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緩やかに弧を描いて並んだ医学生たちの遺骨

――常識の源流対論・土山 秀夫 (その3)

2009年8月25日(火)

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土山 秀夫(以下、土山) 外務省の担当者がこう言ったんですね。「今まで外務省に面会を申し込んできた人たちはほとんどが『外務省はけしからん、日本政府はけしからん』の一点張りで、じゃあ、どうすればいいのか、何1つ提案をしてくれなかったと。それが、先生方の、シンクタンクみたいなところが初めて、我々だったらこうする、という提案を次々と持ち込んでくださった」と。

伊東 乾(以下、――) 素朴な感情論だけでは核軍縮もできないし、核兵器の廃絶もできないという、明白な事実がある前で、どこまで現実的に考えていけるか、ということだと思います。またもう一方で、素朴な感情に基づく核武装論もよく見かけます。

 そういう右傾化した議論の中には、それ自身、根拠の希薄な感情論であるのに、自分がロジカルだと思い込んでいるケースも見かけますが・・・ある種の軍事評論家みたいな人ですが・・・それでは何も解決しない。普通に、医学や先端的なテクノロジー、ビジネスで社会を牽引していくのと同じ分別で、現実的な施策を打ち出して行くべきだと思います。

土山 秀夫(つちやま・ひでお)氏
1925年長崎市生まれ。45年8月9日、医学生として原爆投下直後の長崎市内で被爆者の治療に当たる。52年長崎医科大学卒業。学生時代から江戸川乱歩編集「宝石」誌上で推理小説作家・土英雄としても活躍。59年イリノイ大学留学を期に推理小説は休筆し、病理学に専念。長崎大学教授(1969~90)、医学部長(1982~86)、学長(1988~92)を経て現在同名誉教授。90年代以降、既成のイデオロギーや政治と明確に一線を画す市民の立場から核兵器廃絶運動に精力的に取り組む。世界平和アピール七人委員会委員、核兵器廃絶ナガサキ市民会議共同代表。著書に『病理学総論』(医歯薬出版)、『カントと生命倫理』(晃洋書房)『さらば、クライスラー』(日本図書刊行会)など多数。
(写真:増田 泰久、以下同)

土山 本当にそうです。外務省の担当者も「これは確かに、我々と意見の隔たりがいろいろあっても、非常に自分たちにも勉強になるし、むしろぜひこの会合は続けてください」と言うぐらいにまでなったんですね。それは僕も非常にいいことだと思うし、嬉しいことです。

―― アメリカのシンクタンク、ランド研究所なんかでも、そういう議論を見るように思います。

土山 ただ、その外務省担当者は「自分がそう思っても、やっぱり省の中で通らないんです」と。

―― ああ、またしても日本の病(やまい)ですね。

土山 ええ、つまり隠然たる勢力を持っているのは、何と言っても北米局なんです。そこがもう、将来の駐米大使になるのが夢、そして次官になるのが夢の人ばっかり集まっているので。

―― アメリカに忠誠を誓っておかなければ出世ができない、と。

土山 だからアメリカを怒らせるようなことは、一言半句でも言ってもらったら困るということで、もう外務省の中の力関係では圧倒的ですからね、あそこは。だから現場の声は通らない。

―― 何ともいけないですね。

土山 だからそういう点もくんであげないと、当事者である軍備管理、軍縮課の人を非難攻撃して、けしからんととっちめることだけだと、あの人たちもせっかく中で努力はしているのにって、やっぱり嫌気が差すと思うんですね。

―― 役所の病全体を医師の観点で見ておられますね。

土山 (笑)。だからそういう点は、僕たちも訳の分からない感情論で言うべきじゃなくて、あくまで論理的に当たるべきだと思うんですけどね。

―― 米国のご機嫌を損ねずに出世しましょう、というのは、一国の外務省内部の内在論理と言うにはお粗末すぎますね。そんなことで、結局、本質を失するようなことになっているのは。

土山 情けないと思いますね、本当に。

―― 属国根性というか、つまらないことに。

土山 そうなんですね。結局、非常に取り越し苦労が多すぎるんですよね。「もしも、こうした時に、こう言われたら、良くないだろう」とかね。「こんな仕打ちを受けたら」とか、そればっかりを先に考えるんですね。だから例えば基地の問題にしても、駐留軍への「思いやり予算」なんて、ドイツはいち早く打ち切ってしまっていたんですね。

―― はい。

土山 打ち切ってもアメリカは、その時ぐらいはちょっとムキになっても、後は仕方ないから駐留しているんですよね。だからできるんですよ、やればね。

―― 本当です。

土山 向こうだって、それだけのメリットがあってしていることですからね。何も日本だけが全部のメリットを背負っているわけじゃないですから。そういう意味の、本当に負け根性というか、負い目みたいなものは、やっぱり占領時代、あるいは東西冷戦時代からずっと引きずっていると思いますね。だからその観念を打破しない限りは、なかなか先に進まないと僕は思いますけどね。

未来に明るい兆しを見出す大切さ

―― 先生が最初におっしゃったような、理性の面と同時に、感覚、感性、確信みたいな部分と、本当にそこですね。それのない人がどんどん増えてしまうと・・・。

土山 そうなんですよ。

―― 私自身、原爆投下から19~20年経って生まれた人間ですから、直接のことは存じ上げないわけです。けれども、とはいえ、何か大切な一端は共有させていただくことで、下の世代としてバトンを受け継いでいかねばならないという意識があります。

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