コーチングは通常、半年を1クールとします。半年でどこまでリーダーとして成長するか目標を定め、半年経ったところでそれを振り返ります。
半年で成果を手にされて契約終了となる方もいらっしゃれば、契約を更新されて1年、2年とコーチングを継続してくださる方もいらっしゃいます。
私が現在コーチングをさせていただいている18人のエグゼクティブの方々のうち、嬉しいことに6人の方が何度も更新を繰り返してくださり、5年以上のお付き合いとなっています。最も長い方は10年間、コーチとしてサポートさせていただいています。
長い期間コーチという立場で一人の経営者をサポートさせていただくことで、私のほうが学べることも多くあります。リーダーがどのようにして成長を遂げていくかという点はもちろんですが、リーダーがどういうところでつまずきやすいのかという点もわかってきます。
「業績は黒字。でも、燃えるものを感じない」
ある経営者へのコーチングは、まさに“どん底”からのスタートでした。
先代が作った多額の借金を背負っての船出。言うことをまったく聞いてくれない先代の子飼いの役員たち。無気力が蔓延する職場。いっこうに上がらない業績……。
逆境の中で彼を後押ししたのは、「このままでは終われない。絶対あきらめない。何がなんでも成功する」という彼自身の強い想いでした。
そして、その想いは結実します。2年あまりで会社は活気を取り戻し、社員は一丸となり、7年で借金は返済され、多くの利益が生まれるようになりました。もはや彼が会社に始終いて面倒を見なくても、事業が滞りなく回るようにまで成長したのです。取り組みが業界誌で特集されるなど、何もかもが順調に見えました。
しかし、この成功こそが大きな落とし穴でした。
成功を手にした彼の心の内から、かつての情熱が急速に消えていったのです。「権限委譲」といえば聞こえがいいですが、部下に任せようとする心の裏には、「初期の頃ほど自分がしゃかりきにならなくても、会社は回っていくだろう」という気の緩みがありました。
「業績は黒字が続いている。ただ最近、どうも自分の中に燃えるものを感じない」。そんな言葉を彼が発するようになって間もなくでした。会社の業績が再び下降に転じたのは。
「人間は美酒に酔いたいものです」
先日、NHK大河ドラマ「天地人」の原作者である火坂雅志さんとお食事をする機会がありました。
何がリーダーの行く手を阻むのかという話をしていると、火坂さんはこう喝破されました。
「慢心です。戦国武将もそうですが、自身の慢心こそがリーダーの大きな敵となります」
最強の堅城といわれた小田原城を居城にした北条氏政も、その小田原城を攻め落とし天下統一への道を切り拓いた豊臣秀吉も、慢心によって滅んでいくわけです。
かたや、最後まで慢心しなかったのが徳川家康です。臨終の床で「西国の外様大名どもは油断がならぬ。死後も睨みをきかすために私の像を西方に向けて建てよ」と遺言したといわれています。
火坂さんはこうもおっしゃいました。「結局、一旦成功を収めるとずっと美酒に酔っていたくなってしまうんですね。でも、そんなことは決して長く続かない」
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