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episode:21
「本当に正しいことは何かと考え、それを追いかけるものはだれもいない。」

  • 阿川 大樹

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2009年8月4日(火)

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前回までのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)の新部署、第三企画室の出社禁止期間が明けた。その間、風間麻美(かざまあさみ)はツーリングで出会った老紳士のガレージ村に、楠原弘毅(くすはらこうき)は渋谷のライブハウスでオヤジバンドにそれぞれ邂逅した。3人はそれぞれのビジネスモデルの検証を始めた。

 幸福を直接売る仕事。

 一週間の出社禁止期間が明けて皆がオフィスに戻ってきた日、旭山はさっそく部下たちとミーティングをもった。最後に3人がうなずきあい、一緒にため息をついたのが、「幸福を直接売る仕事ができたらいいなあ」だった。

 風間麻美28歳。楠原弘毅22歳。

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 わずか一週間のことだというのに、彼らの体験は輝きに満ちていた。

 旭山は素直にそれを羨ましく思った。同時に、自分の人選が間違っていなかったと確信し、そしてほっとした。

 少なくともこの部下たちとなら楽しく仕事ができる。この部下たちとなら楽しく仕事をしても、遊びで終わってしまいはしない。いつか何かが始まる予感がする。

 松宮会長から依頼を受けて、一度は辞めた大日本鉄鋼にもどり、鉄以外の分野に、何かビジネスを見つける役目を担うことになった。

 組織図に載らないステルス部隊、第三企画室。

 社外はおろか、社内でもその存在を知る人間は限られている。

 大日本鉄鋼のような大企業が、辞めた人間を呼び戻すのはふつうのことではない。

 しかも半導体ビジネスに乗り出そうとして失敗した当事者だ。大金を注ぎ込んだ大日本セミコンダクタだったが、壁にぶつかって手放すことになった。幸い優秀な人材を獲得して、人知れず「日本一の生産技術」をもつことができたおかげで、台湾の会社に高く売ることができた。

 実際の会社の損失はそれほどにはならなかった。トップの松宮がそれで責任を問われたわけでもない。実際、百億円かそこらの損失は、天下の大日本鉄鋼にとってそれほど大した問題ではなかった。むしろ新しい技術開発投資と考えれば失敗はつきもので、損失はリーズナブルな金額と見做された。

 だからといって、当時の大日本鉄鋼がチャレンジを評価し、その失敗に寛容な企業だったわけではない。むしろその逆の官僚的会社だった。金額が〈安かった〉のと、松宮の息のかかったプロジェクトだったというだけのことだ。

 にもかかわらず旭山が辞表を出したのは、半導体ビジネスの失敗の責任を取ったからではなかった。

 だが、失敗であることには変わりはない。なにより旭山自身、敗北感を抱いていた。素晴らしい工場を造った誇りとともに。

 そんな自分が呼び戻され、小さいとはいえひとつの部署を任されることがどれほど異例のことであるかは、旭山が一番よくわかっていた。それ故に感じた責任は大きかった。たった3人が成果を生まなかったからといって、会社の大元にいる人間から見れば吹けば飛ぶようなことかもしれない。それ以前に存在すらろくに知られていないのだ。

(もしかしたら、松宮は失敗のリスクを最小限にするために存在を隠しているのかもしれない)

 だが、松宮と危機感を共有してしまったいま、図らずも〈外から見てしまった〉自分は、大日本鉄鋼の危機をもっとも強く感じる人間になってしまったのだ。

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