DVD・CDの宅配レンタルサービス「TSUTAYA DISCAS」が急成長している。
前年比50%増を上回るペースで会員を増やし、定額制のビジネスモデルで着実に収益を上げる。
ネットとリアルを併用する「過渡期ビジネス」は、店舗に来ない顧客を取り込んだ。
成長の背景には、顧客の声の吸い上げと、巨大配送センターの効率運営があった。(敬称略)
<日経情報ストラテジー 2009年2月号掲載>
プロジェクトの概要
IT(情報技術)バブル崩壊直後の2002年末。「ネットとリアルの融合」を実現したDVDの宅配レンタルサービスが産声を上げた。ネットで予約し、DVDを自宅に配送する「DISCAS(ディスカス)」だ。レンタル店向けソフト貸し出しのレントラックジャパンで開発されたこのサービスは、その後同社がCD・DVDレンタル国内最大手TSUTAYAのグループ企業になったのに伴い、TSUTAYAのブランドを冠して知名度を上げていく。
カスタマーサービスは顧客ニーズを吸い上げ、定額会費制への不満をヒントに、付加的な新サービスを次々と開発し増収につなげた。一方で、コスト競争に打ち勝つためオペレーションの改善を重ねる。250万アイテムを確保した巨大配送センターを整備し、顧客から返品された商品を受け取り、その日のうちに別の顧客に貸し出すことで商品の回転を高める。
「あっ、届いてる!」
都内に住む小学3年生のA君は、学校から戻ると郵便受けを覗(のぞ)くのが日課だ。「TSUTAYA DISCAS(ツタヤ ディスカス)」からDVDが入った青い封筒が届いていないか確認するためだ。DISCASはツタヤオンラインが提供するインターネットを使ったDVDやCDの宅配レンタルサービスで、月額1974円のプランでは月に8枚までのDVDとCDを借りられる。A君の母親がネット上で借りたい順に作品の「予約リスト」を作ると、上位の2枚が自動的に配送される。見終わって郵便ポストに返却すれば、次の2枚が送られてくる仕組みだ。
家の近所にレンタルDVD店はないが、最近はDISCASのおかげで週末の夜に家族で映画やTVドラマシリーズを見る機会が多くなった。見終わった時に返せばよく、延滞料金は発生しない。
今日届いたのは人気テレビドラマの最終回。「早く宿題を終えなくちゃ」。青い封筒をつかみ、A君はマンションの階段を駆け上がった。
急拡大市場でシェアトップに立つ
「TSUTAYA DISCAS」の2008年10月末の会員数は約55万人。1年で約20万人増加した。電子クーポンや物販などのネットサービスを利用するツタヤオンラインの会員数1460万人と比べるとまだ少ないものの、毎月定額の会費を払っている優良顧客だ。会員の年齢層は実店舗では20代前半が中心であるのに対し、DISCASは30代以上の顧客が7割を占める。仕事や育児で忙しく店舗に行けない顧客層の取り込みに貢献している。
急成長の背景には、ネット宅配レンタル市場自体が拡大している事情もある。2002年にDISCASや、ライブドア(当時はオン・ザ・エッヂ)の子会社ぽすれんなどが創出した市場に、2007年に楽天が参入し、ヤフーもぽすれんと提携してサービスを開始した。2008年にはそのぽすれんをゲオが買収し、ネットレンタル事業に本腰を入れ始めた。
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