前回までで、社長の話をわかりやすくするために「社長が解決すべき5つの問題」の3つまでを見てきました。
『会社として最も大切にしていきたいこと』の(1)【整理】、(2)【優先順位】、(3)【表現】の問題が解決すると、サントリーの「やってみなはれ」のようなとてもわかりやすい企業理念の言葉に近づけますよ、という話でした。
非常に残念なのは、この時点で「できた!」と思って満足してしまう社長が多いことです。賢明な読者のみなさんはすでにお気づきだと思います。社長の思いや会社の考え方を幹部や社員に伝えていくためには、わかりやすい企業理念の言葉ができて、ようやくスタート地点に立ったばかりであることに。
本日は、「社長が解決すべき5つの問題」の(4)番目、理念を繰り返し伝えていない・・・【意思】の問題についてお話しします。
1.「前回までの内容はだいたい覚えている」という方は、このまま読み進めてください。
2.「このコラムを初めて読む」または「前回までの内容を忘れてしまった」方は、こちらの記事一覧からご覧ください。
企業理念の共有浸透に前向きな社長の中には、ここからさらに一歩進めて、整理して明確になった企業理念の言葉を、“小さな携帯できるカード”にして社員全員に配る人がいます。また額縁に入れて社内の目立つ所に飾る人がいます。全体朝会で社員全員に毎日唱和させる方もいます。
社長の思いや会社の考え方を、幹部や社員に伝えたいという意思はわかります。今年社名をパナソニックに変えた松下電器産業は、松下幸之助さんが亡くなられて20年たった今でも、経営理念を唱和し続けています。
80年にわたり唱和され、心に刻まれた「パナソニック綱領」
先日、パナソニックの子会社の方に電話をしていた時のことです。電話はつながったのですが、「すみません、こちらからかけ直します」と言って切られました。何か急用があったのだろうかと不思議に思っていたら、しばらくして電話がかかってきました。
「先ほどは大変失礼をいたしました。武田さんは企業理念の仕事をされているのでご理解いただけると思いますが、当社ではずっと朝会で社歌を歌い、綱領、信条を唱和しているのです。社内にいる人は全員行うことになっていて、ちょうどそのタイミングだったもので」
パナソニックでは本体だけでなく子会社に至るまで、社歌を歌い、綱領、信条を唱和していることは知っていましたが、ちょうどそのタイミングだったとは思いもしませんでした。それにしても社歌とはなんとも昭和の香りが漂うではありませんか。しかしその女性担当者は、嫌がっている様子もありません。むしろ生活の一部であるかのような口ぶりでした。
「産業人タルノ本分ニ徹シ」で始まる経営理念『パナソニック綱領』は、年配の方以外はなじみのないカタカナ混じりの文面ゆえに、意味を理解するのに時間がかかります(関連サイト)。
そろそろ表現を見直してもいいのではないかとも思いますが、グループ各社の社員にとっては、制定された1929(昭和4)年以来80年にわたって唱和し、その意味を繰り返し社長や上司から、また研修などの場で説明され、心に刻んできたものなのです。
本当の意味で社長の思いや会社の方針を企業理念として浸透させるには、長い時間が必要なのだといえますが、多くの会社にとっては80年もかけるわけにはいきません。
先ほど、“小さな携帯できるカード”にして社員全員に配るのも、額縁に入れて社内に飾るのも、全体朝会で社員全員に毎日唱和させるのも、「社長の思いや会社の考え方を、幹部や社員に伝えたいという意思はわかる」と書きましたが、社内にもっと早く、深く共有浸透させる方法はないものでしょうか。
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1986年東京大学卒、同年リクルート入社。人事部を経てHR事業部へ。大手から中小まであらゆる規模、あらゆる業種の企業を対象に、採用・組織作りやブランド構築を支援する。全社表彰、MVPほか各賞を受賞。その後マーケティングの新規事業立ち上げに参画、軌道に乗せて2002年に退職。期間限定でベンチャーの立ち上げに参画した後、2003年9月に企業理念の共有浸透を専門とするコンサルティング会社、ブライトサイド コーポレーション(正式名称ブライトサイド株式会社)を設立、現在に至る。

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