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episode:25
「温度を高くするには、秩序を壊せばいいんだ」

  • 阿川 大樹

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2009年9月8日(火)

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前回までのあらすじ

12年ぶりに大日本鉄鋼に戻った旭山隆児(あさひやまりゅうじ)の新部署、第三企画室の出社禁止期間が明けた。風間麻美(かざまあさみ)と楠原弘毅(くすはらこうき)の話を元にビジネスモデルの検証を始めた3人。チームワークの片鱗が見えてきた第三企画室だが、本社の意向を知らない麻美と弘毅は、アフター5を楽しんでいた。

「すごく、きれい」

 夜景の見えるカウンターで、風間さんがため息をついた。

 その声は、少し愁いを含んでいる。

*  *  *

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 野毛の路地裏からいきなり表通りまで出て、さっと手を挙げて停めたタクシーで連れて行かれた場所は、大桟橋にあるバーだった。

 右も左もカップルばかりだ。

 目の前には横浜港を挟んで、みなとみらいの夜景がきらきらと輝いている。ライトアップされた観覧車やランドマークタワーの向こうに、第三企画室のある高層マンションも見える。

「ロマンチックですねえ」

 シェイカーを振り始めたバーテンダーが、カウンター越しに視線をよこした。間の抜けたセリフだった。猛烈に恥ずかしくなる。

「みなとみらいって、たしかにきれいだけどつまらないところよね」

 風間さんはいきなり言い捨てた。この人は、結構、人の予想を裏切るのだ。

「観光客向けだからですか?」

「というよりも、文化の香りがしないじゃない」

「文化の香り、ですか」

「まっさらの土地に建てられた。すべてが新しい。歴史のしがらみってものがまるでなくて、わずかな数の人が頭で描いた設計図通りに建物が並べられている。そこに〈いかにも誰でもが綺麗だと思うような夜景〉が組み込まれていて、快適だけど値段の高いホテルが並んでいて、そのホテルが決して日常ではない人たちが、少し背伸びをして記念日や旅行の時だけの、ささやかな贅沢をしにやって来る。いってみれば作られた舞台でしょ」

 舞台といえば、みなとみらいは愛の告白の名所としても知られている。いったいこの町で何組のカップルが生まれ、何人の告白者が討ち死にしただろう。

「でもすごく人気があるじゃないですか。全国から人がやってくる人気スポットです。勤務地がみなとみらいだというと、みんな羨ましがります」

「悪くはない。悪くはないのよ。でも、全然、自由がない。誰も彼も、仕掛けた人が仕掛けた通りの感動を抱いて帰る。それだけだと思うの。設計図通りの建造物に、設計通りの感動。段取りに沿った愛の告白。みなとみらいという土地で生まれたものではなくて、どこか他所(よそ)の場所で他所の人が描いたシナリオがあるだけ。お店にしたって、すでにどこか別の場所で成功した店の支店があるだけ。みなとみらいから始まったものなんてひとつもない。期待は裏切らないかもしれないけど、新しい発見は絶対にない」

コメント2

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