、こんな思いや考え方で作ろうというのが共有浸透できていないと、よい製品などできません。しかしながら社長の話はまだ、幹部や社員にしっかりと届いていないのではないでしょうか。
世の中には、社長の話がわかりにくい会社が多い
先日、『なぜ社長の話はわかりにくいのか』という本を書くことが決まったので、実際働いている人たちが社長の話を普段どう感じているのか、改めて知人の社長や幹部、一般社員の方に本音を聞いてみることにしました。
幹部や一般社員の方からは「社長が一体何をやりたいのかよくわからない」、社長からは「ぜんぜん伝わっていないと感じます」「いい話し方があるなら教えてほしい」といったビビッドな反応が返ってきました。
もちろん世の中には、聞いていて話がわかりやすく、伝わるなあと思わせる社長もいらっしゃいます。しかし残念ながらそういう幸せな会社は、世の中にまだ少ないということなのでしょう。
社長は自分や会社の方針を、幹部や社員に伝えたいのに伝わらなくてイライラしている。幹部や社員は、社長や会社のやりたいことがわからなくてイライラしている。お互いが伝わらなくてイライラしている不健康な状態を、何とかしてあげたいと思いました。
社員の方の中には、社長の話がよくわからなくても、日々の仕事で支障はないし、関係ないよと言う人もいるでしょう。でも本当に支障も関係もないのでしょうか。
私がいつも事例としてお話しするのは「東京ディズニーランド」と「西日本旅客鉄道(JR西日本)」です。
社長の話がわかりにくいことは、ひとごとではない
社長の話がよくわからなくても、支障も関係もないと言う人のために、JR西日本のお話から先にしましょう。
2005年4月25日、福知山線の脱線事故を起こしたJR西日本。
一瞬にして奪われた100人以上の命と、いまだ傷の癒えぬ500人以上の負傷者、現場付近の住民の皆さんの精神的ショック。事故現場の映像は、その場にいなかった人が見ても、強い恐怖に襲われました。
運転歴1年に満たない若き運転士が、危ないとわかっていながら、なぜ運行時間を守ることを優先してしまったのでしょう。加害者としての罪を背負い、自らの命まで失うことになってしまったのでしょうか。
JR西日本のホームページのトップでは、社長の言葉で、福知山線の脱線事故への謝罪と、安全第一の誓いが語られています。
「この事故を決して忘れることなく、お客様のかけがえのない尊い命をお預かりしている責任を強く自覚し、安全第一を積み重ね、お客様から安心、信頼していただける鉄道を築き上げることに全力をあげて取り組んでまいります」
JR西日本の企業理念の一番目は、当然ながら“安全第一”です。「1.私たちは、お客様のかけがえのない尊い命をお預かりしている責任を自覚し、安全第一を積み重ね、お客様から安心、信頼していただける鉄道を築き上げます」。
公共交通機関にとって企業理念の一番目に安全がくることは、考えるまでもないことです。事故を起こした若き運転手も、冷静になれば、安全がすべてに優先されるということがわからないわけがありません。
ではなぜ福知山線の脱線事故は起こってしまったのでしょうか。
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1986年東京大学卒、同年リクルート入社。人事部を経てHR事業部へ。大手から中小まであらゆる規模、あらゆる業種の企業を対象に、採用・組織作りやブランド構築を支援する。全社表彰、MVPほか各賞を受賞。その後マーケティングの新規事業立ち上げに参画、軌道に乗せて2002年に退職。期間限定でベンチャーの立ち上げに参画した後、2003年9月に企業理念の共有浸透を専門とするコンサルティング会社、ブライトサイド コーポレーション(正式名称ブライトサイド株式会社)を設立、現在に至る。







