「資源ウォーズの世界地図」

資源ウォーズの世界地図

2009年8月30日(日)

「友愛」は通用しない資源外交

“核ルネッサンス”に乗り遅れるな

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 バラク・オバマ米大統領は4月5日、チェコの首都プラハでEU(欧州連合)首脳との会談に先立って、「米国は唯一の核使用国として、核廃絶に向けて行動する道義的責任を有する」と演説。核なき世界を目指して、4年以内に兵器用核物質の拡散を防ぐ体制を構築する方針を表明した。

 これを意識してか、8月6日、民主党の鳩山由紀夫代表は、広島原爆死没者追悼慰霊式典で挨拶し、「核兵器のない世界を実現することは、唯一の被爆国である我が国の道義的責任だ。各国の指導者に直接訴えることが極めて肝要だ」と述べ、政権を獲得した場合、日本がリーダーシップを発揮して非核外交に取り組む方針であることを強調した。

 2010年5月にニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に日本の首相として初めて出席することも検討しているという(読売新聞、8月6日)。大変好ましいことだ。

非核外交と資源戦略がリンク

 ただし、認識しておく必要があることは、オバマ大統領の核廃絶を世界に訴える政治・外交政策は、資源・エネルギー政策、グリーン・ニューディ−ルに象徴される経済・環境政策ともリンクしているのである。単に「友愛」によるものではない。

 その理由を述べよう。ポイントは6つある。

 

1.オバマ大統領は、ジョージ・ブッシュ政権下の原子力回帰政策に伴う、ネバタ州のユッカマウンテン(Yucca Mountain)における放射性廃棄物の最終処分場建設計画を完全に葬り去った。

 

2.米オークリッジ国立研究所が中心になって開発した、原子燃料としてトリウムを利用する溶融塩炉とよばれる原子炉が、技術的にも経済的にも実用化の可能性が出てきた。もともと核の平和利用には最適でむしろ本命であったと言われる。

 そして、ウラン利用の軽水炉などの使用済み燃料や解体核兵器に入っているプルトニウムを「火種」としてトリウムとともに燃やして処理ができる。従って、核拡散と核廃棄物の心配のない有力な地球温暖化対策になる。

 

3.2008年10月、ブッシュ政権下でネバタ州とユタ州選出のハリー・リードならびにオーリン・ハッチ両上院議員がトリウム研究を促進するための予算法案(Thorium Energy Independence and Security Act of 2008)を提出したが、否決された。

 しかし、オバマ政権になって、2009年3月に同法案の2009年版が提出されてわずか8日後の3月24日、海軍においてトリウム原子炉の研究を進めるための費用が国防予算の中に織り込まれ、6月に下院を、7月には上院を通過した。研究結果は2011年2月1日までに国防委員会に報告せよとなっているということだ。

 

4.米国のウラン資源保有量は世界第4位となってはいるが、コスト競争力のある資源がほとんどない。今、ロシアからも輸入している。

 しかし、トリウム資源は豊富。 しかも、今年になって高品質トリウムの大鉱床がアイダホ州とモンタナ州に見つかり、2008年まで、16万トン(Th)とされていたトリウム確認埋蔵量が米地質調査所(USGS)の最新のトリウム鉱物年報(Thorium Minerals Yearbook)によると、91万5000トン(Th)に跳ね上がっている。世界第1位とされていたオーストラリアでも30万トン(Th)であったので、ごく最近になって、米国が第1位に躍り出たわけだ。

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著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。


このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

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