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【最終回】リーダーたちよ、日本の成長戦略を「理」で語ろう

2009年7月31日(金)

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 2006年から書き継いできた本コラムだが、今回をもって終了することになった。長い間応援してくださった読者の皆さんに、あらためて感謝を申し上げたい。

 このコラムを元にした『経営思考の「補助線」』 (日本経済新聞出版社)という本の前書きにも少し書いたのだが、興味や思考の行き先をあっちにフラフラ、こっちにフラフラとさせているうちに、思いがけない事柄同士がつながり、突然新しい見方が浮かび上がってくることがある。

 こういったことを楽しみながら書いてきたせいで、読者諸兄姉には、あまり脈絡のない様々な話題におつき合いいただくことになってしまった。この、とりとめのなさ自体を楽しんでくださったとすれば、大変ありがたい限りだ。

 さて、世の中は政治の季節になった。まずは民主党のマニフェストが発表され、自民党もまもなく発表するだろう。今回の選挙で様々な争点が提示されているが、個人的に「まずこの論点について、決着をつけるべきだ」と強く思っているものがある。それは、「日本経済の成長を本気で目指すのかどうか」という一点だ。

 政・官・民を問わず、様々な政策提言の中で「日本の成長戦略」という言葉が出てくる。一定程度の経済成長を目指すのが大前提という立場なのだろうが、最近「それを前提としてよいのか。成長の追求に否定的ないし消極的な層が、どんどん増えているのではないか」と思えてならない。あちこちで議論をするたびに、そう思わされる論に次々出くわすからだ。

日本の経済成長に否定的な意見も

 まずは、「人口減少に対する諦め」の蔓延。
 少子化に対しての施策は打つとしても、本当に人口減の流れを逆転させるのはとても無理だ、と考えておられる方はずいぶん多い。

 さらに移民問題については、感情面も含めて、十分な議論が行われているとは言いがたい。正直なところ、欧州各国における移民問題を見て、「本格的な移民政策は日本ではとても無理」というレベルで議論が止まってしまうのが通例だ。

 日本のGDP(国内総生産)を「1人当たりGDP」と「人口」とに因数分解して考えてみると、やや甘めの推計ですら、2030年~40年の間に人口が1億人を切ると見込まれる日本では、1人当たりGDPの劇的な上昇がない限り、中長期の経済成長はとても見込めないということになってしまう。

 「人口減少やむを得ず」論者の方々の本音は、Graceful Decline(優雅な衰退)を目指すべきだ、ということのようだ。

 この論点に対して、政治としてのビジョンはどう答えるのか。人口減少を本気で食い止めるのか、否か。それをどういう手段で行うのか。あるいは、いかなる手法で、人口減少を補って余りある生産性の向上と1人当たりGDPの劇的上昇を果たすのか。

 Graceful Decline論自体は、(私は賛成しかねるが)十分に議論に値する論点である。そのプラスマイナスを、定量的シナリオ分析とともにきちんと分析し、判断を下す。このプロセス、そして政治としての回答なしに「成長」を前提とした細かい政策議論を行っても、あまり意味があるとは思えない。

 もう1つ気になるのが、「環境の観点から、先進国たる日本がこれ以上の経済成長を目指すべきではない」という議論。

 日本は、「GDP1ポイント成長するために必要な環境負荷(例えば温暖化ガスの排出量)」を徹底的に減らし、環境の観点から見れば「効率的」な経済構造を作る必要がある。

 これにはまったく異論はないのだが、これはあくまでインプット(環境負荷)とアウトプット(経済成長)の効率を上げるという話で、「経済成長を求めない」というのとは根本的に異なるはずだ。

 ところが、アウトプットとインプットをごちゃまぜにした乱暴な議論が、意外とまかり通っていて、「環境重視、成長は求めない」論をあちこちで聞かされる。

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「【最終回】リーダーたちよ、日本の成長戦略を「理」で語ろう」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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